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第94回MMS(2014/12/12対談) 「インテリアに飾れる仏像『イSム』」 株式会社MORITA 代表取締役 森田滋さん

本記事は2014年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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enmono 第94回マイクロモノづくりストリーミングは、仏像のフィギュアを扱うイSム(いすむ)からお届けします。ゲストは株式会社MORITAの社長、森田さんです。

森田 よろしくお願いします。イSムの母体は株式会社MORITAという木彫りの仏像を扱う会社です。仏像を仏壇・仏具店さんに卸したり、お寺さんに納入させていただいたり、通信販売の業者さんなどからの依頼を受けて生産する卸売り専門の会社です。祖父が昭和43年に創業し、私が2代目なんです。

enmono お祖父様は台湾で仏像を生産する体制を築き上げて、輸入していたそうですね。

森田 日本の仏像を企画・監修し輸入して、全国に卸売りをしていました。2007年に仏像フィギュア、一言で言うとそういうものを開発して、今のイSムというブランドに至っています。漢字の「仏」の真ん中に「Spirit」のSを入れて、「いすむ」と読みます。

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enmono 何がきっかけで仏像フィギュアを開発をされたのですか?

森田 2006年頃、食玩などで小さな仏像の玩具が流行った時期があるんですね。あるお寺さんに「開眼供養をしてほしい」と玩具の仏像を持って来た方がいたそうです。それでお坊さんは、「モノではなくて、その気持ちが大切」と、玩具の仏像に魂を入れる作業をされたそうです。玩具であれ仏像が世の中に流行ったという事実と、お坊さんが「気持ちが大切」と開眼供養をした話を聞いて感銘を受けたのがきっかけです。私どもは木彫りの仏像を扱っていましたから、玩具の仏像はありえないと思っていました。でも、「世の中の人が仏像を求めているなら何かできることはないだろうか」と。

enmono なるほど。

森田 高額の仏像だとたくさんの人には届きません。玩具ではない、低価格で高品質のものを考えた結果、ポリストーンという素材と製造方法に行き着きました。ポリストーンは樹脂と石の粉を混ぜた素材で、それを型に流して形成します。

enmono 非常に精工にできていますね。素人が見ると、「3次元スキャンや3次元プリンターを使っているのでは?」と思ってしまいます。

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森田 よく言われます。弊社では国宝や重要文化財に指定されている仏像をそのままリサイズしているのですが、国宝や重要文化財はまず、スキャニングの許可をいただけないです。ですから写真や資料を見ながら、造形師が原型製作をします。資料があればあるほどいいんですけれども、詳細な資料がない仏像もあったりするんです。

enmono 写真に写っていない部分は想像で?

森田 写っていない、分からなかったものは結局、生産しないですね。必ず写真を入手します。想像では作っていません。

enmono イSムブランドの一番の特徴を教えてください。

森田 一番の特徴は彩色です。本物の仏像の汚れを忠実に再現していて、本物の仏像の写真と弊社の仏像の写真を見比べた時に、どちらが本物の仏像か分からないほどです。本物の仏像のここが黒くなっているから黒くするとか、1点1点、手で塗っています。一見黒でも、微妙なグラデーションになっているんです。イSムではインテリアとしての仏像を提案しています。いわゆる骨董風の方が、リビングに置いてもあまり違和感がないのです。この邪魔にならない色が、お客様に受けている理由の一つだと思います。

enmono これがイSムの最高傑作、千手観音ですね。

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森田 74ものパーツを原型から起こして、120枚の金箔を貼って、更に汚れを表現しています。金の色を再現するのに絵具などを試したこともありますが、どうしても雰囲気が出ないんですね。木彫りの仏像でこのクオリティーですと100万円以上にはなりますが、ポリストーンを使うことで25万円(税別)という価格を実現しています。「たくさんの方に気軽に仏像を楽しんでいただきたい」というコンセプトで、もう少し小さくて低価格のシリーズも出しています。こちらは全て、1万9千円(税別)のワンプライスでやっています。

enmono 手のひらサイズですね。購入しやすい価格です。

森田 利益というよりは、仏像を広めるためにリリースしたシリーズなので。本棚やパソコンの横に置いてアートとして楽しめますので、OLの方などにご購入いただいています。小さくても、肉眼ではなかなか確認できないような部分まで再現しているんです。特に目は細心の注意を払っています。

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enmono 購入される方はどのような方が多いですか?

森田 一番多いのは50代から60代の男性のお客様です。お年玉で購入していただいた小学生から90歳のおばあさんまで、男女ともに幅広いファンがいます。

enmono 広めるのにご苦労されたのでは?

森田 最初はインターネットですとか、もともとお付き合いがあった小売店さん、通信販売さんに出していただきました。今まで世の中になかった商品ですから、通販のバイヤーさんにしても、どう取り扱っていいのか分からない。私どもの価格設定が高いのか安いのか、それさえも判断基準がどこにもなかったんですね。お客様も、よく分からないですよね。

enmono 全く新しいカテゴリだから。

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森田 最初に購入していただいたお客様は、自分の感性を信じて商品を買うような方だと思うのです。そのような人達から口コミで広がったり、通信販売さんでも感性のある人がいらっしゃって、「これはいい」と出してくださったり。売れて実績ができてくると、「じゃあ、やりましょう」と他のところでも出していただいて、また広がっていくんですね。

enmono 実績ができるまでジレンマはなかったのでしょうか?

森田 もちろん、あります。2007年、2008年は、ほとんど売れない時代でした。これは運としか言いようがないんですけれども、2009年に開催された「国宝 阿修羅展」の影響で、阿修羅像が1700体売れたのです。

enmono 日本中が阿修羅ブームになった展示会とのことですが。

森田 展覧会の公式グッズは、フィギュアで有名な海洋堂さんの2980円の阿修羅フィギュアだったんです。1万5千体が約2週間で売り切れて、ニュースになりました。その記事で、「片や6万円の高級フィギュアも売れていて、こんなに阿修羅像が流行っています」と、私どものフィギュアもセットで紹介していただいたんですね。「売れるかどうか分からない」と模索しながら仏像フィギュアをやり始めましたが、徐々に「売れる」と感じるようになってきました。

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enmono 1年前にこちらのお店をオープンされて、イベントをやられていますよね。私は暗い照明の中でワインを飲みながら仏像を見るイベントにお邪魔しました。非常に興味深かったです。

森田 お客様にわかりやすく伝えるには、仏壇用の仏像とインテリアの仏像を分ける必要があり、イSムを立ち上げました。その一環で、仏像ライブや仏像メイクなどのイベントを仲間と企画しています。皆さんに積極的に参加していただいてブランド・ロイヤルティを高めるしくみを、定期的にやっています。

enmono facebookも活用されていますよね。表参道という土地柄、外国人のお客様も多くいらっしゃると思います。海外に対してのアプローチについてお聞きしたいのですが。

森田 facebookを始めた時、海外での反応を検証するために広告を出したんです。日本よりも台湾やタイ、インドネシアの方々のレスポンスがすごくて、1日100人、200人の方々に「いいね!」を押していただきました。

enmono 海外でこのような仏像はないのですか?

森田 石の仏像はあっても、仏像というのは常に金ピカでないといけなくて、古いものを良しとしないですよね。「いいね!」を押してくださった海外の方が、日本に来た時、ここに立ち寄ってくださるようです。やはり日本の文化が好きで京都や奈良のお寺巡りをする方が多く、本物の仏像を見ていらっしゃるので、「これは良くできている」といった評価をいただきます。特に購入に至っているのは、中国、香港、台湾、シンガポールのお客様ですね。今回、「VISIT!isumu」という英語と中国語のパンフレットを、都内の5つ星と4つ星のホテルに置かせていただきました。

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enmono 免税店のマークも載ってますね。

森田 コンシエルジュの方が宿泊客から「どこか面白いところはないか」と聞かれた時、「京都へ行く前にここで仏像の勉強をすれば、もっと楽しめますよ」と紹介していただきます。

enmono 仏像フィギュアによって、本物の仏像の人気が高まっていくといいですね。最後に、日本から発信するものがこれからどうなっていったらいいと思いますか。

森田 「モノ」ではなく「コト」と、よく言われていますよね。お客様の生活の中で何を解決できるかを考えた時、私どもは仏像を作っている会社なので、お客様の満足というものを一番に考えなければいけません。手を抜かずに細部までこだわって真面目に作る。モノづくりということで言えば、それしかないと思うのです。品質が落ちれば、淘汰されていきます。誰にも真似できない良いものを適正価格で販売できれば、ブランドとして成り立つという信念のもとにやっています。

enmono ありがとうございました。

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▶対談動画

▶森田さんFACEBOOK

https://www.facebook.com/butuzou.morita

▶株式会社MORITA WEBサイト

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