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「東大阪にこども金型職人を生み出す発信基地を作りたいねん!」 中辻金型工業株式会社 総括部長 戸屋加代さん

本記事は2015年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

●zenmonoでスタートしたプロジェクト

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enmono 4月17日、第102回放送マイクロモノづくりストリーミング、本日のゲストは中辻金型工業の戸屋さんです。インターモールド出展中でお忙しいところ来ていただきまして、ありがとうございます。

戸屋 ありがとうございます。よろしくお願いします。

enmono 我々が運営しているzenmonoというクラウドファンディング・メーカーズプラットフォームでは、今回ご紹介する中辻金型さんの「東大阪にこども金型職人を生み出す発信基地を作りたいねん!」というプロジェクトを展開しております。

一般の人たちには馴染みのない金型というものを知ってもらいたい。そして日本の製造業を盛り上げていきたいというプロジェクトです。まずは中辻金型さんがどういう会社なのか、ご紹介いただければと。

戸屋 はい。改めまして、中辻金型工業株式会社の戸屋です。弊社は東大阪でプレスの金型をメインに作らせていただいてます。現社長が創業して42年、私が入社して14年になります。弊社の営業品目としてはプレス金型の製造販売、プレス製品を完成品にするまでを請け負っております。あと、東大阪という立地を活かして、色んな業者さん工場さんと提携しながら、メッキや塗装段階まで仕上げて商品としてお渡しすることもしております。

enmono 今回、どういう思いでこのプロジェクトをやろうと思ったのか、また具体的にどういうプロジェクトなのかを説明していただいてもいいですか?

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戸屋 私たちが仕事をしていく中で感じたことですが、実際に金型製造に携わっている自分たち以外の皆さんには、金型というのはよくわからないものなんだという実感がありました。わかっている側とわかっていない側で話をすると、通じない部分がどうしても生まれます。それをどうにか解消したいと考えたのがきっかけです。

戸屋 もちろん私も入社当時は金型のことは知らず、仕事しながら覚えました。そうして得た知識をどう伝えるか数年前からずっと考えてたんです。一方で目の前に迫る危機として、倒産や廃業、後継者の問題で金型屋さんが本当に少なくなってしまったんですね。金型の技術を今後に繋げていくにはどうしたらいいのか。それにはまず知ってもらわなければならない。

戸屋 このプロジェクトでは「知る」「体験する」「作る」という三つを挙げているんですけど、その「知る」のところで、私たちだと金型やプレスのことをお話させていただいたり、塗装屋さんだったら塗装ってどういう風にしてるのとか、メッキ屋さんだったらメッキがどういう工程で流れてるのかとか、というのを掘りさげて説明をしていただけると興味を持っていただけるんじゃないかと思うんです。

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戸屋 現場の人とか、会社で携わってる方にお話をしていただきたいっていう意図があるんですけど、一方で私たちの工場の社員も聞きたいと思うんですよね。自分たちの仕事以外のことも知りたいっていう。

enmono 社員教育の場でもあると。

戸屋 お話を聞くとイメージできますし、製品を作る側も「後のメッキの処理でこういうことするから、ここを注意しないといけない」とか、段々わかってくるようになると思います。

enmono そこで勉強することで、ほかの会社と連携する時の工程が短くなったり、手戻りがなくなったり、という効果もあると。

戸屋 はい。逆に来ていただいた業者さんに対しては、私たちがやっているプレスがどういうものかを知ってもらうこともできると思うんですね。「知る」部分でそういう製造業・モノづくりの方に、その専門を語っていただいて、各々のモノづくりがどういうものなのか知ってもらいたいと思っています。

enmono(三木) それがモノづくり情報発信基地「enjoy mono」になるわけですね。

enmono(宇都宮) enmonoですね。

戸屋 そうですね。モノづくりを楽しもうっていうことで。ちょっと被ってますけど(笑)。

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enmono 光栄です。今回話をしてきた中で「こども金型職人」というキーワードが出てきて、これはキャッチーじゃないかと軸に据えてPRしてますけど、別に大人が来てもいいんですよね。

戸屋 そうです。「こども」って書いてるんですけど、「こども」の心を持っていれば大人でも大丈夫です。モノづくりをしたいなとか、もういくつになってもいいんですけど知りたいなという人は全員「こども」っていう定義で来ていただいて。

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enmono 金型から塗装からいろんな技術をここで学べますよというところにしていきたいと。

戸屋 そうですね。

enmono このセミナーは有料にしていくんですか? というのも、これ、社会的にすごくインパクトがあるんじゃないかと思うんですけど、経営者的な考えから言うと、ビジネスなのか社会貢献なのか、というのが気になります。

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戸屋 すごく大きい話をしてしまうと、ここに来た方が、個人であれ企業さんであれ「これができるんならこういうものが作りたい」と発想した時に、新しいモノづくりがスタートすると思うんですね。その時にセミナーで顔合わせをしているので、作れる場所と作りたい人がすでにできあがってるんですよね。

enmono 受講生とセミナーをした人が繋がって新しいモノづくりをする。一緒に開発をしてビジネスにしていくという。

戸屋 はい。それが東大阪の中で企業さんとか、ほかの地域でも構わないんですけど、やることによってモノづくりの業界自体が活性化するっていうのと、もちろん東大阪の企業さんに来てもらうことで東大阪自体も今までと違ったモノづくりでもっと盛りあがるんじゃないかという風に考えてます。

enmono それは戸屋さんお一人で考えたんですか?

戸屋 はい。

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戸屋 社長にも、というかウチの職人二人にもやってもらわないといけないことがあって。「体験する」っていう部分で実際の金型を使ってプレス加工をするっていうのを来ていただいた方にやっていただくんですけど、そこで職人さんとして「こども金型職人」の定義の方に説明をしてもらったりとか、金型の本当の大変さだったりとかを講師としてやっていただこうと思ってるんです。

enmono となると、長期的に考えてやっていくということですね。

戸屋 そうですね。工場に来てもらうということがまずすごく大事で、学校でそういうことを勉強するんですけど、実際に学校の勉強だけでは工場のことってまったくわからないんですよね。で、来た時に「すごぉい!」って興味を持って、子どもたちの見る目線が変わるんですね。そうなると、今まで工場が持たれてきたイメージが変わってくるっていうのと、すごいおもしろいところだっていうことになれば今後その子どもたちがまたモノづくりを担って続けていってくれるんじゃないかなぁと思ってます。

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enmono なるほど。社会貢献ですよね。それを中辻金型さんがやるというのは、企業経営としては本来あり得ない「持ち出し」になってしまうと思いますが、どうしてそこまでやろうと思ったんでしょうか。

戸屋 社会貢献というのは、あんまり認識はしていませんでした。あとに繋げるためにどうするかを考えると、やっぱり経験を早くしないと職人さんにはなれない。早いうちに認識の機会があった方がいい。そういう思いです。

戸屋 あとは町工場の人って情報発信をするのが苦手というのがあって、だけど「なにかをしたい」っていうのをすごく仰るんですね、皆さん。でも、どうしたらいいかわからない。であれば、こういう講座でできるだけ発信をしてもらって、マッチングをそこでしてもらうと、繋がりが生まれて、できなかったことができるようになる。

戸屋 実際に顔を合わせて話をするというのは、ちょっと時流と逆行しますけど、大事だと思ってます。そこで「こんなことができるんだったら、これお願いできますか?」ということも生まれてくるでしょうし、それによって企業が元気になります。みんなが協力して、一つのものを作る流れができていくと思います。

●クラウドファンディングを体験しての実感

enmono クラウドファンディングについてご意見を伺いたいと思います。今回プロジェクトを発足してみて、事前の意識と、実際の印象でギャップはありましたか?

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戸屋 始めは資金調達をするというイメージしかなかったので、いかに賛同いただく内容で持っていくかみたいなところと、みんなの意見を聞いてそのプロジェクトが本当に成功するのかしないのか判断もできると聞いていました。それが成功するんであればお金が集まるし、そうじゃなかったらもちろんサクセスできないっていう、最初の評価がもらえるのがクラウドファンディングなのかなと。

enmono で、実際に今やろうとしているのは、お金よりもまず人を集めるということになっているじゃないですか。そこが多分、イメージしていたものと少し違うと思いますが。

戸屋 そうですね。でも資金調達に入ってしまうと目的が変わってしまう気がします。お金を集めようとしてクラウドファンディングすると逆に失敗をすると思うんです。人のやりたいことの思いだったり、作りたいことのストーリーだったりというのが結構重要だと思います。

enmono 今回のプロジェクトは特に人の支援・サポートがかなり重要だと思います。現在の応募状況はメーカーさん一人、デザイナーさん一人、スタッフはまだなし。メーカーさんっていうのはこの場所でセミナーをしていただく方ですね。デザイナーさんはどういう方を求めていますか?

戸屋 ページの中で動画でどういうことをしているか伝えられるものを作りたいのですが、私たちは動画を作れないので製作をお願いできれば助かるなぁと思ってます。

enmono 今デザイナーさんには一人応募いただいていますが、こちらは以前から知ってらっしゃる方ですか?

戸屋 こちらはフォトグラファーで、実際やっているところの写真を撮っていただいたので、今後またアップしていきます。

enmono いいですね。写真は重要です。それ以外にも、もうちょっと人の助けが必要ですね。ぜひ、これを見ている皆さん、お声がけください。

戸屋 自社のモノづくりを語っていただける方をお待ちしております。

enmono 今、何社ぐらいに協力依頼をしている感じですか?

戸屋 まだ正式に依頼はかけていませんが、自分のところの協力工場さんや、今回インターモールドでモールドテックの落合さんとお話させてもらって「お願いできますか」と。

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enmono 素晴らしいと思います。いいですよね。町工場自体がお互いのノウハウを交換するセミナー・場所を作っていくっていうのは、考え方によってはすごく新しい動きだと思います。

戸屋 見てもらう・聞いてもらうのが一番ですし、そういう方々がマッチングする場所として「enjoy mono」がある、そこに来さえすれば知りたいことが知れる、作りたければお願いできるという、そういう場所にしたいなと思ってるんです。

enmono 今までは「モノ」でしか繋がれなかったけれども、人と人が会って「知識」を伝えていけるというのは、非常に重要な新しい価値だと思います。

●日本のモノづくりの未来

enmono 本当はもっとお話聞きたいんですが最後の質問に行きたいと思います。これは皆さんに聞いているんですけど、「日本のモノづくりの未来」が、どういう風になっていったらいいか、お考えを語っていただければと思います。

戸屋 私が思ってるのは、作りたい人ってたくさんいるんですけど作れる人とのマッチングっていうのが段々できなくなってるのかなと、自分が仕事する中で思ってたんですね。そこでそういう「かけ算」ができる、作りたい人と作れる人ができることをお互いが補い合ってモノづくりをするのが、いいものを作れる一番の早道なのかなと思ってます。それはメーカーさんであったとしても、私たちモノづくりの企業であったとしても、メーカーさんにはメーカーさんのできることがあって、私たちは作るってことができますがメーカーさんと同じことはできないのでお互いそこを補い合って、横の手を繋いでものを作っていきたい。それがないまま単に作って渡すだけですと、今までやってきたMADE IN JAPANというブランドの中でいいものは生まれなくなるんじゃないかと思ってるので、そういうかけ算がたくさんできていくようになったらと思います。

enmono そうですね。かけ算っていうキーワードが重要だと思っていて、今僕らもすごく感じているのは、特にメーカーさんの技術力がどんどん落ちていってる気がするんです。基本的に社内だとコスト高いから、自社は管理だけで外に丸投げしてる。そうするとメーカーさんのブランドしか残らなくて、中に技術が残らない。10年後の日本のメーカーの姿を想像すると非常に怖い。それをこの「enjoy mono」のような取り組みでなんとかできれば。

戸屋 メーカーさんも本当はそこがむず痒いところだと思うんですよね。そこが開ければきっといいモノづくりがみんなでできるんじゃないかと思います。

enmono というわけで、今日は大阪から中辻金型工業の戸屋さんにお越しいただきました。どうもありがとうございました。

戸屋 ありがとうございました。

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▶対談動画

▶戸屋さんFACEBOOK

▶中辻金型工業

▶TAMさんのコワーキングスペース(撮影でお世話になりました)

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