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第97回MMS(2015/1/16対談) 「「旅と手紙のある暮らし」をテーマに日々の暮らしの中で楽しんでもらえるような雑貨と文房具のオリジナルプロダクトを製作」 kuluska(クルスカ) 藤本さん夫妻

本記事は2015年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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enmono 第97回マイクロモノづくりストリーミングのゲストは、kuluska(クルスカ)の藤本直紀さんと藤本あやさんです。

kuluska よろしくお願いします。

enmono kuluskaというユニット名の語源を教えてください。

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kuluska スペインのバスク地方の言葉で、「テープルの上でのお昼寝」という意味があるらしいです。心地よい雰囲気がある言葉だと思います。ものづくりをする上でもあまりせかせかせずに、自分達以外の人と共につくる時間を大切にしていきたいと考えています。

enmono kuluskaさんは北鎌倉にあるこちらの工房で、雑貨と文房具のオリジナルプロダクトを製作されています。レザークラフトの教室もやっていらっしゃいますよね。直紀さんはもともと、革職人さんだったのですか?

kuluska もともとはアパレル企業で企画とデザインをしていました。「デジタルと手仕事の融合」という面で革と相性がいいと思うことが多く、最近のプロジェクトは革のものが増えてきました。

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enmono デジタルと手仕事を融合しようと考えたきっかけは?

kuluska 福祉作業所の人とデザイナーが共同で商品づくりをするプロジェクトに関わり、「誰でも作りやすい形とは、どのようなデザインだろう」と考えたのがきっかけです。その時、「レーザーカッターで革を切り抜いたり穴を開けられたら、針と糸があれば誰でも縫えるのでは」と思いました。

enmono それで、FabLabKamakuraに行かれたのですね。

kuluska 同僚が「FabLabKamakuraにレーザーカッターがあるらしい」と教えてくれました。代表の渡辺さんにお会いして私達のプロジェクトや思いをお話ししたところ、共感してくださって。FabLabKamakuraのプログラムを体験しながら、レーザーカッターの使い方を学びました。私はアナログ人間だったので、そこで初めてIllustratorやPhotoshopを使ったのですが、例えばこのスリッパの場合、縫い穴を均等に配置できるし、サイズもすぐに変えられる。それまでは手作業でやりながら、かなりの時間をかけていたのに(笑)。

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enmono どのくらいの期間で習得できたのですか?

kuluska 3ヵ月くらいです。2012年の夏に始めて、年末にはレーザー・デザイン・フォーラム主催のレザーコンテストに応募して、社会企画部門でグランプリを受賞しました。

enmono お仕事をされながらですよね。その頃は、あやさんも別の会社にお務めで。

kuluska そうです、IT系の企業にいました。二足のわらじを履いている状態で、「でもやっぱり、ものづくりをしていきたい」という思いが一番高まった時期でした。kuluskaでやっていることは、「共創するものづくり」。それ対して、レーザーカッターであったりテクノロジーの可能性に気付けたのは、kuluskaにとって大きな転機でした。

enmono このスリッパがどのような経緯で「旅するデザイン」というコンセプトになっていったのでしょうか?

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kuluska このスリッパを企画してまず、FabLabKamakuraでワークショップと展示をしました。世界中のFabLabを旅しながら映画を撮っているJensというノルウェー人がいるんですけれども、彼がFabLabKamakuraに来た時、私達の展示を見てくれていたんですね。彼はその後、ケニアにあるFabLabに行き、現地の人から「革を使って観光客に売れるものを考えてくれないか」という依頼を受けたそうです。それで、FabLabKamakuraの渡辺さん経由で「スリッパのデータをオープンソースとして発表してくれないか」という話があったので、私は「それは素晴らしいな」と思ってデータを送りました。

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Jensは、スリッパのソールにアフリカの大地のひび割れを表現しました。アフリカには特徴的なデザインがあると気付いて、それを地域のデザインとして落とし込もうとしたのです。

enmono 面白いですね。

kuluska 観光客に、「これを履くと、いつでもアフリカの大地を感じられますよ」というストーリーを持って販売します。彼はワークショップで、作り方だけでなくどういう販売をしたらいいのかまで共有したのです。Jensは旅のまとめとして、映画『Making Living Sharing』を発表しました。

映画の3/1も、kuluskaのスリッパが旅をして発展していく話を使ってくれて。データをオープンにした時は、ここまで広がるとは全く想像していませんでした。デザイン自体を手放した時にさまざまな広がりが生まれるのを体験し、「このオープンデザインの取り組みを日本でやってみたらどうなるだろう」と考えました。

enmono 日本各地、ワークショップで。

kuluska 参加者の方がデザインを変えながら、日本の各地でワークショップをしていきました。お子さんの絵を印字する方がいたり、動物や靴の形のスリッパがあったり。

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enmono さまざまなバリエーションがありますね。

kuluska ワークショップではサイズを自分の適正サイズにできます。また、革が綺麗にカットされていたり穴が開いていることによって、通常言われているレザークラフトの難しさがうんと下がっているので、アイデアを膨らませる楽しい部分を皆さんに体験してほしいのです。「革が余ったから、丸く切ってここに加えよう」とその場でデザインを変えたり、隣の人のデザインを「いいな」と感じたら、そのテイストを取り入れてもいいのです。

enmono 真似してもいいのですね。

kuluska ワークショップを始める前、参加者の皆さんにお伝えしていることがあります。「今日集まったメンバーはチームです。たまたま出会ったけれども、ご縁があって一緒にいる。アイデアを個人的なものにしたい方もいるかも知れません。でも、それを手放した時、分かち合った時に何が起こるのかというのを含めて感じてもらいたい」という話をしています。日本の皆さんが作ったスリッパやワークショップの映像をまとめたドキュメンタリー映画が、今年の5月に完成する予定です。完成後、全国をまた旅します。

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enmono 革の質感のものをそれぞれの地域の人がカスタマイズしていくこと自体が、すごく愛着がわくもの。自分が生み出せる喜びがわかるような気がします。それが世界中に広まるというのが、また面白いですよね。2014年の1月からは、海外にも行かれているとのことですが。

kuluska ヨーロッパで、プレゼンテーションとワークショップをやる機会をいただきました。周りの人達が「旅するkuluskaを応援する会」を立ち上げてくれて、私達の旅に投資をしてくれて、「これで行ってこい」と言ってくれたんです。友達でのクラウドファンディングなんです。

enmono すごい。

kuluska すごくありがたくて。『Making Living Sharing』を上映したスペインのFab展に参加したり、「来てもいいよ」と言ってくれたラボを中心に行きました。また、フィレンツェで革職人さんのものづくりを見たり、バルセロナにあるグリーンファブラボにも行くことができました。グリーンファブラボは自給自足をテーマにしたラボで、人間も動物も植物ものびのびと生きていました。もちろんエネルギーも少し使いますが、太陽光パネルで備蓄していて、使う量はコントロールされている。そいういうあり方だったり、大自然の中にぽつんとあるので、そのたたずまいにも心を揺さぶられて。私達もこれからの社会の中でできるものづくりを考えていきたいので、エネルギーを使うとしたら、自給自足のものづくりをやりたいと考えています。

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enmono 岡山県で新たな取り組みを展開されるそうですね。

kuluska 倉敷にある日本初のクリエイティブリユースの拠点である、IDEA R LABでは、企業から出る廃材などを地域の皆さんから提供していただいて活用しています。代表の大月さんとご縁があり、私達もクリエイティブリユースの考えから廃材を活用させてもらっていたので、ワークショップに呼んでいただきました。それがきっかけで、今後もIDEA R LABのプロジェクトに関わっていくことになりました。ここでは、「グリーンファブラボ 玉島 β」の活動も始まっています。

enmono それは興味深いです。

kuluska 今、考えているのは、紡績が盛んだった地域で綿花を栽培して、収穫して綿を紡いで、服を作るプロジェクトです。もともと地域の中に小さな産業がたくさんあって、小さな経済が動いていることで皆さんがご飯を食べることができていました。それをもう一度、地域住民の方にも関わってもらってできたら楽しいのではと思っています。

enmono ものづくりは多くの人が関わる産業ですから、非常に面白い取り組みになりそうです。

kuluska 小さな経済を皆が少し意識していくことで、日本のものづくりはもっと豊かになるのではないでしょうか。地域それぞれの強みだったり繋がりで、どんどん面白いものが生まれるのでは。誰でも「つくるちから」があるのです。「私にはできないかも」ではなくて「私がやりたい」と言う人が増えて、自分でつくるところへのチャレンジを一緒にできたらいいなと思っています。

enmono 「つくるちから」があることに気付いてもらいたいですね。ありがとうございました。

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▶対談動画

▶藤本直紀さんFACEBOOK

▶藤本あやさんFACEBOOK

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