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「鎌倉発、ずっと使いたい和の暮らし服、 作務衣(さむえ)を着よう!」鎌倉作務衣堂 鈴木 瞬さま

本記事は2014年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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enmono 本日のゲスト、鈴木さんが運営されている鎌倉作務衣堂からお送りしています。私は5年ほど前、坐禅を始めたのをきっかけに、家では作務衣を日常着にしています。鈴木さんはどのような経緯で、作務衣のお店を始められたのですか?

鈴木 私はもともと、国際開発の分野で活動していました。

enmono NGO的な活動でしょうか?

鈴木 そうです。途上国を先進国にする支援をしていたのですが、「ただ先進国にしても、人は本当の意味で豊かになるわけではない」と感じ、約一年間、さまざまな国のスラムを見てまわりました。帰国して、「先進国を本当の意味で豊かにするというのは、どういうことか?」と考えて。最初はIT企業を立ち上げ、本業のシステム開発とは別軸で、働けない人を働けるようにする活動をしました。「障害者の方などが働いてお金を得る事によって社会参加できたり、輪ができるようにしたい」と思ったのです。その時から、地域行政の大事さを感じています。

enmono 3年前、鎌倉市の政策コンテストで見事、優勝されたのですよね。

鈴木 勉強がてら、参加しまして。30年後の鎌倉市を見据えて政策提言をするということで、着物文化に着目しました。そのようなご縁があって、鎌倉に引っ越してきたのです。「提言するだけでなく、これを実現化しよう」と、まずNPO法人を立ち上げて、実現化のお手伝いと地域の活性化に尽力しました。

enmono 私は鎌倉に引っ越してきて8年になります。「和のものを身につけたい」と思うようになりました。

鈴木 衣食住の衣服というのは、日本人にとっては和服なんですよ。プロダクトというだけではなくて、文化、歴史でもあります。しかし、和服業界は今、右肩下がりです。職人さん、縫製工場さんが廃業している。NPOで「地域を豊かにする」をキーワードに活動するなか、そのような現状を目の前にして、「何とか活性化できないか」と感じました。それで「鎌倉作務衣堂」という、和服を今の生活スタイルに合う形にしたブランドを始めたのです。

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enmono なぜ、作務衣なのでしょう?

鈴木 鎌倉は禅の都です。禅宗の僧侶さん達は皆、作務衣を着ます。和服の日常版、日常着という感じです。「和服の敷居を下げたい」という思いがあったので、作務衣を一番気軽な和服として出させていただきました。

enmono iikuni(鎌倉市限定クラウドファンディング)でやられていた作務衣のプロジェクトが成立しましたね。作務衣というと藍色をイメージしますが、桜色や藤鼠色、憲法黒茶など色のバリエーションがあるのですね。

鈴木 天然の草木染めを施していて、何度も重ねて染めることで奥行きのある深い色合いになっています。草木は季節が移り変わると、いろいろな色になります。春は花が咲いて鮮やかだったり、夏は緑、秋冬は枯れ木の色がある。季節そのものを色で衣服に取り入れる感覚を目指しています。憲法黒は江戸時代の中期くらいに作られたと言われている黒です。天然の草木染めで黒を出すのは本当に難しく技術が必要で、京都の職人さんにお願いして作ってもらっています。

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enmono 色合い、風合いが良いです。和紙のような独特の感触ですね。

鈴木 使い込むごとに柔らかくなります。この生地から全て、プロデュ―スをしているのです。生地は綿糸を使っていますが、ただ綿を織っただけでなく、それを一度ボイルして余分なタンパク質を取り除いています。高密度に織られているので、薄くて軽いのに丈夫で、雨よけ塵よけになる。遠州織物で有名な、静岡の織り屋さんにお願いしています。

enmono ポケットが三カ所についていて、便利そうです。

鈴木 ポケットは、洋服のテイストが入っています。

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enmono 今回のプロジェクトでは、支援者が坐禅や作務の体験をできるそうですね。

鈴木 作務衣は、作務(作業=修行)を行うための服です。作務衣を着ながら、文化というものを一緒に味わってほしいと考えています。建長寺さんと浄智寺さんに、「文化が入った衣服として、作務衣を鎌倉から発信したい」と伝えたところ、快く協力していただけました。

enmono 一般の方が建長寺さんなどで坐禅をする機会は、なかなかないですから、良い体験になると思います。私は起業した時、坐禅をすることで心配事がなくなり、気持ちに余裕をもって会社を経営できたことがあって助けられました。

鈴木 私は作務衣のブランドを始める前に、「和服の敷居を下げたい」とモヤモヤしていた時期があって、毎日のように早朝坐禅へ行っては心を無心にしていました。「立ち止まって考えることが、修行の一環でもある」という教えがあるらしいのですが、起業した人もサラリーマンも、そうすることによって見えてくるものがあるのではないでしょうか。

enmono シリコンバレーのIT企業などが禅を取り入れていて、ITの世界は一つのアイデアがものすごい価値を生む世界なので彼らにとっては発想を導き出すツールなんでしょうけれども、私達にとっては文化であって、もっと見直していきたいですね。本質的なものがそこにはあるから、海外でも受け入れられるのでしょう。私が坐禅をする時に使っているINSIGHT TIMER(インサイトタイマー)というアプリは、世界中で利用者が増えています。特に、アメリカやヨーロッパで多く使われています。海外の人達はジャージなどを着て坐禅をしていると思うので、作務衣を禅ウェアとして着てもらえたら。

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鈴木 知り合いの、アメリカ人の写真家にお願いして、作務衣をアメリカで紹介してもらっています。その方に鎌倉作務衣堂のコンセプトを説明したところ、「(アメリカで)反応を見てきます」と言ってくださったのです。アメリカでは作務衣は知られていなくて、実際に着ていただいたところ、「これは面白い!」と感じていただけたようです。

enmono 大量生産は必要です。大量生産された部品があってはじめて、自分の付加価値をのせることができるわけで、我々も「選択肢としてマイクロモノづくりがあってもいいのでは」と考えています。でも、大量に作りすぎると人はそこに価値を見出さなくなる。先進国になればなるほど、その傾向が強くなります。アパレル業界はどうですか?

鈴木 大量に生産して必要なものがたくさん届けられるというのは、良いことだと思います。ファッションはトレンドがあって、トレンドに左右されて大量廃棄されてしまう側面もあります。大量に作って大量に廃棄するモデルですと、環境汚染もそうですし、地球全体という単位で言うと人類も損をしている。最適な数だけ生産して消費する、次世代のモデルに変えていく必要があると言われているのです。私が和服に着目したのは、「世界中が求めているエシカルファッションの原点が、ここにある」と感じたからです。和服は作る時に無駄が出ないだけでなく、使い終わるまで一切無駄が出ません。3世代受け継げると言われ、ボロになればおしめになり、雑巾になる。それを燃やしてエネルギーにして、肥料にして、また綿や着物に還元していきます。

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enmono 日本の服の文化が今後、どうなったら良いと思いますか?

鈴木 私は、作り手の顔を思い浮かべることができる服は、破れても直して、大事に使っていただけると思っています。和服自体が、誰でも作ることができるような合理性がありますが、祖母の世代までは皆、和裁ができました。だからこそ、職人技がいかにすごいかが理解できたのです。衣服でも工業製品でも、作る側が「使ってほしい」と思い、使う側があたたかい気持ちになるモノがあってもいいのではないかと思うのです。鎌倉作務衣堂も皆さんの賛同をいただきながら、文化も職人さんの思いも丸ごと伝えていけたらと考えています。

enmono 町工場のモノづくりの商品開発も同じです。

鈴木 「扇と呉服屋は広げすぎるな」という謂れがあります。手を広げすぎると、固定費も人件費もかかります。そしてコストカットや、より効率の良い販売方法に変わっていきます。大量に作ったものを安価に販売するという流れです。それでは売れなくなる時期が来ると、とたんに歯車が回らなくなってしまいます。「これが欲しい」というところから結果的に大量に作った場合、それは皆にとって利益があり、受け入れられるのではないでしょうか。

enmono ありがとうございました。

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▶対談動画

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https://www.facebook.com/suzukishun0

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