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能を観に行く(チケット購入編)

能を観にいった話。
長くなってしまったので2回に分ける。今回はチケット購入編。


世阿弥(講談社学術文庫)と風姿花伝・三道(角川ソフィア文庫)を読んだ。
風姿花伝は室町時代の古典だが、ご存知の通り能は失われてしまったわけではなく、現代まで連綿と続いており鑑賞しようと思えばできる。
ならば、風姿花伝の理解を深めるには実際に能を一度観ておくべきだろう。
そういうわけでいわば読書の仕上げとして観劇してみることにした。

ちなみに私は舞台芸術には疎遠な人間で、
・能を観るのは当然初めて
・舞台芸術自体の観劇経験もゼロに近い
・高校生のときに授業で一度だけ歌舞伎を見ている。内容は記憶にない
といった状況だ。

チケット購入

能なんてみるのはどうせ研究者とか関係者だけだろうから当日券が買えるのでは? と考え、金曜日の仕事帰りに千駄ヶ谷の国立能楽堂に立ち寄ってみた。
当日見れなくともチケット売り場で直近の公演を買って帰ればいい。
という読みだったのだけれども、見事に外れ、当日券はおろか購入可能な1ヶ月以内の公演チケットはほぼ完売していた。

仕方がないのでせっかく現地まで足を運んだことでもあるし、売り場の方にチケットの購入について教えていただくことにした。
それによるとやはりというべきか、今どきはネットを介してが一番買いやすいらしい。

国立能楽堂での公演については、毎月10日頃に翌月分を、インターネット、電話、現地の売り場で販売している。
幸い2月の10日は土曜日だったので、インターネット購入にチャレンジしてみることに。

インターネットの予約開始は午前10時ということで、事前に「国立劇場チケットセンター」の会員登録を済ませ、iPadの秒針を片目にチラ見しつつのクリック連打でわりとすんなりとチケットを購入できた。

一回だけの体感という但し書き付きで言うと、業者が参戦してて絶対買えないとかネット回線の強さがものをいうとかいった無理ゲーレベルではなく、ちゃんとやればどこかしらの席は普通に買えそうだなと感じた。
購入したのは3月15日(金)17:30開始のものだったので、もしかしたら土日の公演はもっと競争率が高いのかもしれない。

ちなみにお値段は狂言と能のセットで5,517円。
クレカ払いで、チケットは郵送にして、一週間ほどで届いた。

チケット

謡曲集を購入

3月15日まではあと1ヶ月強ある。
おそらく何の準備もせずに当日現地に向かい客席に座っても充分には楽しめないだろう。
何らかのお勉強をしていくとして、一方で初回は余計な先入観がない状態でぶつかりたい気持ちもある。

そこでYouTube動画を漁るようなことは避け、家の本棚で20年以上積まれていた世阿弥芸術論集(新潮日本古典集成)を読むことにした。
読了した風姿花伝の続きだ。
世阿弥といえば風姿花伝だが、実は他にも20ほどの著作があって、芸術論集には風姿花伝の他に至花道、花鏡、九位、申楽談議が収録されている。

話題は逸れるがこの集成の本、買ったときは函はきちきちで逆さにして振っても取り出せないわ、パラフィン紙はぐちゃぐちゃになるわ、使い辛いことこの上なかったけども、20年以上経っても中の本は全く劣化しておらず、やっぱ本は函入り+パラフィン紙包装が最強なんだなと思い知らされた。

なんか最近出た集成の新版は函入りやめちゃったみたいで、20年を経てこういうのを知ると、もったいないなとも感じる。
函入りって店頭で売れないらしく、そのせいらしい。

話を戻す。
風姿花伝から相変らずの世阿弥節だった。
芸術論集所収の4編は花鏡が深く、談議はつまらなかった。
談議は世阿弥の子が書いた風姿花伝への回答書みたいなもので具体的にここをこうするといった話に終始するためだ。
あと、世阿弥著作の行間に漂う、芸を究め伝えていくことに対する使命感みたいなものがなかった。
研究者にとっては貴重な資料なのかもしれないが、私には必要なかった。

もうひとつ。話の筋がわからない、いまなにをやっているのかわからない、となってしまってはきっと楽しめない。

そこで台本を事前に読んでおくことにした。
必ずなんらかの形で台本が存在するはずということで探してみたら、やっぱりあった。
新潮社か小学館から出版されている日本の古典全集に「謡曲集」という名前で収録されているのがそれだ。
小学館のほうが後発だからか現代語訳つきで読みやすいらしい。
新潮の集成も手持ちの世阿弥芸術論集を見る限り、ほぼ現代語訳つきレベルの懇切丁寧な注釈がついており、手に入るほうで良さそうではある。

どちらかは地元の図書館に必ず置いてあるはずなので必要な部分だけ読むもありだと思う。
私は購入した。
これで今後また能をみたくなっても手元でどんな曲かわかる。
死ぬまで使えると考えれば安いもんだ。

※追記
実際の鑑賞後の結論としては、わざわざ謡曲集を購入する必要はなかった。
国立能楽堂の場合、現地販売の700円のパンフレットに詞章が記載されているのと、字幕システムがあるからだ。
それはそれとして手元で曲が確認できるのは便利なので、何回か能を観る気があるなら買っておくのは十分ありだと思う。

さて、今回の曲目は角田川(隅田川)だ。(ちなみに狂言は長刀問答・なぎなたあしらい)
ちゃんと小学館の謡曲集の2巻に収録されていた。
この謡曲集、1巻は普通に売っているのになぜか2巻だけ絶版で、ネット通販で探すはめになった(無事適正価格で購入)。
流し読みして最初にわかったのは、能が総合芸術だということ。
台詞あり、歌あり、伴奏あり、舞あり、と台本だけでは話の筋はわかるものの、それらが組み合わさってどんな表現になるのか。
やはり実際に一度体験してみなければわからないだろう。

というわけで次回は鑑賞編。

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