11/12 「雇用によらない働き方対策交流集会」を開催

 11月12日、全労連労働法制中連主催で「雇用によらない働き方対策交流集会」を開催しました。 財界・政府によって「雇用によらない働き方(ギグワーク)が着々と拡大されていることに危機感をもって、法制度の改善や要求運動の前進をはかるため行いました。使用者側は、雇用労働者と同じ業務の担い手にフリーランスを活用することで雇用責任をまぬかれながら、大幅なコストカットを実現しようとしています。こうした動きに対して、参加者から下記のように実態、問題意識と取組が報告されました。

伊藤圭一・全労連常任幹事 「問題提起」

 労働者性を偽装した請負、業務委託系や契約で使用者責任を逃れるビジネスが様々な産業で横行。偽装請負に対し、現行の労働法制、司法は十分対応できない。労基法上の労働者性の判断基準として、1985年「労働基準法研究会報告(労基研報告)」がよく用いられる。これをあまりに厳格に適用するために今日のあいまいな雇用関係が保護されない。労働者性概念を見直し、労働法の適用範囲を拡大すべきではないか。また、労組法上の労働者性が認められても使用者が団交拒否する事例が多く、実効性確保が課題。労働者性判断要素の当てはめ方を時代の変化をふまえたものにするとともに、最初に労働者と推定し、それを拒否するのであれば使用者側が立証責任を負う形にすべきではないか。
 政府のフリーランスガイドラインは、独禁法や下請法による規制である。資本金1000万以下の発注事業者は対象とならず、報酬規制は形だけの協議となって有名無実化する。申告すれば仕事がなくなるというデメリットもあり、結局使われないのではないか。
 労働者は必ずしも労働者性を獲得したいと自ら言わないことも多い。当事者の団結の場を用意して労働者性保護の重要性を理解してもらうとともに、法制度面で労働者性概念の拡張と立証責任の転換をはかることが求められる。


岸朋弘・自由法曹団本部事務局次長/弁護士 

「自由法曹団の取組みの報告」

 労働者性が争点となった事件についてアンケートを実施したところ、労働者性判断が厳格すぎると思われるケースが少なくなかった。雇用主が安易に業務委託をする事案が多い。今の裁判所に労働者性を認めさせるには、業務実態を丁寧に把握し、それを裏付ける証拠を提出することが重要。  
現行の労働法のもとでも、明らかに労働者性が認められるにも関わらず業務委託の形をとり、労働法を順守していない事例がとても多いため、そうした事案でまずしっかり雇用であることを認めさせる。さらに、裁判所は労働者性を狭く解しているため、労働者性を広く認めさせることが重要。


産別報告① ダンプ・軽貨物

廣瀬肇・建交労書記長 

 ダンプ労働者を1972年から組織化している。2019年から軽貨物労働者(事業主)を組織化しはじめた。重層下請構造の下では、労働者に単価決定権限がなく口頭契約となりやすい。税金申告、持続化給付金、労災加入、自動車保険などの仕事に役立つ要求が強い。低単価が過積載、速度超過を生じさせるため、先日、省庁要請と記者会見を行い、フリーランスに対する保護や待遇改善を求めた。
 ダンプの組織化においては、1970年代に労組法上の労働者性が認められた「思川砂利事件」判決を根拠とし、団交権を確立し使用者責任を追及していきたい。ダンプ、軽貨物ともに労災保険の特別加入の対象であるが、この制度は「労働者ではないが労働者に類似した働き方」と厚労省がみなす形で、労働者ではない存在を広げてしまう事を警戒している。


産別報告② ワットラインサービス、ハッチーニ、学研

林博義・全労連全国一般書記長

 ワットライン、ハッチーニ、学研の事例を報告する。この3社の特徴は以下の点である。
1.ワットライン、学研は労組法上の労働者のたたかいである。使用者が団交を拒否している。
2.ハッチーニは労組法上の労働者性は認めているが、労基法上の労働者性については認めていない偽装請負。
3.持株会社の使用者性が問われている。グループ全体で労働者を管理していく動き。
4.契約が一方的に決められる不平等、不利益な契約。罰則、契約解除もありうる。
5.ロイヤリティや手数料、経費、仕事量などが一方的に決められる。
6.社会保険料は個人負担である。 
7.3社ともに労働者性が認められるはずだが、交渉では限界があり、労働委員会や裁判で労働者性を認めさせるたたかいになるという意味で、ハードルが高い。

<各社の実態>※持株会社をHDと表記
・ワットライン
会社構造
東電HD→東電パワーグリッド→ワットラインサービス
スマートメーター交換工事の仕事が今後なくなる可能性が高いとして、その業務で働く労働者が組合を作ったところ、単価切り下げや契約更新打ち切りの通告といった組合攻撃が行われた。
・学研
学研HD→学研塾HD→学研エデュケーショナル
ロイヤリティが異常に高く、多重的にお金を吸い上げるしくみ。
・マルハチ
丸八HD→(寝具リビング用品事業部門)丸八真綿販売→ハッチーニ(※現在はダイレクトセールスに統合)
賃金は事実上HDが支払っているが、会社側はこれを認めていない。
指揮命令は丸八販売が行う。
売上が下がると呼び出され、個人請負になるといわれる。
契約内容をほとんど説明されていない。
補償金を取られる。
顧客情報は会社に所属し、販売エリアや顧客が限定される。

<課題>
1.契約が一方的で、業務請負契約の説明がきちんとされていないと同時に、罰則規定がある。これを是正する必要。
2.最低賃金保障を設けるべき。
3.労基研報告に依拠するのでなく、労働者性判断の法制化が必要。
4.少なくとも団交応諾義務の権利確立を。
5.雇用保険、労災保険、健康保険の加入義務と企業負担を。
6.持株会社の使用者性を認めさせ、団交に応諾させるべき。

産別報告③ 映画製作、俳優、文化芸術分野

梯俊明・映演労連書記長

 映画製作大手の亜細亜堂の労働者から、新人の報酬が異常に低いとの相談があった。入社後すぐ業務委託になり、固定給は3万のみ、それすら切り下げようとしている。何年かすると契約社員になることもあるが、契約社員になると長時間労働が当たり前で残業代未払いが横行。組合で交渉したことで、固定手当が増加し、労働時間管理導入や就業規則改善といった成果が見られた。

 同時期に、東映アニメーションは、業務委託200人をいっせいに雇用契約に転換させた。同社は会社規模が一定あるためそれが可能だが、中小企業では難しい。成果の背景には40年にわたる組合のたたかいがあったと説明すると、そんなに長く耐えられないという人が多い。それだけ余裕のない労働者が多い。
 

 産業構造にどこまで組合が問題提起するか。2021年、経産省が「映画製作現場の適正化」に関する報告書を発表した。ここにおいて、1日13時間労働を上限とし、それを超えたらインターバルを10時間とすると規定されている。しかし、アニメ映画、ドキュメンタリー映画の現場は対象外とされている。使用者側としては労基法の適用に抵抗感が強く、その前に業界自主規制をしたいとの考えから適正化機関の設置に賛同した。上記経産省報告では、「独立した事業者」という表現が頻出する。「瀬川労災事件」においてフリーカメラマンの労働者性が認められたにも関わらず、これを覆す認識である。


 また、2021年、文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議に対する要望書」を映演労連フリーユニオンとして提出した。映画業界では、出演者が一度ギャラを許可するとそのあとは元締め制作会社がどのようにその作品を使ってもよいという慣習がある。これが舞台関係にも適用されると大打撃。

産別報告④ スーパーホテル

原田仁希・首都圏青年ユニオン委員長

 ビジネスホテルを全国に展開するスーパーホテルについて報告する。男女ペアの業務委託、1400頁のマニュアル、住民票を移して24時間365時間働き詰めとなることが強制される。会社は「協議」なら行うと1回だけ協議を行うも、その後は拒否している。労働委員会に不当労働行為として申し立てた。


 下記の点で、労働者性が認められるべきである。
1.諾否の自由
―配属ホテルの自由がない 
―理念、施策の遵守を求める
―マニュアル遵守もとめる
―研修・会議は義務
―一方的契約解除が可能
2.業務遂行上の指揮監督
―業務チェック表がある
―業務に関わる評価=ライセンス制度がある
―本部が毎月訪問
―クレーム対応が義務
3.時間的・場所的拘束
―場所:住民票も移して特定ホテルに配属 
―時間:業務の時間が指定されている
―労務代替性がない:(代替性がある場合、指揮命令関係を弱める) 代替性がない、支配人業務を他者に任せられないことは、指揮命令関係が強いことを示す
―報酬の労務対称性がない:業務委託料は定額


 労基署はこれらの争点を認めつつも、賃金減額などがない(働いていない時に業務委託料を減額するなど)ことを理由に労働者性を認めなかった。会社は、労働者性は全くなかったと主張している。


 このほかにも、下記のような事案に対応した。
・美容師・・・店舗のすべての美容師が業務委託で、実態は労働者だったが、労基署は「9割が黒でも1割が白(事業者性がある)だと指導できない」と。
・カーナビ操作確認業務・・・労働時間が規定されていたが、労基署は指導せず。
明らかに実態は労働者であるのに、外形のみ業務委託契約である人が増加している(偽装業務委託)。使用者も深く考えずに業務委託を選択している例が多い。


 青年ユニオンでは、団交を応諾しない企業に対し、SNSや社前運動で抗議し、団交を受け入れさせてきた。業務委託に対しても団交応諾義務があることを周知させたい。フリーランス110番等を実施してはどうか。

まとめ

 厚労省には、労働行政を動かし司法警察権を行使することに躊躇が見られる。今回挙げられたような具体的事例を突きつけ、労働行政は実態判断をしていないではないかと迫っていく必要がある。労基研報告は労働法ではない。労働者性判断基準に一つでも適合すればしっかり法的に保護させていく必要がある。

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