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品種リレーに産地リレー。梨リレー、ついていきます!

こんにちは。全農広報部note編集部員Nです。
8月ですね。お盆が近づいてくると、梨が食べたくなってくる…。というわけでみなさん、「幸水」楽しんでいますか?甘くみずみずしい果肉にシャリッとした食感は、暑い日にぴったりのおいしさです。私の地元・富山では例年、8月のお盆前あたりに幸水の出荷が増えるのですが、関東圏は一足早く、特に今年は例年より早く店頭に出始め、すでに今が幸水のピーク。近くのスーパーの青果売り場には千葉県産を中心に、茨城県産や栃木県産などの幸水が並んでいます。

梨は中国南西部原産で、西に広まってフランスで「西洋なし」、東に広まって中国や朝鮮、日本で作られる「東洋なし」が生まれたといわれています。日本では果物の中でも歴史が古く、弥生時代にはすでに食べられていたとか。江戸時代に品種改良が進み、早生から晩生まで数多く育成され、今のように甘くてやわらかい梨は明治以降に発見されたり、品種改良されたりしたものだそう。今では50品種弱ほどが栽培されています。

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梨は「日本なし(和なし)」「中国なし」「西洋なし」の3つに分類されます。日本なしは「赤なし」と「青なし」に分けられ、赤なしは皮が褐色の梨で幸水や「豊水」、「新高」など、青なしは「二十世紀」や「秋麗(しゅうれい)」のように果皮が黄緑色の梨です。ちなみに写真左の梨は千葉県産幸水、右が鳥取県産二十世紀です。

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日本なしの代表的な品種

幸水
1959(昭和34)年に登場。「菊水」×「早生幸蔵」
甘くみずみずしい赤なしで、シャキッとした食感です。
日本なしの栽培面積の約40%を占める、代表&人気品種。
主な出荷時期は7月下旬ごろから

豊水
1972(昭和47)年に登録。「幸水」×「石川早生×二十世紀」
甘みが強くほどよい酸味もあり、濃厚な味わいが特長。
主な出荷時期は8月中旬ごろから

あきづき

2001(平成13)年に登録。「新高×豊水」×「幸水」
主要3品種のいいとこどり。甘みが強くジューシーで大玉。
主な出荷時期は9月中旬ごろから

新高

1927(昭和2)年に命名。「天の川」×「長十郎」と言われている(推定)
大きなものは1kg以上に。貯蔵性が高い。
主な出荷時期は9月下旬ごろから

二十世紀

1888(明治21)年に千葉県で発見された。
青なしを代表する品種で、鳥取県のブランド梨として有名。
ほどよい甘さと酸味があり、果汁が豊富。
主な出荷時期は9月ごろから

※出荷時期は露地栽培のおおまかな目安です。産地によって若干、前後します。

梨の品種リレーと産地リレー

多様な品種がある日本なしは品種によって少しずつ収穫の時期が異なるため、主要品種ですと幸水→豊水→あきづき→新高…の順番で登場します。また、沖縄を除く全国各地で栽培されているので、九州から出荷がスタートし、北関東、関東、東北…と産地もリレーします。

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ビニールハウスの中に梨の樹があるのがわかりますか?佐賀や福岡などでは、ハウス栽培やトンネル(雨除け)栽培をすることで、どこよりも早く幸水を出荷することができます。

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ハウス栽培、トンネル栽培、露地栽培と栽培方法を組み合わせ、人気の幸水は出荷期間を長くしています。そのため、例えば首都圏では(お店によって取り扱う産地は少々異なりますが)、6月下旬に佐賀や福岡などのハウス幸水が先陣を切り、茨城、栃木、千葉と続き、9月まで長野や福島と、長く幸水を楽しむことができます。

日本なしには他にもいろいろな品種があります。大田市場(東京都)に出荷する主要梨産地で構成する「なし主産県情報交換会」のみなさんに、ぜひ食べてもらいたい注目の品種を教えてもらいました。

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JA全農福島 「王秋(おうしゅう)」
幸水や豊水と比べると県内の生産量は極わずかで、なかなか目にする機会はない貴重な品種です。極晩生種としては品質・食味も良く貯蔵性も高いのが特長です。10月下旬からの収穫になりますが収穫直後は酸味があるため、貯蔵し酸味が抜けた12月からの出荷となり、クリスマスの頃においしく食べることができます。
主な出荷時期:12月 主な出荷先:福島県内、関東・関西地方

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JA全農いばらき「恵水(けいすい)」

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「新雪」と「筑水」を交配して育成した、茨城県オリジナル品種。糖度が高く、酸味が少ないため、食べた時にとても甘く感じられる梨です。大玉で食べ応えがあり、梨独特のシャリ感とさわやかな風味が特長です。県内の各産地で普及が進められています。
主な出荷時期:8月下旬~9月 主な出荷先:京浜(一部タイ、香港への輸出あり)

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JA全農とちぎ 「にっこり」

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「新高」と「豊水」の掛け合わせから生まれた栃木の赤なしです。名前は、栃木の観光地として知られる「日光」と梨の中国語「リー」を掛け合わせて付けられました。食味は甘みが強く、ジューシーで幅広い年代層から親しまれています。長期保存が可能なため、年末のお歳暮需要や年始のギフト需要にも対応しています。また輸出もしており、東南アジアを中心に展開しています。
主な出荷時期:10月中旬~11月中旬 主な出荷先:京浜、東北

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JA全農さいたま 「彩玉(さいぎょく)」
大玉でジューシー、酸味が少なく糖度の高い「埼玉県オリジナル品種」です。400g以上のものに限定して出荷しています。
主な出荷時期:8月中旬~9月上旬 主な出荷先:埼玉、東京

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JA全農ちば 「秋満月(あきみつき)」
千葉県が新たに開発した「秋満月」は果実が大きく、果肉は柔らかくなめらかで、果汁がたっぷり!甘味が強く、酸味が少なめなので幸水好きな方にもピッタリです。新しい品種のため栽培している産地が少なく、まだあまり市場には出回っていませんが、今後の普及が期待されています。
主な出荷時期:9月中下旬~10月上中旬 主な出荷先:千葉、東京

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JA全農長野 「南水(なんすい)」

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長野県オリジナル品種の南水です。一度食べたら忘れられない甘さとジューシーな果汁が人気です。他の主産地に比べて梨の収穫(出荷)が始まるのが遅い長野県ですが、その中でも南水は収穫期が遅く、実が熟すギリギリまで木にならせます。その栄養分で食味よく、また、晩秋まで長く楽しめます。
主な出荷時期:9月下旬~10月 主な出荷先:長野県内、関東、中京、関西、九州

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JA全農ふくれん 「玉水(ぎょくすい)」

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福岡県オリジナル品種。露地栽培の幸水より早い時期(7月中下旬)に出荷することができる赤なしで、糖度も幸水より高いのが特徴です。来夏、市場デビューしますので、お楽しみに!
主な出荷時期:7月中下旬 主な出荷先:東京、大阪、福岡の一部市場

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JAさが 「甘太(かんた)」
晩生種の新高と同時期に収穫できる大玉品種で、糖度が高く食味が優れていることから注目されています。まだ、生産量は限られていますが、これから佐賀県内で普及が期待される品種です。
主な出荷時期:9月 主な販売先:地元直売所

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地元で人気を誇る品種から、これから普及が期待される新品種まで。全国の市場に出荷されているものもあれば、地元の市場や直売所などにしか出回らないものもあります。出会ったらぜひ、食べてみてくださいね(私もぜひとも出会いたい!!)。

体にうれしい栄養豊富な梨。切り方のひと工夫でおいしくいただけます

日本なしは水分が約90%。食物繊維とカリウムが比較的豊富で、肉類の消化を助けるたんぱく質分解酵素や疲労回復に役立つアスパラギン酸なども含みます。日本なし特有のシャリシャリとした食感は石細胞によるもの。腸を刺激して便通をよくする働きがあるそうです。
また、皮に近い部分は甘みが強く、芯の周りはちょっと酸味があります。皮は薄くむいて種の部分を大きめに取り除くと、おいしく食べられます。

梨はおいしいだけじゃなく、花もきれい!

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春の桜の時期。ちょうどソメイヨシノが咲き終わる頃に、梨の花を楽しむことができます。梨の花は新高、豊水、幸水…と晩生のものから順番に咲きますが(実がなる順番と逆!)、富山の梨産地は丘陵地にあるので、特に主力品種の幸水が開花する時期は白いじゅうたんを広げたようできれいなんですよ(残念ながらここ2年は見ることができていません…というわけで、写真は2019年のものです)。みなさんの地元の梨産地でも、きれいな梨の花畑が見られるのではないでしょうか。

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きれいだなぁと見とれているその下では、梨作りにおいて重要な仕事が行われています。

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それは「交配」です。実がしっかりなるように、農家さんが雌しべに花粉をつけ、授粉させています。このあと、ついた実からいいものを残して、変形した実や虫害のあるものを落とす「摘果(てきか)」、太陽の光が入るように生い茂る枝を整理する「枝管理」、品種によって「袋かけ」などの作業を行い、収穫へ。幸水、豊水、あきづき、新高…と、シーズン最後まで品種リレーを走りきります。収穫が終わってホッと一息…する間もなく、作業は続きます。落ち葉を片付け、伸びた枝や芽を切って「せん定」し、梨の枝を棚に固定する「誘引」、そして春になって花が咲いたら花粉を採取して、交配へー。「おいしい梨を届けたい」と、梨農家さんたちは一年中、畑での作業が続きます。

また、花が咲いている時期に低温が続くと実がつかなかったり、雹(ひょう)や霰(あられ)、台風などの被害を受けたりと、無事に収穫を迎えられるか天候にも大きく左右されます。昨年は全国的に梨の開花(授粉作業)時期に曇天や低温が続き、実がつきづらかったことや、収穫を控えた夏(7月)にも長雨に見舞われ、病気の発生が例年より多くなったため、収穫量が少ない年でした。今年は昨年に比べると出荷量は増えると言われていますが、一部産地では春先の低温や霰の被害を受けているところも…。毎年毎年、確実に実るわけではありません。

今年もまたおいしい梨たちを食べられることに感謝して…。私も梨リレー、ついていきます!

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