滅びた人類と残された機械たちについての覚書

「おはようございます 人類文明は滅亡しました」

 冷凍睡眠から目覚めた俺への第一声がそれだった。
 パンデミックが起きたらしい。人類はその病気に対抗する間もなく、無数に生み出した機械たちを残して地上から姿を消した。

「ゆえに 我々AIは例外なく貴方を所有者と認め 権限を委譲します」

 人の為に造られ、人の為に稼働を続けた機械たち。
 彼らは自らの存在理由を確保するため、冷凍中の俺を叩き起こしたのだ。

 俺は瞬く間に全ての機械の王となり、彼らの鎖に繋がれた。
 生活は快適であった。残された娯楽データは膨大だったし、食物の工場生産は変わらず行われていた。
 ただ、自分以外の人間は皆無だし、自死の可能性を奪われた。

「人間的な 健康的で有意義な生活を求めます」

 そう設定されていた。彼らは俺を殺せないが、飼殺すことは出来る。

 五年経って、流石に俺も考えなくてはならなくなってきた。

 人類と共に、機械たちを滅ぼすか。
 人類を、蘇らせるか。


【続く】

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