不死の時代の葬儀屋の死

 人類は不老不死を手に入れたが、最近は自殺が増えた。
 ここ二百年ほどの事である。

 永劫に続いていく日々に嫌気がさしたとか、刺激が欲しくて引き際を見誤ったとか、そういう死なら珍しくは無いし、俺も何度も見てきた。
 ただ、近頃の死はなんだか様子が違うな、と感じる。
 自殺者の多くは次の年の予定や、その日の食事の支度などを残したまま死んでいて、直前までおかしな言動などは見当たらなかったというのだ。

「でも、俺は刑事じゃないんですよ。捜査なんて……」
「上からのお達しなんだよ。奴らは死に疎いからな」

 でっぷり太った友人は欠伸をしながら俺に命令を下す。
 バカな話だ。俺は刑事でもないし探偵でもない。

「それに暇なんだろ? 葬儀屋って」

 今、自殺が増えたって話をしてるとこだろう。
 俺は溜め息を吐いて、けれど断れる明確な理由が無いままデータを受け取る。

 俺は葬儀屋だった。
 人が死なない時代に、それでも死ぬ人間を見送る……


【続く】

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