残り十三人の僕

 僕たちは、生まれた時から代用品だった。

 全ての僕たちにはただ一人の『オリジナル』がいて、僕たちの血も臓器も手も足も、彼に何かがあった時の為に用意されたスペアに過ぎない。

 僕がその事実を知ったのは、僕たちの一人が身体に傷を負ってしまった時のことだ。些細な理由で出来た、足の傷。
 その僕は、大人たちに連れていかれて二度と帰ってこなかった。

 ……まぁ、その記憶は消されたんだけど。

 庭の隅にメモが挟んであったんだ。
 僕が好きな木の根元に、こっそりと。

 だから僕も、同じことをする。
 もし、僕が無事に戻って来たらこのメモを破って捨ててしまうつもりだ。
 けれど、僕たちの中の誰かがこのメモを読んでいるということは……

 僕は部品にされたか、処分された後、ってこと。

 ショックだろうけど、もう時間がないから、後はこれだけ。
 もし僕にそのつもりがあるなら、何としてもそこから逃げ出してほしい。

 残り十三人の僕を、救って欲しい。


【続く】

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