魂の在処、肉体の生死、精神の真贋

 俺は交通事故に遭って死んだ。
 首はへし折れ内蔵はズタズタ。骨も砕けて手術してもほぼ回復の見込みはない。医者にそう言われ、俺は魂の電子化を受け入れた。

 脳の中身を全てアップロードし、電脳の世界で再生する。
 他者にとってはVRに過ぎない世界が俺の全てとなってしまったが、現代においてそれは珍しいことでも不便な事でも無かった。
 電脳世界でも仕事は出来るし遊ぶことも出来る。現実世界の友人とだって、実際に顔を合わせているかのように話すことも可能なのだ。

 ただ、電脳化してしばらくは行動が制限された。
 精神の安定が必要だと言われたからだ。毎日毎日カウンセリングを受け、刺激の少ない食事データを与えられる。
 入院生活だと思えば耐えられたが、肉体の苦痛が無い分、退屈だ。

 ようやく制限が解かれた時には、俺宛にたくさんのメッセージが届いていた。

『この退院祝いの時の写真、送っとくぜ!』

 ……そこには。
 死んだ筈の俺の肉体が写っていた。

【続く】

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