機獣狩り

「仕事の依頼、来てるよ」
「断っとけ」
 リリに言い放ち、俺は毛布を被りなおす。
 そう、と彼女は答え、「なら家賃を払ってきてよ」と続けた。
 リリはまだ十五の癖して、倍は生きた俺に敬意を持たない。
 そしていつも、正論しか言わない。家賃を払う余裕なんて無かった。
「分かった、受けるよ。……で、今回はどっちだ?」
「捕獲。数は一体。地区はCの四」
「Cの四? 廃墟地帯かよ。ってことは……」
 俺は溜め息を吐く。それを受ければどうなるか、想像がついたからだ。
「やっぱり断ってくれ。家賃はどうにか……」
「無理。延滞は効かないし、受けるって返事したから」
「ああそう。仕事が早いな」
 リリはいささか真面目過ぎる。
 手を抜いて生きるという事を知らないのだ。
「……嫌なら、機獣狩りなんて止めればいい。無理だろうけど」
 そしてやはり、正論しか言わない。

 鉄と油で出来た獣を狩る。
 俺は、それ以外の生き方を知らなかった。

【続く】

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