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手塚治虫が語るエロチシズムとエロの違い

今回は「手塚治虫が語るエロチシズムとエロの違い」
というテーマでお話ししたいと思います。


エロと一言でいうと低俗的な印象があるかもしれません
非道徳的という印象もあるかもしれません
でも実は手塚先生って結構エロとかエロスなマンガ描いているんです。

ではどういう想いがあってこういうものを描いていたのか
エロスというものにどう向き合っていたのか
「大人手塚のたしなみ」としてちょっと深堀してみようと思います。



こちらは「人間昆虫記」という作品のイラストです。
非常に官能的でエロティシズムを感じさせてくれます。

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そして次はコチラ
2014年手塚先生の長女るみ子さんが先生の仕事場の「開かず」状態
机の引き出しとロッカーを開けたところ
まだ世に出ていない「秘蔵」イラストが約25年ぶりに発見されました。

そのイラストがエロいものばかりで
隠していたエロイラストを世間に公表されたことで
「黒歴史が公開されてしまった」
「公開処刑」
という声も挙がったのですが
そもそも我々愛好家からすると今更?…ってな感じで
世間が騒ぐほど驚いておりません。
むしろ手塚先生って様々なフェチズムの走り、先駆者でもあるので当然というか、そうでしょ。って感じです。

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確かに死後にあれこれ詮索されるのは
普通の人だったら
もう一回死にたくなるレベルのことかもしれませんが
これだけ偉大な方になるとこれはもう、しょうがないですね。

過去に偉大な芸術家、音楽家、科学者など歴史を紐解いていくと
数々の偉人たちが死後に恥部を暴かれています。

これは現代でいう個人情報云々というより人類の発展の歴史であり
偉人の足跡や思考を辿る意味でも非常に貴重なことと言えますしね。


現に2年後の2016年新潮社より
「手塚治虫の工口ティカ」と題してこの時の秘蔵イラスト
約200点のうち、手塚作品の重要な要素の一つ「工口ス」をテーマに選び
公開されています。

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裸の女性が「ドロドロ」と煙を出しながら鯉やネズミ、馬などに変身していく様子やグラマラスなネズミが体をくねらす絵など
今でいう「ケモナー」「萌え」の元祖的なものが多く残っています。

長女るみ子さんはこう語っています。
「動物や昆虫までが色っぽく、
命の変容する様が工口スを放つのが父の作品の特徴。
それを描くのを楽しんでいたことが伝わる。
工口スは手塚マンガの“毒”でもあり魅力でもある」
と。


これらに限らず
手塚治虫は萌えマンガの元祖とも言われており
ある意味で日本のあるゆるフェチズムを描いて来た変態作家でもあります。

もう容赦ないですよ。
鉄腕アトムやジャングル大帝しか知らないような読者には腰を抜かす事かもしれないですけど
本気の手塚治虫ってとてつもないですからね。
本当に比類なき才能の偉大な作家であると言えます。


今回の公開について
どこぞの者とも分からない者ではなく
身内である娘さんが仕切っているから問題ないと思います。
そして本当にヤバイものなら公開されないでしょ。

まぁ…一部ヤバイものもあったんですけどね(笑)

るみ子さんも
「お父さん、すみません」と謝罪しているからいいでしょう。

ほかにも、手塚先生は
女の子の一人称を「ボク」って言ってみたり
女はおしとやかにと言われていた時代に
『リボンの騎士』では「男装」してみたり
『MW』は「同性愛」
『奇子』では「少女監禁」「近親相姦」などを描き
かなり攻撃的な作家であることは間違いないです


そんな手塚先生が描く「エロチシズムとエロの違い」について
この「手塚治虫全史」を参考に勧めていきます。
分厚い本ですよコレ。6000円もしますからね

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この本に1968年に手塚先生とファンの青少年との対話記事が掲載されており
その記事を参考に読み解いてみようと思います。

「先生の描く女性はすごく美しいのですがその秘訣は?」(24歳男性)
手塚:女性をよく観察すること
それに自分の描いた絵を見てエキサイトするつもりで描くこと
自分の描いた女に、愛したいとか寝て見たいと思うようになるまで描くことです。


この自分の描いた絵にエキサイトするという発言が核心をついていますね。
自分の描いた画に、寝てみたいって発想がもはや天才的です。
自分で描いた絵に興奮するというのは、
映画監督が自分の作品に興奮するのと一緒
作り手が興奮するからこそ、
その作品に言葉にできないものが宿るんでしょうね。

手塚先生のスケッチを見ていると
何度も何度も女性のラインを書き直しています。
エロチシズムが生まれる極限まで書き直し美しさとしての曲線に
こだわりを持っていることが伺えます。

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「ゼフィルスはすごく素晴らしく描かれていますが一部にはハダカがいやらしいという人もいますが…」(18歳女性)
手塚:イヤだと言う奴ほど好き。
自己欺瞞で陰では笑っているんでないかと思う。
16.17歳ごろ.時期的にセックスを美しいものと崇拝し神格化した偶像に見ることがある。
またセックスの美しさにうたれた人が体験したあと
「どういうこともねぇじゃねぇか」と思うまで考えている人がいる。
それでもなおいつまでもそうだったら医者に診てもらえばいい。


ちょっと深い言葉ですが
性的なものを否定、批判したってそれは生物の根源的なもので
それは自分を騙しているってこと。
如何にそれを正当化しようが
生物である以上
しょうがねぇじゃねぇかってこと。
それでも批判するなら「病院行け」ってカッコイイ!
手塚先生は常にどの作品でも「性=悪」じゃないんですよね。
「性」ってもっと身近でとても神秘的なものであり命の根源なんだよねって
ことをいつも折り込まれています。

紹介している作品は「地球を呑む」です

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「エロチシズム芸術とエロの違いは?」(20歳男性)
手塚:芸術かエロかは、それを描いた本人、
創った本人の目的意義の問題だと思う。
煽情的で享楽的に出した場合芸術よりショーで見世物的な低俗なエロになる。目的意識がはっきりしていて本人がいわんとしていることを
訴えようとしているならば芸術だと思う。
まんがでも読んだ人によって俗悪という人もいるし、いいと言う人もいる。
それに、その人の好き嫌いにもよる。
たとえばオデン。
うまいと言って喰う人もあるし、腹の足しにするという人もある。
芸術の場合、ある程度の誇張、デフォルメがないとだめじゃないか。
写真みたいな絵は、きたなさを感ずることがある。

要するに本質は作者の意図にあるってことですね。

欲情させるために煽った絵や、
気分を高ぶらせたりするだけの作品は低俗ってこと。

作品が快楽の追求が一番前に来ちゃうとそれはエロ
目的意識のために描くエロスはエロチシズムになるってことですね。

ここら辺はほんと
現代は視覚主義的な社会になってしまっているので残念ではありますけど
手塚治虫が描く根源的なエロチシズムを手塚作品から
読み取って欲しいと思います。

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「アングラをどう思いますか?」(19歳男性)
手塚:世に認められていない芸術。いいことだ。
アングラの中には世間に認められなくても隠れてやろうというのと
はったりをかまえてやるのと二つがあるが
隠れてやるほうが好き。
分かる奴は分かれ、分からないやつは分からなくてもいい、と。
自分の好きなものをやっているほがいい。


ここら辺も反逆のマンガ家たる所以で
世に認められるかよりも自分の描きたいものを描く方がいいと言ってます。
まぁそうは言っても世にめちゃくちゃ認められたいと思っていたのが手塚先生なんですけどね…(笑)
やはり作品作りの根底「描きたい」という衝動の中には
「危険」とか「狂気」
孕んでいた方が面白いという思いがあったというのは間違いないですね。


というわけで今回は
「手塚治虫が語るエロチシズムとエロの違い」というテーマでお話ししました。

手塚マンガがエロいと言われる所以
そして手塚先生がエロスを描く理由の一端がご理解いただければ幸いです。

それではまた次回。




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