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「鉄腕アトム」の知られざる真実

今回は「鉄腕アトム」をご紹介いたします。
手塚治虫の代名詞と言えばやはりこの作品でしょう。

累計発行部数は1億部以上
マンガは読んだことがないけど名前は知っているというくらい国民的マンガ
そんな「鉄腕アトム」は2021年で

誕生70周年記念という節目の年であります。

これを機に70年後の真実ということで
知られざる「鉄腕アトム」
手塚先生がアトムに込めた真の意味を解説していきたいと思います。

アトムについては有名すぎて案外、知らない方が多いですし
名前だけが一人歩きしているのは確かです。
しかし
これを見れば「鉄腕アトム」が何なのか…大体分かる(笑)
そしてアトムが絶対に読みたくなる内容になっております。
手塚ファンの方も
ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。

それではいってみましょう。


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まずアトムについて概要をサラリと押さえておきましょう。

1952年4月連載開始
1963年1月テレビアニメ放送開始

(この時の衝撃はチェイサーというマンガを読んだほうがいいと思います。めちゃくちゃ面白いです。過去記事からどうぞ)


1968年3月連載終了

実に16年にも及ぶ長期連載作品でした。

累計発行部数は1億部を超えており
歴代マンガ発行部数の9位です、

しかし… 1冊あたりの発行部数を見てみますとランキングが変わります。
(ちなみに2019年のデータです)

これは発行部数を巻数で割ったもので
これをすると1冊あたり何冊売れているかという指標になるので
純粋に巻数が多いから発行部数が多いランキングではなくなります。


するとどうなるか
1位はドラゴンボール595万部(すごいですねDB)
2位がワンピース484万部(やぱりすごい)

3位が鉄腕アトム476万部なんですね。

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70年前の作品であるにも関わらず如何に「鉄腕アトム」が凄まじい作品であるかが伺えるかと思います。


●誕生の経緯

そんな「鉄腕アトム」誕生の経緯ですが
実はアトムとつくだけでも「アトム大陸」「アトム大使」「鉄人アトム」
「鉄腕アトム」にたどり着くまでに3度も変更されています。

最初の「アトム大陸」は1948年、終戦間もない戦争の爪痕がまだ残るなか
原子力を平和利用する国の話を描こうと天岩戸伝説をSFっぽく描いたものが発端になっています。
しかしあまりにもストーリーが大きすぎるという理由でボツを喰らいます…

ちなみにこの構想はボツになりますけど後に
「火の鳥黎明編」として引き継がれています。
(つまり火の鳥のボツネタがアトム誕生になっているというわけ)


しかしとりあえずタイトルは主人公の名前が望ましいということで
どんな展開で、主人公がどんなものなのかも全く決まっていない中で
1951年「アトム大使」と改名して、
その場しのぎのタイトルをつけ見切り発車しちゃいます

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スタートしたものの
「アトム大使」の連載3回目までタイトルのアトムは一切姿を現しません。
…というか主人公はケン一というとんちんかんぶり(笑)
完全に行き当たりばったりのとんでもない事になってます。

そして
連載4回目についに、アトムが初登場するもたった3コマしか出てきません。

その後に何回か登場するも消化不良のままなんと連載12回終了…。

ですが思いのほか好評だったそうで
編集長から今度は「ロボットのアトムに注目して再挑戦してほしい」
リクエストを受けるんですね。
…ですがロボットを主人公にすることによる冷たさを嫌って
手塚先生は却下しちゃいます。

というのも当時はロボットに感情があるような一般認識はなく
「SF」という概念すらない時代です。

今でこそロボットと言えば…「鉄腕アトム」や「ドラえもん」を
連想できますが、それすらない時代においてロボットと言えば
工業機械のようなイメージの方が強かった時代なので
手塚先生が断ったのも無理もない話なのです。

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ロボットはあくまでも物体にすぎない
そんなロボットに血を通わせるにはどうすればよいか?

あくまでも「愛と平和」をドラマを描きたかった手塚先生は
ロボットに家族をつくることで
心温かいロボットが生まれるという構想を得ます。

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そしてついに1952年に装いも新たにアトムを主人公にして
あの「鉄腕アトム」がスタートすることになります。
ちなみに雑誌予告では「鉄人アトム」がはじまりますと予告されていましたがさすがにダサイということで「鉄腕アトム」に変わりました。


ですから現在発行されている「鉄腕アトム」のコミックスは
「アトム大使」を第一話として扱っているのがほとんどですけど
これは厳密には正しくないんですね。

「アトム大使」はプロット的な作品ではあるんですけど
作中ではあくまでも登場人物の中の一人でした。
そしてアトムの第一回目というと皆さんが思うトビオが交通事故になり天馬博士が息子代わりにアトムを作るというあの有名なシーンが思い浮かぶと思いますがあれも違うんですね。

アトムの第一回目は「アトムの両親」というエピソードであり
後の「気体人間」というエピソードが正式な第一話なのです。

講談社漫画全集では第2話にあたり
本当のアトムの誕生シーンは「アトム大使の巻」の中で1ページにも満たず淡々と描かれています。
もうびっくりするくらいあっさり描かれています(笑)

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じゃあ、あの有名なあのシーンは何なの?

実はあの有名な「アトム誕生」の巻は
1975年6月にこの誕生シーンだけを独立した話として製造工程などがより詳しく書き換えたものだったわけです。

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書き加えと言えどこの修正は
元のエピソードを変えずより深く掘り下げて描きこんであるので非常に
秀逸な物語に仕上がっています。
まさに伝説的な第一話になったと言えるでしょう。

エアカーでの事故シーンは臨場感に溢れ突然の悲劇が伝わってきますし
誕生したアトムの目に潤いが宿っていく様や
一転して、博士に捨てられ人間の持つ愛情や憎悪を思い知ってしまう
人間とロボットとの狭間の感情がアトム大使にはない作品として機能していますね。

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この「アトム誕生」の巻は
鉄腕アトム別巻 手塚治虫文庫全集に収録されております。


というわけでここからが、みなさんの良く知られるアトムになっていくわけですがここからはマメ知識をいくつかご紹介していきましょう。


●アトムのモデルは


まずアトムのモデルは
憧れのディズニーであるミッキーマウスでは?とも言われておりますが実は
マイティマウスであると先生自身が公言されております。

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そして性格が欠点だらけのピノキオからきており
「できそこないのロボット」「完全無欠」ではないというイメージ作られたそうです。


●アトムは女の子?


続いてアトムは女の子だったという話
アトムの容姿のモデルはマイティマウスと言いましたが原型は自身の作品「メトロポリス」のミッチィとされています。

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ミッチィは天使と悪魔の力を持つ女の子ですがスイッチを押すと
少年にも少女にも姿を変えれる手塚先生お得意の両性具有的キャラです。
なので実際は男とも女とも言えないキャラ設定が根底にあったんですね。

しかも後年には
「アトムというのは本当は女なんですよ」

と手塚先生自身が暴露しておられます。

「女のロボットのつもりで作ったんです。
だからまつ毛がありますでしょう。
最初は靴を履いていなくて色っぽい脚をしているんです」
「しかし少年雑誌に女のロボットはおかしいし、妙にいやらしい(笑)という意見が編集サイドから出たため男の子という設定にした」

と明かしておられます。

作者自らが公言しているように元々アトムは女の子の設定だったんですね
初期のアトムを見てもらえればそのなごりを感じられると思います。

さらにはタイトルの「鉄腕」も当初はなかったのに編集に付けられたことによって女の子から男の子に設定を変えたという説もあります。

1980年第2期のテレビアニメ版の最終回では手塚先生自ら
「アトムの足は女です」と暴言を放つ事もありました(笑)

なんにせよ、アトムが女の子だったというネタは
そこらじゅうにあるので面白いですよ。



●アトムの指は4本?


よーくみるとアトムの指は4本に描かれています。

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これはディズニーに影響で
アニメで動かす時に4本だとちょうど5本に見えるからだそうです。
実際に5本で動かすと残像で6本に見えてしまうそうで
そこから着想を得て4本になっています。
加えて
6分半のアニメを構成する4万5000枚の作画から指1本減らすと
数万ドルの削減になるという話も聞き
コスパを求めたアトムも4本になったそうです。

…ということになっていますが
実は手塚先生はコレはウソと公言しています(笑)
ディズニーの話は本当なんですけどマンガ原作では動画じゃないので5本でも関係ないなのに4本のときもある
つまりテキトーだってことも暴露しています(笑)

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手塚先生ってねこういう言わなくてもいいこと喋っちゃうところがあるんで
もうね「マジすか?手塚先生」って感じです。

この本「鉄腕アトムプロローグ集成」という
全集未収録の解説マンガばかりを集めた必見の一冊に掲載されているんですが他にもこれらの作品の執筆秘話がこれでもかと暴露されています。
めちゃくちゃ面白いですよ。コレ
もちろん手塚先生本人による筆のものです。

例えばどうやって物語を作っているだとか
プロデビュー前の少年、後の石ノ森章太郎先生や桑田次郎先生や横山光輝先生に手伝ってもらったときのエピソードや
アトムの画が伸び縮みする理由
SFの概念がない時代に描いた作品がデタラメと批判されたエピソードや
こういう映画に影響を受けたエピソードなど手塚ファンならよだれもののお話ばかりです。
これはぜひ1冊持っておきたい逸品ですよ。


●手塚治虫の苦悩


そして面白いのが手塚先生が作品に抱える苦悩の一部始終が語られているところです。アトムの人気に連れてどんどんアトムが自分の手元から離れて行っちゃうんです。

編集からもっとアトムに「人間を殺せ」とか「暴力を振るわせろ」
そうすると面白くなると言われて、自分の意志に反したストーリーを描かされたり時代の流れに飲まれていく苦悩が見えるんです。

これは「青騎士」連載の時の話なのですが
自分の意志ではなく周囲の意向に沿って執筆をしたことを後悔していると語っております。
晩年には
「これは駄作であり、僕の好きな作品のトップ100にも入らない」
と爆弾発言も飛び出していますね(笑)


マンガとアニメでは、同じ作品であるにも関わらず全く違う作品になってしまったことに先生は相当悩んでいました。

先生は当初からアトムは
「未来理想社会、未来科学に対する信頼や啓蒙などではなく
むしろ科学的合理主義への疑問や警告」
であると語っております。

しかしテレビアニメ化によって
「正義の味方として科学文明謳歌というテーマにすり替えられた」
と訴えているんですね。

その原因は
「テレビ番組スタッフへの原作の理解への浅さ、
視聴者の高度経済成長における歪んだ期待」
とはっきり断言しています。

たかが児童漫画、SFファンタジーかも知れませんが手塚先生がテーマとして落とし込んでいた科学の戦争利用、人種差別といった当時の世界が抱えていた問題に対する警告を無視するかのように
どんどん作者の手から可愛い我が子が離れて行っちゃうんですよね。

「ぼくはアトムをぼく自身の最大の駄作の一つとみているし、
あれは名声欲と、金儲けのために描いているのだ」

というとんでもないコメントも残しておられます。


このアトムの自虐発言はエッセイや対談などでも度々語られる内容で
確かにこのエピソードからアトムは変わったとする研究者も多いです。

確かに手塚先生のジレンマ、揺れる葛藤を感じさせる内容ではありますが
それでも人間とロボットの間の差別が描かれていたり
かなり社会性が強い作品になっています。

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手塚先生の理想とするアトム像は描かれなかったかも知れませんが
ボクはそこには手塚治虫が持つ永遠のテーマである
「人種差別」「民族差別」「宗教差別」「ロボット差別」という
単なる正義の味方だけでない重厚なテーマ性を感じることができます。

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このようにアトムは時代の狭間で揺れ動く人間模様、社会情勢、差別問題などあらゆるものを飲み込んだ「時代の申し子」的な作品になっておりまして
今読んでも…というより

今だからこそ読むべき作品であり
大人になってから再読することでより一層の理解を深められる作品だと思います。

お子様には道徳的な意識や人を思いやる心を豊かにする情操教育の一環として家族で手に取って読んでみるのもよろしいかと思います。


…でどれを読めばいいのって事なんですが

初期の作品は児童マンガ仕様になっておりますので
読み慣れていない方には
ちょっとしんどいかもしれません。
昭和のオッサン世代の画のタッチは
現代漫画に慣れている読者には読みにくいと思われますので
画のタッチをチラ見して自分にあったタッチの
エピソードから読んで見ることをおすすめします。


オススメエピソードとしては
「アトム誕生」「デッドクロス殿下」「ホットドック兵団」
「地上最大のロボット」「青騎士」
ですね。

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アナザーエピソードもありますけど今回は除外しております。

単行本は
鉄腕アトム(1) (手塚治虫文庫全集)

鉄腕アトム 1 Kindle版

鉄腕アトム別巻 (手塚治虫文庫全集)「アトム誕生」収録

から読めますが文庫版は個人的に小さいのですごく読みにくいんです。
なるべく大きいもので読んで欲しいです。

最低でもこのサイズです。
鉄腕アトム―大人気SFコミックス (1) (Sunday comics)←読みやすいおすすめ

『鉄腕アトム』全21巻+別巻2巻セット(化粧箱入り)


しかもこれは現代の漫画に慣れている人にも読みやすい構成で
普通の人にはこちらからオススメします。
アトム大使から読みたいガチ勢の方は文庫版で。


ちなみにオススメはコレ
(立東舎) 鉄腕アトム プロローグ集成 ←必読!


これは本当に素晴らしいです。
エピソードは少ししかありませんが
アナザーエピソードも「アトム誕生」も入っていますし何よりこのサイズですよ。
もうケタ違いにアトムの魅力を満喫できる最高の1冊です。
まずはこちらからチャレンジして興味を持ったら他の作品に手を出すのもアリだと思います。
往年の手塚ファンも納得できる逸品ですのでぜひご覧になってみてください。


この後
マンガ版とアニメの違い
大晦日の日本の子供たちを発狂させたあの衝撃のラストシーン
どれが本当の最終回
実はアトムは3回も死んでいる
など

お話したいことがたくさんありますので
また別の機会にでもお話させていただこうかと思いますので

今回はこの辺で。

ありがとうございました。



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