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手塚治虫「未収録作品集」がスゲーのに安すぎてビビる!

今回は「手塚治虫漫画全集未収録作品集」をご紹介いたします。

手塚治虫の未収録作品は数え上げればキリがありませんがその中でも本書は
講談社発行の「手塚治虫漫画全集」に未収録の作品だけを集めた作品集であります。

通常手塚治虫の未収録作やオリジナル版といった類のものは
目が飛び出るくらい高価なのですがこれは圧倒的に安い。
ちょっと信じられないくらい安いです。
ほんと誰でも手が届く代物なのでぜひ今回の記事を最後までご覧頂き即ポチして頂ければと思います。
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それでは本書の内容をご紹介する前に
そもそもなぜ「手塚治虫漫画全集」に収録されなかったのか、その理由を説明していきましょう。

いくつか理由があるのですが大まかには5つの理由があります。

1. 手塚治虫の好み(これはしょうがない)
2. 原稿の紛失(これもしょうがない)
3. 短編だから(基本短編は売れない、又は長編のページ合わせ要員)
4. 完結していない(未完は人気がない、商品価値が薄れる)

5. カラーページを印刷する技術がなかった(技術とコストの問題)

これらいづれかの理由により全集の収録が見送られました
そしてこれらの未収録作を集めたのが本書の特徴になっております。
手塚初期作のものが多く
往年のファンであれば納得のレアアイテムがズラリ。
しかもシリーズ全3巻の大ボリュームで、何と言っても価格がバカ安!
詐欺なんじゃないかって思うくらいのぶっ壊れ価格です。
何はともあれこの価格でこのレアアイテムが手に入るのは奇跡的です。

ただ…注意してほしいのが
生原稿からではなく当時の雑誌からの複写したデータを使用しているので画像が粗いところがあります。
ただでさえ年代の古い粗い雑誌からの複写が多いので
普通に読みづらいところあります。

そして次が最大の難点なのですが…

サイズが文庫版サイズってことです。
なんせ小さい。
当たり前ですが絵も小さければ字も小さい。
めちゃくちゃ小さい。

これを進んで買う購買層の方っておそらく50代以上の方が中心になろうかと思いますが
おそらく老眼で見えません(笑)
マジでターゲット考えろよって思います。

文庫版で安価にしてくれたのはありがたいけど
それ買う連中は見えないんだぞと。
ハゲ散らかってる奴らがこれ見えるのかと。
声を大にして言いたい。

このチャンネルのユーザー層もアッパーフィフティーンが最も多い層なのですがその方々が買うんですからまぁ大半がしかめっ面すると思います(笑)
もう、その姿が目に浮かぶので不憫でなりません。

…というわけでご年配の方には結構なハードルを抱えたままのご紹介となりますがなんとか気合いで乗り切ってください。

ではまず1巻ご紹介していきます。
収録作は
『銀河少年』『快傑シラノ』『豆大統領』『ハリケーンZ』の4作。

『銀河少年』『快傑シラノ』ともに未完
『快傑シラノ』は先生の大好きなエドモン・ロスタン原作の「シラノ・ド・ベルジュラック」の漫画化ですね。
『豆大統領』はアメリカの南北戦争
『ハリケーンZ』は「旋風Z」の続編になっています。

『銀河少年』は絵物語、絵本形式で珍しいと思います。
昔はこういうのもあったんだぞと懐かしくなる感じがいいですね。
あと、分かってたとはいえ、実際見るとカラーページの再現がないのが勿体ないですよね。まぁ読めるだけで良しなんですが復刻版も出ておりますので興味がある方は覗いてみてください。

『ハリケーンZ』のみ1958年ですが後は1953年作と初々しい手塚タッチを堪能してみてください。


続いて2巻行きましょう。

こちらは蔵出し作品25本を収録と作品数が多くすべて紹介できませんので注目作だけご紹介していきます。
1947年から1960年に描かれた短編が中心になっており初期作から脂の乗った時期にまで及んでいるのでペンタッチの変遷が楽しめます。

『バット博士とジム』の戦後間もない1947年に執筆された作風と
1960年12月『野ばらよいつ笑う』の作風の振り幅がスゴイ。
先生自身の進化も感じられると共に描いたジャンルの振り幅もかなりエグいのが分かります。
『野ばらよいつ笑う』は少女マンガなんですがなんすかコレ。
可愛いすぎてマジでビビります。

野ばらよいつ笑う



この可愛さこそが手塚治虫の二面性の真骨頂と言えるデザインで
とても同一の作者が描いたと思えないほど凄まじいペンタッチが拝めます。

あと『びいこのおもり』『すずむしひめ』はディズニーに憧れた手塚先生が
まだ手塚タッチが完成されていない頃のタッチで両方の味わいを楽しめる作品です。
見た事のない方は是非一読ください。
同じ時期に『鳥よせ少女』って作品も描いているんですが、これもぜひ見てください。これは反対に絶対に手塚治虫って分からないタッチしています。

そしていづれも一線級のアニメーターが描いたのでは?と思えるほど色彩が美しいのですが本編では残念ながら見ることができません。
公式サイトでは見れますので是非見てみてください。

このように2巻はとても一人の作家が書いたとは思えないくらいバリエーションが広く、とにかく手塚治虫の主義範囲、多様性に圧倒されるはずです。
ただ、、、
これも文庫版のため絵もセリフも小っちゃくて印刷も悪く非常に残念です。
迫力が半減どころか10分の1なんじゃないのってくらい魅力が薄れているのでめちゃくちゃ勿体ないです。
折角の綺麗なカラーも、うーん。残念です。

ラスト3巻目行きます。
収録作は『幽靈男』『オヤヂの宝島』に加え、大学ノートに描き残したと言われる『勝利の日まで』の三作
これは46年1月のデビュー作マアチャンの日記帳より前の1945年16歳の時に執筆されたものです。
『幽靈男』は1945年4月に描かれたものだそうで
それこそ太平洋戦争真っただ中に描かれたものになります。
『勝利の日まで』はタイトルが示す通り戦争ド真ん中の内容で時系列でいえば『紙の砦』などに出てくる、工場の片隅で隠れて描いたというマンガのひとつがこの作品の可能性が高いです。

ちなみに7月20日頃にはロストワールド私家版を描いており
終戦間近の8月15日ごろには『オヤヂの宝島』を描いていたと自伝「ボクはマンガ家」に記載があります。

『オヤヂの宝島』第三章の吸血サムの件では一転してセリフなしのサイレントマンガになるのですが
すべて絵だけでストーリーを展開させる技術はちょっと度肝抜かれます。
絵コンテ割りはまさに映画のワンシーンを見ているようで
手塚少年の土台が映画から来ていることがはっきりと見て取れます。

今見ると何気ないコマに見えますが、マンガという娯楽が現在のスタイルではない時代、お手本も何もない時代に若干16歳の若者がこんなクオリティの作品を描いていたのはちょっと信じられません。

しかもまだデビューしていないんですよ。
さらには戦争中ですよ。
これがあの伝説の『新宝島』の前に描かれていたと思うとマジで末恐ろしさを感じます。


アイモードとかCDMA 1の時代に一人だけアイフォン持ってるようなもんですよ。(ちょっと例えが分かりにくいかも知れませんが…)
これは一人だけ明らかに異次元の存在だという事を知らしめる恐ろしい原稿であります。

さらには、同時期に恐怖菌というマンガも書いておりこの時からすでに手塚先生は並行した描くことが好きだったということが分かります。
手塚治虫が未完作が多いのも溢れ出るアイデアが迸って次々と描きたかった衝動なのでしょう。
とにかくこの3巻は1.2巻に比べこれでもかとパンパンに詰め込まれた圧倒的ボリュームの520ページ以上の質量。
資料的価値としてもファンなら持っていて損はありません。

という訳で「手塚治虫漫画全集未収録作品集」のご紹介でございました。
如何でしたでしょうか。
かなりマニアックな作品ですのでくれぐれも、うっかり初心者が手を出して
「手塚治虫って面白くない」という変な先入観を持たれないように素人は絶対に買わないでくださいね(笑)
その辺りをご理解した上で手塚治虫の世界を愉しんでみてください。

ではでは!


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