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毎日7人の女性とXXしないと爆発する男【手塚治虫ブラック短編】

今回は手塚治虫異色短編「セクソダス」お届けいたします。

漫画の神様と呼ばれる手塚治虫先生は、一般的にヒューマニズム作家というイメージが強いのですが、その一方で人間の心の闇や狂気のエロスを描いたダークな作品も描いておりそれらの作品を総称して「黒手塚」とも呼ばれていたりもします。

さらに
白でも黒でもない
大人の風刺漫画を数多く描いていたことはご存じでしょうか。
(まぁ限りなく黒なんですけどね)
あらゆるマンガのジャンルを次々と開拓してきた手塚先生の
風刺漫画はあまり知られていませんが絵柄はシュールでポップな作風ながら
内容は限りなく黒に近いブラックなニヒリズム全開のアダルトマンガです。

今回はそのアダルトマンガの中から「セクソダス」をご紹介いたしますので
ぜひ最後までお付き合いください。


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それでは
ご紹介の前にこのアダルトマンガというジャンル作品については
以前にも
「女性の性欲が破壊的に暴走した」マンガや
「突然全裸の女性が自宅に現れた」というマンガ


そして
「服を着ている事が恥ずかしい全裸が当たり前の世の中になった」マンガ
なども以前にはご紹介しております
手塚治虫という作家の偉大さを垣間見ることができると思いますので
ぜひご覧になってみてください。



さぁ手塚先生の魅力といえば
健全で教科書的なイメージだけでなく心の闇を描いた「黒手塚」と呼ばれる部分や今回ご紹介するアダルトな部分、
これらをすべて一人の作家が描いているということが
最大の魅力のひとつであると思っています。

ありとあらゆるジャンルを
多様に描き分けられる技量もすごいんですけど人間手塚治虫のすべてを吐き出しているようなドス黒さ、其処らへんもすごい魅力的なんですよね。

ひとつの側面だけでなく、あらゆる側面を見ることで
その作家が立体的になるというか深みが出るというか、とにかく惜しげもなく人間手塚治虫の作家性を体験できる貴重なジャンルとなっております。
本当に片方の手塚治虫しか知らないなんてもったいないですよ。

このアダルトマンガは
厳密には「シチュエーション=コミック」というジャンルで
設定の面白さを楽しむマンガとなっております
ぜひマンガの神様と呼ばれた男の
ぶっ飛んだ設定をご堪能いただければと思います。


この「セクソダス」は1975年に週刊プレイボーイにて掲載されました。

あらすじは
矢部コウジ23歳、彼には驚くべき性癖がありました。
それは1日に7人の女性と性行為をしないと生理的に爆発してしまうのです

就職する理由も女性が多い会社を選んだり
もうすべてがXXのことしか考えていないどうしようもないダメ男で
就職も不採用になってしまい爆発寸前になったある日
ひとりの博士に出会います。

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博士は研究の実験台になれば50万円払うと言い
これが成功すると性行為に革命が起きると言うのです。

これぞなずけて「セクソダス革命」

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お金のために
施術を受けた彼は翌日、何の変化もなかったので
景気づけに5~6人の女性と乱交パーティーをしようとすると

突然チンコが喋りだすようになっちゃったんです(笑)

これにより性行為中に勝手にチンコが喋りだし
女の子が気持ち悪がって逃げ出し
矢部コウジは性行為が出来なくなってしまいます。

そこへ1人の女性が突然現れ一緒に同棲しようと言い出します。
実はこの女性、ストリッパーだったんですが
彼女も博士の施術を受けておりアソコが喋りだし
商売あがったりの女性だったんです。

それから2人の奇妙な同棲生活が始まります。
2人とも性行為がキライじゃないのに2人がまぐわろうとすると
なぜかグッタリとなってしまい
好き者同士のはずがなんと1か月なんにも起こらなかったんです

そしてある日突然記者の方に囲まれ
「セクソダス革命」の一号二号として2人が紹介されます。

この「セクソダス革命」とは一体何だったのか?

というのがストーリーになっておりまして
ここからはラストまでネタバレしますので聞きたくない方は
今すぐアマゾンでポチってくださいね。


さぁこの「セクソダス革命」とは一体何だったのか?

実はこの実験
莫大に増え続ける人口増加の対策のために性欲をコントロールする施術だったことが公表されるんですね。

このセクソダス革命とは
性行為を快楽のために使うのではなく
子孫を残すためだけのものとし神聖化させるための実験
だったわけなんです。

その証拠に世界の美女が集まり
どんな美女の誘惑にも反応しないTV番組に出演したり
一躍時の人として注目されることになります。

そしていよいよ
厚生省などの国家機関によりセクソダス革命を
国をあげて導入するかの会議が始まります。
会議中の美人政務次官は

「殿方がおとなしくなってしまうのは困りますわ」

「殿方はやっぱりオオカミのように…」

と発言した途端に効き目が切れたように矢部コウジは暴走

これにより国による採用は否決

その後は何事もなかったかのように
これまでの生活に戻ってしまう矢部コウジ…

やはり人間にとって性行為には理性なんて必要ないのでしょう

ちゃんちゃん…というお話(笑)


いかがでしたでしょうか。
人口増加の社会問題と性の快楽主義への皮肉を込めた
ブラックなアダルトマンガ
身体の一部分が理性を持ってしまうなんて設定は
あの右手に寄生した大ヒットマンガの走りとも言えますね。
右手じゃなくて股間ですからね。
さすが神様、ケタ違いの破壊力です。

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手塚先生は単なるユーモアだけでなく
しっかりと社会風刺を利かせているのがこれらの作品の特徴でもあります。
本作では人間は動物と違い性行為を楽しみ、または快楽に利用しており放任されている、だから爆発的な人口増加に繋がっているんだ。
これを放っておくと生物が破滅してしまう。
…というメッセージを込めています。


だからといって決して性行為自体を否定しているわけではありません。
手塚作品にはめちゃくちゃ男女のまぐわりが出てきますからね。
もうほんと紹介しきれないくらいド変態のものもあります。

1975年当時は劇画が台頭してきて画だけで見せる劇画のストーリーマンガに
物足りなさを感じており、漫画本来の持つユーモアやオチの面白さを描きたかったと語っておられます。

性というものを題材として大人っぽさや風刺、皮肉を描くことで
単なる刺激物と化してしまった劇画マンガに対抗してみせたのだと思います。

しかし時代の流れは劇画におされこのような風刺漫画や
アダルトマンガというジャンルが
大きく取り上げられることはありませんでした。

この背景にはやはり続く後継者がいなかったからでしょうね。
後継者となる作家が増えればジャンルも拡大していったのでしょうが
如何せん後継者がいない。

やっぱり風刺漫画やアダルトマンガって描くのが難しいですからね。

そもそもマンガの源流は風刺画なのですが
今はマンガそのものが巨大になりすぎて正統な風刺とされるマンガ家が
いなくなってしまいましたね。
ぱっと思いつく限りでは小林よしのり先生くらいじゃないですかね。
他にもたくさんあられるのかも知れませんがボ
クが思いつくところでは
東大一直線の小林先生くらいかなぁ

昔は「ポンチ絵」なんて呼ばれたりして
風刺漫画のネタとして当時の吉田茂首相なんかの風刺画が教科書にも載っていましたが今はどうなんでしょう。

まぁとにかく
手塚先生の描くアダルトな風刺漫画
ぜひ読んでみてください。

今回ご紹介した作品は「すっぽん物語」という短編集に収録されております、他にも以前にもご紹介した
全裸が当たり前の世の中になったらを描く「ヌーディアン列島」も収録されており非常にパンチに利いた短編集なのでぜひご覧になってみてください

手塚治虫文庫全集のフースケ にも収録されておりこちらは
『ペックスばんざい』『月に吠える女たち』 というド変態作品と
先ほどの『ヌーディアン列島』
そして今回の『セクソダス』 と全部入っておりますので超おすすめです。

すっぽん物語 (手塚治虫漫画全集) 


フースケ (手塚治虫文庫全集)


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