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これまでに書いた小説を振り返る(後編)



不倫相手を性行為中に絞殺する、ノストラダムスの大予言を信じて崩壊する人々…




さて、前編に引き続き、後編も投稿させて頂く。
後編で紹介する2作はどちらも大学時代に書いたもので、当時私は文芸学部に所属していた。
私の選択したコースには、小説を書いたり作品や作家の意図を考察する授業があったりして、割と文学感の強い日々を送っていたように思う。

中高では乱歩や谷崎潤一郎が好きだったが、大学では江國香織や吉本ばなな等、現代的な女性の心情を描く小説をよく読んでいた。
若干のアングラ感を残しつつも心情に重点を置いているところが、高校時代の作品と大きく異なる。

前回と同じく、基本ちょっとグロい部分もあるので、そういうのはちょっと…という方は気をつけてね!





③タイトル不明、恐らく「浴槽の底に沈む」


大学2回生の時に、小説を書く授業で提出したものだ。一番最後の授業回にて、講師が早くに提出し終えた数名の作品を紹介する時間があり、「この小説はナルシシズムと狂気を感じる」と評されたことを覚えている。



主人公である女は不倫相手の希望により、性行為中に必ず相手の首を絞める。
精神病の母親と帰ってこない父親の元に生まれ育った女は、不倫相手に対し、この人こそ自分の片割れで、生まれる前には一体の身体であったと本気で信じ込む。
不倫相手の妻より心で繋がっていると思い込んでいる女は、相手の心が離れていくことが受け入れられない。
「どうして私の全てを受け入れてくれないのか、理解してくれないのか、こんなに愛しているのに」
ある日の性行為中に、女は不倫相手が気持ち良い瞬間を超えたところまで首を絞め続ける。




といった話だ。すごく重い。
一人称視点で、女のドロドロした心情を生々しく描いたつもりだ。
前半では二人のベッドシーンを鮮明に、だけど物悲しく描写し、講師から「全体に漂うアンニュイな雰囲気で、濡れ場が意外と読みやすい」との評価を頂いた。
相手の心が離れていることに薄々気づいた女が、「私に全く落ち度はないはず」と思うシーンがある。
それに対して講師に、「一人称小説の視野の狭さが表せている」と言ってもらえたことが嬉しかった。



首を絞め続ける女に、不倫相手は暴れて抵抗する。天国に行く寸前で解放された相手は、苦しみに悶えながらも女を睨みつける。
「何よ、その眼は」
女はこっそり忍ばせていたロープで相手の首を締め上げ、風呂場まで引き摺る。
空の浴槽に相手を投げ入れ、その浴槽に水を溜めてゆく。
「これで完全に、心までも離れた」


ちなみにこのオチは、椎名林檎の「長く短い祭」のMVを意識して描いた。私は椎名林檎の歌の中であの曲が一番好きだ。

当時の私は付き合っていた人と別れた直後で、その心情をこの小説にぶち込んだ。
自分の中のその人への愛を殺す、という意味があったのかもしれない。
実際に首絞めプレイはしたことがないが、「私達は片割れ同士で、元々は一つの身体だったんだね」みたいなことはマジでよく話していた。それだけにその人への「理解してほしい」願望が強く、かなり振り回して別れることになってしまった。
あの時は本当にごめんね。






④「世紀末の恋人」


これは、卒業論文で書いた小説だ。
私の所属していたコースでは、卒論は研究文+小説を合わせて3〜4万字という形を取っていた。

私の研究文は、「2000年にかけてのJ-POPがノストラダムスの大予言にどれ程影響を受けているのか調べる」というものだった。
ノストラダムスの大予言の文庫本を読み、1899年とか1799年の世紀末思想についても調べた。
結論としては、2000年にかけてのJ-POPは歌詞に心中を匂わせるワードが多くなり、全体的にマイナーコードの曲が多くなる、だった気がする。
研究の方は締め切り2週間前ぐらいに書いたので、信憑性はかなり薄い。教授、あんなソースの浅い研究文で卒業させてくれて、まじでありがとうございました。


1999年、ノストラダムスの大予言に振り回される恋人達。
主人公である青年は、幼少期より母親から過度な慰め役を求められ、女性に対して嫌悪感を持っていた。女性の欲しい言葉が手に取るようにわかる青年は、水商売をしながら人生を悲観していた。
そこで、年下ながらも包容力があり、男らしい少年と惹かれ合う。
少年と共に生きていきたいと願うも、少年の前に現れる女性に嫉妬し、青年は身を引く。
そこで青年は、ノストラダムスの大予言により滅びる世界に思いを馳せる、同じく水商売の女性と出会い、心中計画を立てる。



研究文と同じくノストラダムスの大予言を軸に、世紀末の退廃的な雰囲気を描きたかった。
ちなみに、青年はクリムトの「接吻」という絵画を心の中に飾っている。
崖っぷちにいる男女。女は大きな男に包まれながら恍惚な表情をしている。
しかし、何故包まれる方が女なのか?自分もこの女のように包まれたいのに、と青年が思うシーンを描いたことを覚えている。

ちなみにクリムトの「接吻」は私が世界で一番好きな絵で、「接吻」の絵が書いてある腕時計を持っていたりもする。



心中計画に失敗した青年は、先に逝った女性の死に様がトラウマになり、病院のベッドで震え続ける日々を過ごす。
早く世界が終わってほしいと願い続ける青年。
青年の自殺未遂を聞いた少年は居ても立っても居られなくなり、全てを捨てて青年に会いにいき、二度と離れないことを誓う。
世界から隔離されたような感覚を持つ二人は、世界が滅びる瞬間を待ちながら、ただ寄り添って時を過ごす。




世界が終わる瞬間を待っているところで物語は終了する。
1999年の7月を迎える寸前までだったか、1999年の12月末を迎える寸前だったか、細かい設定は覚えていない。
現実世界では世界は滅びていないので、恐らくこの物語でも世界は滅びないと思う。
しかし、この二人には滅びる未来しかないような、絶望感を描いてみたかった。








以前、「初恋は呪いだ。」という記事にも書いたが、私は心中に対して多大なロマンを抱いている節があると思う。
愛と死が直結しているのかもしれない。

しかし、今ではその感覚がほとんどなくなり、心中に対してはさほど興味を持たなくなってきた。

去年、大流行したYOASOBIの「夜に駆ける」
基になった小説もMVも、心中的なシーンが登場する。この曲をもし高校大学の自分が聴いていたら、深く心酔していたと思う。
しかし、今はあまり酔えない。
そんな自分が切ない…。

大学を卒業してから小説を全く書かなくなった。書こうという気にならない。
社会生活に適応していく中で、学生時代の感性が崩れてしまったからなのだろうか。
現実世界の恋愛に、そこまでのロマンはないことに気づいてしまったからなのか。





しかし、ピース又吉のYouTubeチャンネル「渦」を見ていると、インスタントフィクションに投稿してみたい気持ちが高まってくる。
400字以内の短い小説であるインスタントフィクションを髑髏万博先生(又吉)が解説するというものだ。一般人も投稿できた気がする。
私もインスタントフィクションを書いて、万博先生に解説されたい…。
内容は全く思い浮かばないが、挑戦してみたい心意気はある!
もし書けたら、noteでも紹介したいな。

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