愚か者

私は愚か者だな、と思う夜。
否、もう朝という方が正しいだろう。

多幸感で満ちた心に寄り添い乍過ごした日。
思い返せば、ただ堕落していただけだった。

鼓動が早く心臓は締め付けられる、然し暖かくてふとした瞬間に身悶えする様な幸せな時間。
嗚呼、私は何故、それを虚無感に化えてしまったのか。

つい今朝まで隣にあった温もりと、五月蝿い程に心地の良い鼾、安心感を。
私は何故、思い出せないのか。

目を瞑り、声の、匂いの記憶を掘り起こす。
隅まで探っても、探っても、苦しくなるばかり。




ただ、好きなだけなのに。
好きになってしまっただけなのに。

恋とは呼べぬ恋なのだろうか。


私は愚か者だな。

一方的に注ぐだけの愛を、只管に垂れ流しては勝手に胸を痛めて泣くだけの、愚か者だ。

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