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#22 三陸 ~海と山と人たち

生江史伸 / L'Effervescence

今回、未来へ遺すべき作品に挑むのは、幼い頃から多くを語らず、人と群れない、孤高の料理人、ミシュランの二ツ星が輝くレフェルヴェソンスの生江史伸シェフ。

耳なじみのない「レフェルヴェソンス」という店名は、生江シェフが考えるレストランのあるべき姿。

今は何も見えないけど、実は小さな変化が起きていて、それが大きなエネルギーに変わっていく姿を「レフェルヴェソンス」という店名に込めた。

生江シェフは、その経歴も異色。
大学卒業後、料理経験もないまま都内のイタリア料理店へ。
それから8年後、ニューヨークの書店で一冊の本と出会う。
その本の著者がフランス料理界を代表する料理人、ミシェル・ブラス。
ブラス氏の料理哲学に衝撃を受けた生江シェフは、弟子入りを志願。そこからわずか2年でフランス・ライヨール本店のスーシェフに就任した。

生江シェフを突き動かしたブラス氏の料理哲学の芯にあったものが「ガストロノミー」。学問的なところから食を見ていく、あるいは食から追求していくものを織り交ぜたコンセプト。洗練を極めるために何が必要なのかということが根本にある考え方。

その後、帰国した生江シェフは、2010年にレフェルヴェソンスをオープン。
2018年には環境と社会に大きな貢献を果たしたレストランとしてサステナブル・レストラン章を受章した。


「今まではおいしいものを食べて贅沢をすることが食の喜びと教えられてきたが、そういうことよりも身近にあるものをどうやって大切にするか、自分が料理をすることで、誰かの不幸せにつながっていないかということを考えていかないといけないと思うようになった。」と話す。

それぞれの地域に根差した食文化を知りたいと世界各国を飛び回る生江シェフの料理は、年々食材の出自や背景を色濃く映し出すようになってきている。


生江シェフが作る、未来へ遺すべき作品。

「三陸という場所に来て、漁師さんの顔や、いろいろなものを見て、
そのストーリーを伝えていける料理を作りたい

心は決まった。
復興の象徴でもある三陸の食材を使い、この豊かな風景が目に浮かぶような一皿を未来に遺す。

まず手にしたのは岩手宮古産の牡蠣と煮干しのだし。
三陸を巡った際に、生江シェフが最も関心を示した、海水の塩気を宿した煮干しのだしをこの作品の味の柱に据えた。そのだしに加えたのが、同じく三陸産の牛乳。

これらの三陸の食材を合わせ作り上げた作品。

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白米の上に三陸産の牡蠣、だしにくぐらせた牛肉、その上にわかめ、そこに煮干しのだしと牛乳を合わせたスープをかけた一皿。

生江シェフがこの一皿に込めた想い。

「日本の美しい風景を料理の中に感じてもらいたい」

目の前にある料理の裏には、食材が育まれた土地、それを育てた生産者・・・たくさんのストーリーがある。そしてそのストーリーを料理に繋ぐ料理人がいる。おいしい、贅沢だけではない食の価値があることを教えてくれる一皿でした。

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