永遠と一瞬の狭間で
昼下がりのランチ時のことである。
男の脳内は量子演算コンピュータかの如く、フル回転しながら過去を振り返りつつ、目の前の選択に迫られていた。
男は常に最善の選択をしたいと思っており、またそれを実行してきた。人生は選択の連続なんて月並みな言葉も男の前ではもはや挨拶の域だ。
男はこれまで選択を間違ったことはなかった。
小学生の頃のテストの選択肢から、就職先、果ては結婚についても男はこれまで選択による失敗を一度として経験したことが無かった。
男には自信と統計と頭脳が全て備わっていた。
先天的にも後天的にもそれらは常にベストパフォーマンスをし続けており、どれか一つでも欠けることや機能が低下することは無かった。
だからこそ、日常の中での何気ない些細な選択にも常に最善を選択してこれたのだ。ベターではなくベスト、これが男の半生を物語る言葉と言っても過言ではないだろう。
「コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」
「……コーヒーで。」
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