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「やるかやらないか」と迷ったときに陥りやすい二者択一の罠

やるか。やらないか。
言うか。言わないか。
踏み出すか。踏み出さないか。

こうした選択を迫られることがあります。
でもこの問いでは、なかなか答えが出ません。
それは、一方が正しくて、一方が間違っているという思考が作ったプラットフォームがあるからです。

実際は「やるかどうか」「言うかどうか」「踏み出すかどうか」という行動が問題なのではなく、正しいか間違っているかという思考のプラットフォームが苦しみの原因なのです。

ビジネスでもスポーツでも、二者択一になっているときは、力を発揮できません。

成功か失敗か。
上手くいくか、いかないか。
狙うか狙わないか。

これは「二者択一の罠」とも言えます。

では、二者択一から離れるにはどうすればいいのでしょうか。


やるか。やらないか。を例に考えてみると・・・

「やってみること」をよしとされている方がいます。
その場合、やらないと後悔が残ると思われているかもしれません。

ただ、実は、「やってみない」ことも経験なのです。
「やってみない」ことをやってみなければ分からないのです。

結果として、それは後悔という経験になるかもしれません。

でも、後悔が残るから悪いのではないのです。
後悔があるから、またその後の人生が変わってくるのです。

やらないから悪いわけでもありません。
やってみるから必ずしもいいわけではないのです。

やること。
やらないこと。

どちらもやっているのです。

やることをやっている。
やらないことやっている。

どちらも体験なのです。

しかし、体験する前に、ジャッジしようとするのが人間です。

「やってみないと後悔する」
「後悔しない人生を送らなければならない」

でも、やってみるのは失敗する可能性がある。
自分に出来るのかどうか不安。
不安な自分が嫌。

こうして考えれば考えるほど、二者択一の罠にはまっていくのです。

これらはすべて思考のプラットフォームから生まれる問いであり、自分にこだわる問いは苦しみになります。

ジャッジするのではなく、どちらを進んでも、ただやっていることを体感するというあり方でいられるかがポイントでしょう。

そこに気づけると、どちらを進むのかという問いは消えていきます。

自我へのこだわりが薄れることで、頭の力みが抜けます。

禅では、よく人生を海と波に喩えて表現します。

師匠の老師は「2つの波のあり方があります。それは海という自分の出自を知っている波と、海という出自を知らない波です。」とおっしゃっていました。

海を知っている波とは、仏教でいう「法(ダルマ)」に活かされている自分であり、大自然の見えない働きの一部としての自分であること。

「一心一切法(いっしんいっさいほう)一切法一心(いっさいほういっしん)」という禅語があります。これは、1つの心が一切すべての世界であり、心は世界サイズであるということです。

一方で、海を知らない波とは、私としての個人サイズで生きている自分であるということ。

二者択一の思考は、自分サイズの思考ではないでしょうか。また自分にこだわっているとき、波は海から切り離されています。海を離れた波は一人ぼっちです。それは怖さや孤独という苦しみを生み出します。

どちらに進んでも体験というのは、海の一部であることを知っている世界サイズの波としてあり方ではないでしょうか。


今回、この話を書いたのは、先日、「やるかやらないか」という二者択一の問いが浮かんできたからです。

私は、コーチとして独立してから14年、コーチングのクライアントさんは口コミと紹介だけでやってきました。いかに1人のクライアントさんとのセッションを充実させるか。それしか興味がなかったのです。実際にそれが次の紹介にも繋がり、おかげさまでコーチングだけで食べてこられました。

それが今回のコロナ禍の中で、アメリカにも行けなくなりました。週刊ゴルフダイジェストのコラムが終了になりました。都会への出張も研修も自粛を迫られる中で、それまでの流れが止まったように感じていました。

その中で、以前の記事でもお伝えしましたが、ある女性との出会いから食堂をすることを決断しました。以前でしたら、コーチング以外には興味がなかったでしょう。ただ、この思わぬ出会いは新たな風が吹き込んできたように感じました。

やってみるのか。
やらないのか。

最初は「このままコーチングだけやっていけばいいのではないか」という声が一番大きかったです。今いるクライアントさんを大事にしたらいいではないかと。今の方が楽だし、よく分からない世界に飛び込むのも不安です。他のことに目移りするのは「二兎を追う者は一兎をも得ず」になるのではないか。

そして、次には、提案していただいた方への疑念が湧いてきました。今はやる気があるが、信じていいのかどうか。高齢なので、健康問題があれば継続できなくなる。ただ、いくら尋ねても答えが出る問いではありません。相手の問題ではなく、これは自分のテーマだからです。

話し合いを重ねる中で、今までのやり方にこだわっている自分がいることに気づきました。確かに、昨日までコーチングを信じてやってきたのは、現在進行形で生きる自分でした。しかし、今日は過去のやり方に執着している自分に変わっている。

今、何かが変わりつつある。それは、コロナを含めた社会や環境の変化かもしれませんし、今回提案いただいた方とのご縁かもしれません。

それは頭では分かっても、なかなか「やるかやらないか」という二者択一の問いから離れることは出来ませんでした。そのとき出来ることは、「問い」に身を委ねることでした。

心を開いて変化に身を委ねる中で、自分サイズだった問いが少しずつ周りと溶け込んでいったのかもしれません。そして最初は悩みでしたが、だんだん迷いへと変わっていきました。

私の中では、悩みというのは頑なで、自分の殻に閉じこもっている感じです。迷いというのは、少し揺らぎが生まれてきている状態であり、悩みよりも柔らかく外に心が開きはじめている感じがします。

迷う中で、最初にお伝えした「やってみるのも経験、やらないのも経験」という言葉が浮かんで来ました。やってみるだけがやっていることではない。やらないこともやっていることなのだと。どちらでもいいのだと。

このとき、やるかやらないかという二者択一から離れた感じがしました。思考のプラットフォームの底が抜けると、こだわりや力みが抜けていきます。

不思議ですね。

「やらないこともやっていること」という言葉が浮かんで来て、心が楽になりました。その結果、新しいことへの好奇心が湧いてきたのです。新しい出会いと新しい挑戦に身を委ねることで、クライアントさんへのコーチングにも変化が生まれそうな予感がしています。

コーチングは技術ではないと思っています。私自身のあり方がセッションに出ます。

私が何かに執着していれば執着した聴き方になる。
自分をジャッジし否定していれば、クライアントをジャッジして、否定的な部分にフォーカスする。

心を閉じていれば、閉じた聴き方になる。
心を開いていれば、開いた聴き方になる。

ご縁に身を委ねていれば、そういう聴き方になります。だから、私は執着から離れた現在進行形のコーチであるためにも、自分自身が常に現在進行形で生きることを大切にしたいと思います。

14年前は、人とのつながりを深めることがご縁に導かれている旅のように思っていましたが、それをやり続ける中で、いつしか海から離れていたのかもしれません。今はまた海に戻るときではないかと。真逆もまた真なりということでしょうか。

不安はいっぱいですが、分からない世界に裸でダイブすることで、海に戻るような気がします。真逆のことをする中で、いろいろなことが見えてくるようにも思います。

分からない世界に飛び込むのはエネルギーがいりますね。気がつけばただ無我夢中なのですが、ひょっとしたら今が「初心」なのかもしれません。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

書いてみて、少し恥ずかしいです。こんなに赤裸々に心を明らかにしていいのかと。今にはじまったことではありませんが、今回は特にそう思います。

なぜ、書くのだろう?もう少し自分をさらけ出す以外のことを書けないのだろうか?

そんな問いが浮かんでくることがあります。

先日、禅の勉強会で、「現代はやるべきことに忙しいので、今感じていること、よく分からないことを言語化することをしなくなっています。心のひだを一言一言、言葉にしていくことが今という瞬間を豊かに生きることの練習になります」と老師がおっしゃっていました。

どうも雑ではダメだということみたいです。特に今はコロナという今まで経験したことのない出来事の中で、言語化されていないことが多いです。ひとつひとつを未消化にしていると、どこかで自分が分からなくなってしまいます。

この数ヶ月は以前に比べて心を言葉にしにくくなっているように感じます。何を言葉にすればよいのかと。何かが浮かんできても、大したことがないように思うのです。

きっと分からないことが怒濤のごとくやってきているのでしょう。日々発表される感染者の人数やさまざまな経済指標などで目に見える影響は分かります。

一方で、目に見えないよく分からない出来事が私たちの中に起きています。

コーチとして、まずは自分自身がよく分からない世界を言葉にしていくことが、今出来ることではないかと感じています。

残念ながら、私の場合は自分の経験しか書けません。私が体験していることをただ言葉にすることで、あらためて今この瞬間を生きている自分の姿が見えてくるのだと思います。

少しでも、皆さんがご自身を言葉にできるヒントになれば幸いです。

ぜひ、自分の心を言葉にする静かな時間をとってみてくださいね。


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