『ビッグ・ウェンズデー』 永遠のサーフィン映画は、もうひとつの『地獄の黙示録』。
評価 ☆☆
あらすじ
西海岸で、毎日のように遊んでいる3人の若者がいた。マット、ジャック、リロイ。ろくに働かないし、大学にも行かない。サーフィンばかりをしている日々。その日暮らしを楽しんでいる3人は、数十年に一度来と言われる伝説の大波ビッグウェンズデーに挑戦することを夢見ながら、毎晩、女たちとパーティ三昧だった。
僕よりも上の世代、というと語弊があるかもしれないが『ビッグ・ウェンズデー』という映画はある世代にとって独特の感慨がある作品らしい。好きなひとはどうしようもなく好きという話をよく聞く。
『ビッグ・ウェンズデー』の公開は1978年。監督はジョン・ミリアス。出演は ジャン=マイケル・ヴィンセント、ウィリアム・カット、ゲイリー・ビジー。この映画はサーフィンとベトナム戦争というふたつの軸を中心とした青春グラフィティである。
海辺の町にマット、ジャック、リロイの三人を中心に若者たちがサーフィンを通じてグループを作っていた。彼らの夢は水曜日にやって来るという世界最大の波“ビッグ ウェンズデー”に挑戦すること。やがてベトナム戦争がやってくる。
ジャン=マイケル・ヴィンセント、ウィリアム・カット、ゲイリー・ビューシイたちは、もう、おじさん俳優たちだけど、映画の中ではもちろん若い。数多くの本当に星の数ほどある青春映画の中で『ビッグ・ウェンズデー』は『アメリカン・グラフィティ』と同様に崇拝され続けている。
ジョン・ミリアスとジョージ・ルーカスは後に『地獄の黙示録』の原型を作っていく。『地獄の黙示録』がサーフィンと戦争を大きな柱として作られたことは有名だが、その意味では『地獄の黙示録』がダークサイド、ブライトサイトと呼べるのかもしれない。
痛感するのは、アメリカの波と日本の波が全然違うことだろう。どっちがいいとか、悪いとかじゃなく、地域性とか風土なのだろう。ここで言う波は巨大な暴力と栄光というメタファーとしても役割を果たしている。その意味でアメリカの闇は日本以上に深い。
映画に話を戻そう。アメリカで製作されるような映画を日本で作ろうとしてもあまり良い結果は生まれない。日本の波にこだわればこだわるほど、世界がこっちを向く。もちろん、そこに世界を意識した戦略というか思惑が必要なのかもしれないが。
この映画はアメリカ的な部分を突き詰めたことで永遠の青春映画となっている。それなりに共感できる。でも、正直、感覚的にちょっと僕には入り込めないところがある。国境を越えそうで越えられない。でも超えちゃうと崇拝できる映画として記憶される。映画とはそういうものかもしれない。
初出 「西参道シネマブログ」 2006-07-24
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