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『ゲッタウェイ』(1972年版) 何度かリメイクされている有名な映画。髄所にサム・ペキンパー監督の冴えた手法が見られる。

評価 ☆☆☆



あらすじ
アメリカの刑務所内で機織りをするような音がする。そこには4年間も服役している銀行強盗犯のマッコイがいた。彼は面会にきた妻キャロルに顔役であるベニヨンのところへ行って、なんとか刑務所から出られるよう交渉してほしいと頼む。



サム・ペキンパー監督の1972年の作品である。主演はスティーブ・マックウィーンとアリ・マッグロー。その後、何度かリメイクされている。多くの若者は知らないかもしれない。この頃のアリ・マッグローは時代のアイコン的存在だった。どの映画の彼女も、演技は別として出ているだけで輝いていた。といっても、実は私はアリ・マッグローやスティーブ・マックイーンをリアルタイムで追っていた時代ではない。後から先輩たちに聞いたって感じである。



一方、スティーブ・マックィーンも時代を象徴する男優だった。彼の場合は『パピヨン』『大脱走』『ブリッド』『シンシナティ・キッド』など、数々の意欲作に出演していた。静かな佇まいから、キング・オブ・クールとも言われていた。



さらに、この映画の監督は巨匠サム・ペキンパー。Bloody Samですね。血まみれ、スローモーションの達人である。



これは、銀行強盗がギャングに渡すはずの金を持って逃走し、彼を追うギャングをかわしながら妻と共に逃亡するという物語である。ところが、夫婦の仲がギクシャクしている。銀行強盗する前、彼は刑務所に入れられ、彼を釈放するために奥さんがある男性を寝たのでは? という疑惑があるから。そのことを許せるか、許せないかがケンカの原因らしい。あなたならどうですかね?



サム・ペキンパー監督にしては、アクションが地味である。カーチェイスも逃亡劇も派手さがない。それでも、さすがペキンパー監督。随所に彼らしいカットが冴えわたる。突然、スローモーションになると「おおっ!」と声を上げたくなるくらいだ。ペキンパーファンならわかってくれると思う。ラストも良い。



だけど、珍しい恋愛映画である。夫婦間の障害を乗り越えるという意味では“大人の映画”である。ある評論家が言っていたけれど「映画はそもそも限定された人たちの愉楽である。おこちゃまに理解されてたまるか」ということか。



僕はこの評論家(誰だっけ?)ほど偏狭ではないけれど、年齢を重ねるごとに、新作映画を喜んでいる若者たちを見て「おいおい、こんな映画で満足するな。面白いって言うなよな」という心持ちになることが増えているように思える。



年齢が重なってくるとどんどん「面白い」映画が減ってきているように思える。やっぱり老いてるよね。



いずれにしても『ゲッタウェイ』は文句なしに面白い。サム・ペキンパーという監督を知らなくても、『わらの犬』みたいにいやーな気持ちにならずに観ることができるはずだ。観てない若者がいたらぜひ。文句なく面白いから。



それと相手の浮気をどれだけ許せるのか? というのは本当に難しいですよね。以前にも書いたけど原理主義的に言えば「目があった」だけでも浮気だよね。キスをしたら浮気っていうひともいるけど、手を握ること、腕を組むのとキスとの違いは? と言われると困るのが普通だよね。そこには見えざる社会規範が潜んでいるのだ、なんて考えるとマジでわかんなくなるはずだ。今回の『ゲッタウェイ』みたいなケースはどう解釈すればいいのかな。



どっちでもいいか。まずは『ゲッタウェイ』を観よう。話はそれからだ。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-05-27



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