『剣鬼』 市川雷蔵主演の映画の中でも異色作。とんでもない設定、冴えた演出。こ、これはなんだ!
評価 ☆☆☆
あらすじ
江戸時代、幼い頃から犬の子と蔑まれていた斑平だが、花作りと韋駄天の才能を持っていた。ふたつの才能により、登用されるが藩主は精神に異常をきたしていた。そのことを幕府の隠密に知られることがないよう、斑平は居合斬りの技を取得、暗殺者として活躍することになる。
三隅研次の時代劇はほとんど観ていなかった。市川雷蔵も眠狂四郎シリーズよりも『金閣寺』の印象が強かったくらい。だから、この映画がどのくらいの評価を得ているのか、どんな人気を集めているのかなど、まったく知らなかった。『剣鬼』は1965年公開。監督は三隅研次。出演は市川雷蔵、佐藤慶などだ。
正直、テレビで観たときに監督の名も知らずに「誰だこれは!」と思った。映像の迫力と清潔感、切れ味があって「すごい」と吃ってしまったくらいである。
さらにストーリーが奇抜すぎる。三隅研次監督は何を考えて作り上げたのか、と思うほど。コメディの領域に達しそうな設定の上は、原作が柴田錬三郎。緻密なカット割りとカメラワーク、独特な演技プランの市川雷蔵が絡み合う。いったいこの映画はなんなのだ?
犬の子として生まれ、馬よりも足が速く、居合抜きの達人となり、花を育てる才能を持っている主人公(なんだそりゃ?)。この異能者が狂った殿様のために暗殺者となるというお話です。すごいですねぇ。
テレビでぜひ連続ドラマでやって欲しい題材。デヴィット・リンチもびっくりの設定である。いや、世界的に観てもこんな吹っ飛んだ映画を作っている国は少ないんじゃないでしょうか。
破天荒なのは設定だけじゃない。人物は妙にリアルなのにストイックで、ハードボイルドな臭いがする。ちょっと三隅研次を見直してみないといけないかもしれない。日本映画はあなどれない。
全然、話が違うけれど、ストイックさ、清潔感という意味では最近ラフマニノフにはまっています。『死の島』って交響詩がお気に入り。そういえば福永武彦の小説『死の島』も素晴らしい小説だった。誰も読まないのかな? こちらは確かシベリウスの音楽が題材になっておりました。
話が変な方向に行ってしまいましたが、日本って本当にあなどれない国だ。まだこんな映画が埋もれているなんて。
初出 「西参道シネマブログ」 2007-07-07
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