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『白い巨塔』 映画版も素晴らしい。田宮二郎の先鋭的かつ危ういキャラが秀逸。

評価 ☆☆



あらすじ
浪速大学医学部第一外科の助教授である財前五郎は才気あふれる男だった。自信満々で、時折見せる不遜な態度が周囲から反感を買うことあった。しかし、外科医としての実力は確かだった。財前は、次期教授の座を密かに狙っていた。



山崎豊子原作の映画は何本かあるが、どれも女性からの人気が高い。『白い巨塔』もそのひとつである。僕は田宮二郎主演のテレビドラマ『白い巨塔』が好きで何度も見ている。本当に面白かった。フジテレビの唐沢寿明版『白い巨塔』の方はまあまあでした。映画の方はずっと未見だった。



正直に言えば期待していなかった。『白い巨塔』という話は長いので、どこまで描かれているのか? 超ダイジェスト版になっているのでは? と疑心暗鬼だった。



映画『白い巨塔』は1966年公開の映画。監督は山本薩夫。出演は田宮二郎、東野英治郎など。ドラマで言えば前半部分がメインとなっていた。しかも、コンパクトかつスマートに描かれている。構成も良くて、バタバタしている複雑な人間関係をスラリと料理している。



映画『白い巨塔』の田宮二郎がよい。野心ギラギラなのが伝わる。ドラマの『白い巨塔』の田宮は人間の哀しみみたいなものが伝わってくる分だけ、野心に欠けた。映画は短いので鋭角的、かつ脆さを持つ主人公というキャラになっている。



脇役たちも良い。東教授の東野英治郎、鵜飼教授の小沢栄太郎、大河内教授の加藤嘉なんて本当に存在しそう。いやぁ、腹黒そうなヤツ、正義感を前面に出すことが逆に煙たがられるヤツなど、魑魅魍魎キャラがいっぱいである。濃厚だ。このくらい濃ゆいキャラがいないとドラマは面白くない。



金ですべて処理できると考える傲慢なところも人間くさい。ただし、単に人間くさいドラマとして終わっていないのが『白い巨塔』の良いところでもある。このあたりは観てほしい。



それにしても、この映画のファーストシーンの手術はビックリですね。あんなのいま撮影したら問題あるんじゃないの? アンキモとか、こてっちゃんとか、食べられなくなりそう。観ようと思っているひとは注意してください。



追記



1978年の田宮二郎主演のテレビドラマ『白い巨塔』撮影後、田宮二郎は自殺しているのは有名な話だが、テレビドラマも、この映画のヒットがなければ企画されなかっただろう。その後、ドラマ『白い巨塔』は人気があったようで、何度もリメイクされている。だが、映画としてのリメイクはない。



初出 「西参道シネマブログ」 2010-09-27



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