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『ライトスタッフ』 サントラは『ロッキー』と同じ作曲家。科学の持つ非人間的な部分を描いた問題作。

評価 ☆☆



あらすじ
第二次世界大戦後のアメリカ空軍には、最新鋭機の試験を行うテストパイロットの間で「大空の悪魔に挑んだ者は死ぬ」という噂があった。実際、「音の壁」と呼ばれるマッハ1の速度に挑んだパイロットたちがスピードに耐えきれずに事故を起こしていた。



クラシック音楽が好きでちょこちょこ聞いているのだが、たまに「あれ? どこかで聞いたことがあるな」と思う曲に出くわすことがある。この映画『ライトスタッフ』のオリジナルスコアはビル・コンティの作曲という。つまり『ロッキー』と同じひとが作っている。めちゃくちゃ盛り上がるのはビル・コンティの音楽のせいなのだ。そうなんだけど、このラストにかかる壮大な音楽はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲にそっくりな気がする。



ちなみに『スター・ウォーズ』のジョン・ウィリアムズはドヴォルザークがお好きなようで、彼の作品にはドヴォルザークの曲によく似たリズムやメロディが登場する。どれのなんの曲が、どの映画で引用されているかはすぐわかります。自分で調べてみて下さい。ほんと、すぐわかるから。



1983年に公開された『ライトスタッフ』は、スコット・グレンとサム・シェパードが主役の映画だ。1950年直前のアメリカが舞台。人類初の有人宇宙飛行をめざす男たちが、マーキュリー計画と呼ばれる宇宙飛行のプロジェクトに挑む。ドキュメンタリータッチのドラマである。ちなみにタイトルのライトスタッフとは「正しい資質」あるいは「適任」という意味だ。



アメリカがソ連と対抗するシーンが面白かった。まるで子供のケンカみたいだ。お互いをライバルとして意識しながら、厳しい訓練を行う男たちの姿も興味深かった。



彼らを取り巻く家族たちにも重みがある。同じフィールドにいながら、別々の目標に向かって全身全霊を傾ける男たちの対比もある。このあたりがしっかり描かれているので、かっこいいし、昂揚感もある。見ごたえも十分ある。



一方で、科学がいかに人間にとって非情なものかも前面に出ている。人間は、科学の進歩のために人権なんて簡単に捨ててしまえる存在なのだ、と映画は主張している。宇宙に向かうことは、人類にとってかなり無謀なことなんだね。



だからこそ、ビル・コンティの音楽が壮大に鳴り響くラストは心に響く。でも、このものすごく大げさなエンディングは「これは本当にヒーロー賛歌の映画なのか?」「科学は本当に私たちを幸せにしてきたのか?」という疑問を観客に湧かせる。少なくとも私にはそう思えた。



よく考えると妙な映画である。『SF/ボディ・スナッチャー』のフィリップ・カウフマン監督ならではだよね。これ。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-12-01



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