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『フィツカラルド』 ヘルツォークの最高傑作。狂ってるよね。ニュー・ジャーマン・シネマは再評価されるべき。

評価 ☆☆☆



あらすじ
1890年代、南米。富豪のフィツカラルドはオペラ鑑賞をするために命をかけていた。アマゾン河の居住地であるイキトスからオペラハウスのあるマナウスまでアマゾン河を200キロも、手漕ぎボートで下ってくるほど。彼はアマゾン河上流のイキトスにオペラハウス建設を計画する。




ニュー・ジャーマン・シネマというムーヴメントをご存知だろうか。いまや、誰もそんな映画の流れがあったことなど忘れてしまったかもしれない。ヴェルナー・ヘルツォーク、ファスビンダー、ヴィム・ヴェンダース、フォルカー・シュレンドルフなどによる、1960年代後半から1980年までにドイツで活躍した一連の映画監督たちのこと。ビジネス的成功よりも芸術性を重く見た作風の彼らの作品は興味深く、いまもな輝きを放っている。



そんな中でぜひ観てもらいたいのがヘルツォーク監督の『フィツカラルド』である。1982年公開。監督はヴェルナー・ヘルツォーク。出演はクラウス・キンスキー、クラウディア・カルディナーレ。僕はなんの前知識もなしに観たのだが「すげえ」のひとこと。



何がすごいって発想が突拍子もない。そしてスタイリッシュ。僕はこのクラウス・キンスキーの白い麻のジャッケットに憧れ、いつか着てみたいと思っている。だいぶ、頭も白くなったしね。



主演のクラウス・キンスキーの圧倒的な存在感もいい。こんな頑固そうな父親からナスターシャ・キンスキーみたいな美少女が産まれたなんて信じられない。



撮影もすごい。後で知ったことだがミニチュアや特撮をほぼ一切使っていない。CGなんてなかった頃にリアルでやってしまう。マジかよ。この驚きは映画を観たらわかります。リアリティを求めるあまり過酷な現場に、主役が何度も交代したらしい。



特にジャック・ニコルソンも逃げたというからすごい。クラウス・キンスキーも逃げようとしたらヘルツォークから銃口を向けられたという。狂ってるよね。それにしてもよく撮影できたものだ。いまなら絶対環境保護団体からクレームがつきそうである。



音楽も素晴らしい。ポポル・ブーの民族音楽のような音色、蓄音機でアマゾン流域に大音量に響かせるオペラ、壮大なテーマ曲も素晴らしい。オリジナリティ溢れる作品である。映画的陶酔というものが存在するのであれば、その瞬間が間違いなくここにある。



ただし、万人が面白いと思えるかというとそうでもない。映画は観客を選ぶ。映画を見る目がその人にあるか、良い映画は観客の目と才能を見極める。



長い間、映画を観ているとそんな気がすることがある。素晴らしい映画ほど、その傾向は強い。大画面で観るしかない映画であることも事実。どこか大画面でリバイバルしないかな。



初出 「西参道シネマブログ」 2012-03-21



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