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『北北西に進路を取れ』 原題の意味の混乱も楽しい。ヒッチ映画の最高傑作のひとつ。

評価 ☆☆☆☆



あらすじ
ニューヨークの広告会社を経営しているロジャー・ソーンヒルはあるホテルのロビーで突然拉致された。連れて行かれた家にはタウンゼントという男性がいる。ロジャーをキャプランというスパイと間違えているようだ。ロジャーは車の事故に見せかけて殺されかけるが、なんとか脱走に成功した。



新しいものは常にセクシーだといったのは天才写真家である荒木経惟氏だった。成長過程がエロいんだそうだ。わかったような、わからないような。でもiphoneなんてちょっとセクシーに感じることがある。新しいものをどんどん追っていくほどに僕は若くない。いつのまにか元気がなくなっている自分に気づく。



機械は基本に忠実でシンプルで壊れにくいものがいい。多機能なんて必要ない。映画も同じ気がする。



1959年公開の『北北西に進路を取れ』は、アルフレッド・ヒッチコック監督の巻き込まれ型サスペンスの最高傑作である。出演はケーリー・グラント、エヴァ・マリー・セイントなど。彼の定番である落下のイメージが際立っている。「定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー」の中でヒッチ自身が語っているように、サスペンスの原則に忠実に作り上げられている。



この映画を観る前か後に「定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー」を読むと良い。その理論の高さと『北北西に進路を取れ』が理論的に作り上げられた映画であることがよくわかる。おすすめです。



ケーリー・グラントはこの手の映画の主人公としてはちょっと問題がある気もするが、エヴァ・マリー・セイントは十分な美しさと気品を備えている。ヒッチコック映画に登場する女優ってみんな美人ですよね。多分、彼ほど美人を上手く起用する監督はいないんじゃないかな。



噂によると、ヒッチコックの片思いに終わっていると言う。生きていたら彼にインタビューしてみたかったですね。



お話の方はヒッチコック得意の「間違われて」+「追われる」というもの。間違われ方も、追われ方も、どことなく様式的でリアル感が薄いが、そこが映画的で良い。いわゆる映画的リアリティで、きっちり楽しませてくれます。



邦題の『北北西に進路を取れ』も良い題名です。原題は『North By Northwest』。北北西は、Northwest By Northが本当。ヒッチコックによると「慌てた主人公が、間違いに気づかないほど混乱してしまったから」だというのだが。「なんだその言い訳!」と思いながら笑ってしまう。



こういうテイストの映画はまったくなくなっちゃった。残念である。



初出 「西参道シネマブログ」 2012-06-28



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