『トゥルー・ロマンス』 ディレクターズカット版はラストが異なる。いまでは集められない豪華スタッフとキャスト。
評価 ☆☆☆
あらすじ
エルヴィス・プレスリーに心酔する若者クラレンスはデトロイトにあるコミックショップで働いている。独身だが彼女はいない。自分の誕生日にソニー千葉のカンフー映画を観に行った時、映画館で偶然出会ったコールガールのアラバマと意気投合する。
押井守監督はかつて「完全なオリジナルなど存在しない」という発言をしていた。映像ほど昔に観たカットやシーンの影響を受けるものはないのだろう。僕はオマージュとか、パクリとかいうのが面倒なので(だって、その境界はどこにある? )映画的記憶という表現を使っている。
1993年公開の『トゥルー・ロマンス』は、トニー・スコット監督作品。この映画には実に多彩な俳優たちが名前を連ねている。クリスチャン・スレイター、パトリシア・アークエット、デニス・ホッパー、ヴァル・キルマー、ゲイリー・オールドマン、ブラッド・ピット、クリストファー・ウォーケン、サミュエル・L・ジャクソンなど。とても豪華である。
脚本はクエンティン・タランティーノ、音楽はハンス・ジマー。多分、今では絶対に揃えられない超一流のスタッフたちである。
そんな豪華キャスト&スタッフによって描かれるのは、テレンス・マリックの『地獄の逃避行』をなぞった男女の逃避行ものだ。あるいはデビット・リンチ監督の『ワイルド・アット・ハート』的な世界。映画的記憶に彩られている。しかも、タランティーノ脚本らしく登場人物たちは必要以上に喋る。アクションシーンも過激、ラストはちょっと甘いけど、許せる。
ヒロインのパトリシア・アークエットもかわいい。姉のロザンナ・アークエットよりもいいかも、と思わせるほど。「あ、もう、あかんて」(なぜか大阪弁)という状況に陥るふたりが、どういうふうに脱出するかというスリリングさもある。僕の周囲での評価は低いけど、意外と好きである。
こういう映画がどうして日本で撮影できないんだろうか。面白いと思うんだけどな。友人にそう言ったら「『いつかギラギラする日』があるじゃないか」って答えられた。
ちょっと違うと思う(きっぱり)。
追記
その後、ディレクターズカット版が登場した。ラストが異なるという。何度も言うけど、ラストを変えたからといっても内容はあまり変わらない。オチだけのために映画全体のすべてのカットがあるわけではない。バッドエンドであろうが、そうでなかろうが、全体として考える目を忘れないようにしたいものだ。
初出 「西参道シネマブログ」 2008-08-04
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