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『ミスティック・リバー』 キャストたちの存在感がハンパない。映画は社会の鏡。アメリカがこれほど病んでいるとは。
評価 ☆☆
あらすじ
ボストンのある街で、11歳になる3人の男の子、ジミー、ショーン、デイヴ。彼らは近所に住む幼馴染たちでいつも一緒に遊んでいた。ある日、住宅街の道路で、まだやわらかいアスファルトに名前を刻んで遊んでいる時、ある男性に怒られて、デイヴだけが車で連れ去られた。
大島渚監督は「映画をみれば、その国の置かれている状況がわかる」という名言を残した。この言葉は的を射ていると思う。さすが大島監督と言うべきか。混沌とした社会の中で作り上げられるのは混沌とした映画なのだ。
2003年公開の『ミスティック・リバー』はアカデミー賞6部門にノミネートされている。ショーン・ペンは主演男優賞、ティム・ロビンスは助演男優賞を受賞。クリント・イーストウッドの監督作品である。しかし、イーストウッド映画のベストだとは思えない。『許されざる者』でみせてくれたような高貴さには程遠く、また『マディソン郡の橋』のようなカタルシスもこの映画にはない。
役者たちに十分な演技をさせるだけのフィールドを提供して「あとは勝手にやってください」といった感じの演出をしている。むしろ、ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコンがベストな演技をみせている。ローレンス・フィシュバーンもその存在感を示していて嬉しい。
原作を読んでいないけれど、この題材は映画よりも原作本の方が数段面白いのかもしれない。もしそうだとしたらクリント・イーストウッドが監督なんだから、もう少し真面目に面白さを追求してくれてもいいんじゃないかな、とも思う。
それにしても、この映画がこれほどに受け入れられるというのが「どうもわからないねぇ」(映画『生きる』の左卜全風)。多分、私たち日本人が感じる以上にアメリカや他国ではリアルに感じられるということか?
安全神話が崩壊していると言われる日本だが、他国はもっと安全ではないらしい。性的虐待のために子供を誘拐することが日常茶飯事なんて、いったいどんな社会なんだ? アメリカ、病みすぎでしょ。他国の児童ポルノ所持などをとやかくいう前に自国の性犯罪率を下げて欲しいよ。
いずれにしても、役者たちの演技合戦に興奮できる一方で、アメリカの現状に間違いなく暗くなれる一作である。
初出 「西参道シネマブログ」 2011-07-12
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