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『純』 軍艦島のシーンが圧巻。痴漢を題材にした映画。あの純君?

評価 ☆☆



あらすじ
長崎の軍艦島から集団就職で東京にやってきた青年、松岡純。彼は遊園地の修理工場で働きながら漫画家になりたいと勉強を続けていたい。同じ職場には木島洋子という恋人がいた。しかし、彼女とは手を握ることさえできなかった。



『純』は1978年に公開された横山博人監督の映画。出演は江藤潤、朝加真由美など。痴漢を題材にした映画である。僕は痴漢には興味がないけれ『純』という映画は17、18歳かな、そのくらいに観て興味深かったのを覚えている。



主演は江藤潤。シャイな若者役を演じている。ヒロインが朝加真由美。きれいな女性だ。ふたりは恋人同士に近い関係で、純は女性に対して手も握れないくらい内向的という。しかし、純君は痴漢をしているという屈折している話です。



特に故郷として出てくる軍艦島でのスローモーションはインパクトが強かったのを覚えている。



月日が流れて、この映画の裏話を知った。倉本聰が書いた脚本を横山博人監督が書き直して撮影した作品らしいというが、どこからが倉本で、どこからが横山が書いたのかはわからない。



いずれにしても「純」は、あの倉本聰の作品の主人公と同じ名前で、性格設定もどことなくあの主人公に似ている。好きな女性がいながら、一方で別の女性に手を出しちゃうのは倉本作品には多い。キャラの設定は倉本聰的である。それにしても純君、痴漢してたの? って感じだけど。



題材が痴漢の物語なので、いまでは撮影できないだろう。当時と現在では痴漢をめぐる社会状況が大きく違う。痴漢といえば周防正行監督の『それでもボクはやっていない』という傑作がある。こちらは冤罪モノで面白い。



僕は『純』は痴漢映画ではなく、青春映画のひとつと観ている。何度もいうけど、軍艦島のスローモーションは本当に圧巻だった。映画的な技法がいくつも織り込まれている。機会があったら観てほしい。



追記



この作品のいきさつはウィキペディアに詳細が書かれている。そっちで確認して下さい。配給ありきで製作されたわけではなくて横山博人が9000万円の借金をしてつくりあげたという。当時、80年代ニューウェイブの代表作とされていたのを思い出す。



続 追記



いま観ると痴漢される女性の扱い、自立のためには何をしてもいいというような男性のエゴイズム、などなどさまざまな意味で問題の多い作品であることがわかる。



初出 「西参道シネマブログ」 2008-09-15



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