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『運命の引き金』 おすすめ映画のひとつ。都市と地方という対立が興味深い。

評価 ☆☆



あらすじ
殺人を犯して、大量のコカインを強奪して逃走する3人組。主犯格のレイの情婦であるファンタジアは、仲間を裏切り、大金を奪って故郷の田舎町スターシティへと逃げた。



原題は『ONE FALSE MOVE』。FLASEって引き金という意味なので、こういう邦題になっている。あまり聞いたことがない映画かもしれないが、おすすめである!



犯人が逃げるのをFBIが彼の故郷に先回りして待ち伏せるというお話。こう表現するとハードサスペンスっぽいけれど、この映画の本領は別のところにある。



FBIが故郷に行くと地元の警官がとても親切なのだ。地方の警官はいう。「都会はいいなぁ。刺激がいっぱいあって」と。逆にFBI捜査官たちは「こんな地方でゆっくり過ごすのもいいよな」と考える。「地方」と「都市」の話になっている。



「地方」と「都市」という図式は世界どこでも通用するテーマである。もちろん日本でも重要なテーマとなっていて、『東京物語』のモチーフのひとつでもある。都会に行って挫折するもの、地方にとどまりくすぶるものの対比がこの映画では絶妙に描かれている。僕もそうだけど、地方出身者は「うむむ」って思うだろう。



こういう作品と出会うと、この先も映画を観続けるのも悪くないかな、と思う。「面白いかどうかわからないけど、挑戦しよう」と思っても、実際に外れると結構こたえる。「ああ、このくらいのラストでこういうオチなんだろうな」と思っていて、その通りになると本当に失望する。



予想以上の展開、予想以上のオチ。期待していなかっただけに面白い、というのが映画の本当の良さである。その意味では、地方に行った時にふらりと入る定食屋みたいなものだ。



話はそれるけど、数十年前に入った青森の「いろは食堂」は本当にディープだった。いまにも崩れそうな店内でコンクリート打ちっぱなしの床、ベニアかと思うような斜めになったテーブル、不揃いな椅子、お水のコップはワンカップ大関の空きビンだった。ところが注文したホタテ定食は、どんぶりいっぱいのご飯、どんぶりいっぱいの味噌汁、大盛りでとろけそうな新鮮なホタテが10コ、ポテトサラダ、ひじき、しかも缶詰の桃が一切れ(デザート用のようだ)。料金は500円(税込み)だった。この、あまりの美味しさと店のギャップに頭がクラクラしたのを覚えている。こういうのを体験するとまた場末の食堂で食べたくなる。



ちなみに、数年後「いろは食堂」に再訪したらちょっときれいになっていて、お水は三ツ矢サイダーのおまけのついているコップで出てきた。その時、一緒に行った友だちに「きれいなったなぁ」といったら、「どこが?」といって笑われてしまった。そのくらいすごい店だった。



話を戻そう。この映画はカール・フランクリン監督の中でも良い出来だと思います。といってもフランクリン監督作品はほとんど観ていないけど。



初出 「西参道シネマブログ」 2004-12-18



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