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『ラスト・ターゲット』 渋いジョージ・クルーニーによる、静かな暗殺モノ。

評価 ☆☆



あらすじ
殺し屋のジャックは恋人イングリッドと共に、スウェーデンの山の中にある小さなコテージで平和に過ごしていた。ある朝、イングリッドと共に散歩に出ると、雪の中に人間の足跡を発見。ジャックはイングリッドを引き寄せて岩陰に。そこへ殺し屋が発砲してきた。



映画はテレビと違い、根気を観客に強いることがある。テレビはつまんないとすぐにチャンネルを変えることができるけれど、映画はそうはいかない。退屈でも仕方なく観続けることになる。もちろん、映画館を出るという選択もある。



ずっと我慢して観ていると意外と面白くなったりもする。小説も同じことがある。読み終わってみると、良い小説ほど読者に我慢を強いるというか、「ダンナ、ちょっとまってて。もう少しで面白くなるから」という部分がある。もちろん、全然面白くならない場合もある。そういう時もまぁ、仕方ない。それも人生である。



2010年公開の『ラスト・ターゲット』は微妙な作品だった。ハリウッド的な大きな事件も起こらないし、かといって単純でつまんないわけでもない。淡々と綴られていく暗殺者の日常がしっかりと描かれ、ピンと張りつめた空気が流れる。ただし、それらは単調すぎるために観客は次第に飽きてくる。



監督はアントン・コービン。出演はジョージ・クルーニー、ヴィオランテ・プラシドなど。僕は面白いと思った。単に暗殺の準備をする野心的な若い暗殺者が好みなら、この物語は退屈だろう。緊迫感だけを求めたければフレッド・ジンネマン監督の『ジャッカルの日』を観たほうがいい(リメイク版を観ちゃだめですよ)。



主役のジョージ・クルーニーは陽気でハンサムな中年男性というイメージがあるけれど、寡黙な殺し屋も悪くない。感情を押し殺したような演技はなかなかだ。筋トレのシーンもいくつか出ているけれど、これもうまくこなしている。この映画のジョージ・クルーニーはとても渋い。



相手役の女性たちも良いです。個人的な趣味ではないけれど、肉感的でセクシーで存在感がしっかりある。マチルダ役のテクラ・ルーテン、クララ役のヴィオランテ・プラシドも素敵です。



ただし、静かすぎる。この映画の展開をどう考えるかは本当に難しい。もう少しどうにかなっていた気もするし、逆にこれ以上はやってほしくない感じもある。監督のアントン・コービンはどう考えたのかを本人に聞いてみたいくらいだ。



『アジョシ』といい、『ラスト・ターゲット』といい、目新しい題材がまったくなくても、ここまで面白くできるんだね。丁寧に作り上げることが何よりも大切だ。



初出 「西参道シネマブログ」 2012-2-25



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