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『スティング』 名曲「ジ・エンターティナー」に乗せて展開する粋な大人たちの詐欺物語。絶対に面白い。

評価 ☆☆☆☆



あらすじ
1936年、イリノイ州の小さな町でジョニーは黒人の師匠と共に路上詐欺をして大金をせしめた。大金を手にした師匠は引退をすることにして、ジョニーにシカゴの詐欺師ヘンリーに会いに行くように勧める。



久しぶりに観た。いわずと知れた名作だけど、やっぱり面白かった。脚本がこれほど面白くできている映画ってあまりない。でも、最近は観ているひとが少なくなったみたいだ。それは困った。



『スティング』は1973年に公開されたジョージ・ロイ・ヒル監督の作品である。出演はポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードなど。監督とこのふたりは1969年の『明日に向かって撃て』で大ヒットを飛ばし、同じキャストで別の映画を、ということで製作されたようだ。



1936年のシカゴを舞台にした、詐欺グループに関するちょっと粋な復讐劇。映画のオープニングにあるユニバーサル映画のロゴも1930年代のものを使用しているという。粋なはからいである。本編はもちろんカラーである。



脚本が本当によくできているので、どこからどう説明していいかわからないのでストーリーは割愛。いや、観終わったら、僕のこの表現がまったく正しいことがよくわかるはず。しかもこの映画は詐欺のお話なので、観客もいろいろ騙される。騙されてください。楽しいから。



何度も観て、その都度感じるのは観客ののせ方が上手いところだろう。特にラスト近くの話が急展開するところは一歩間違うと「なんのこっちゃ」という劇になってしまう。ところが、デリケートに、テンポを崩さずに作っている。



うちの奥さんは、最初のシーンからすっかりだまされていました。「ほら、すりかわった」って指摘しても「え?何が!」と逆ギレされてしまいました。こういう人はくれぐれも振込み詐欺などに引っかからないようにして下さい。でも、最初は誰もがこの映画にはいろいろ騙されるのだ。



それから、競馬の単勝と複勝の違いの話が出てくる。そこを突くひとがいますが、ストーリー全体にはさほど関係ないので大丈夫。細部には大いに関係しているけどね。このあたりも観客のことを考えてる演出でいい。



騙す、騙されるもいいのだけど、それ以上に魅力的なのが、ロバート・レッドフォード、ポール・ニューマンのかっこよさだ。特にスーツ姿の青い目をしたポール・ニューマンが、立ち姿でお菓子か何かを食べながら、鼻をこすって合図を送るカットなんて、カッコよすぎです。



さらにロバート・ショウがいい。悪役ってこういう顔をしているよね、と感じさせる存在感が素晴らしい。撮影当時、足を負傷してたのでロネハンもといロネガンは足の悪い役になったらしい。この人は『ジョーズ』でもいい味を出している。51歳で死んじゃったんですね。私生活ではいいひとだったらしい。善人は早死にするのかもしれない。



テーマ音楽の「ジ・エンターティナー」は、1902年に流行していたラグタイムの代表スコット・ジョプリンの曲。1930年代はジャズブームで下火になっていたという。この映画によって再び脚光を浴び、70年代のラグタイム再評価のきっかけとなった。日本でもさまざまなコマーシャルで使われているので、知っているひともいるかもしれない。



70年代のジョージ・ロイ・ヒル監督は本当に神がかっていた。『明日に向かって撃て』『スローターハウス5』『スティング』という三本は素晴らしい仕上がり。『モダン・ミリー』と『華麗なるヒコーキ野郎』も悪くない。『リトル・ロマンス』も素敵です。



ちなみに『リトル・ロマンス』ではダイアン・レインが可愛いが、それはさておき、映画の中で『スティング』のラストが登場する。先に『スティング』を観ておくとさらに面白い。



ジョージ・ロイ・ヒル監督はその後『ガープの世界』『リトル・ドラマー・ガール』など、全部で12本の映画を作り上げた。そのうち半分以上は観てるんだけど、どれもわりといい。特に、70年前後の三本は特に良いです。



『スティング』を観てない? 映画館で観る機会がない? いやいや、それはまずい。映画ファンなら、この映画だけは観ておくべきでしょう。その年のアカデミー賞作品賞、監督賞他7部門に輝いる。といっても大げさな映画じゃない。ヒマな時に笑いながら観るエンターティメントな作品である。絶対に十分面白い作品なはず。



世界中でこの映画を観て「ものすごくつまんなかったから、途中で出てきた」という映画ファンなんているのか? と思うんだけどな。



初出 「西参道シネマブログ」 2005-02-08



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