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『プレステージ』 映画のあらすじ自体がネタバレ。タネ明かしはしないほうがいい。

評価 ☆☆



あらすじ
19世紀末のロンドンでふたりのマジシャンが人気を二分していた。ひとりは華麗なパフォーマンスが得意なアンジャー。見事なマジックを発案するボーデン。ふたりは互いにライバル的存在だった。ふたりとも師匠・ミルトンの下で修行を積んだ門下生だった。



2006年公開の『プレステージ』はヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベールが出演した、19世紀末のロンドンを舞台にした手品師たちの物語。監督はクリストファー・ノーラン。



ノーラン監督作品は構成が凝っていて一度観ただけではなかなかわからない。そこが魅力になっているというか、あえてそういう構成を作ってリピーターを集めている。ノーラン監督の中には「謎を残すことで何度も同じ映画に観に来てくれるのでは?」という戦略みたいなものがあるらしい。



いずれにしても、物語の分析はいっぱいネットにあるので検索してください。



しかし、何度か観れば構成の面白さ、奇抜なアイデアは魅力を失う。いまはネットでもすぐ観ることができるからなおさらである。残るのはストーリーとはかけ離れた部分、例えば人間とはどういうものか、どう生きるべきかとか、みたいな哲学のような部分だろうか。僕は映画の構造よりもそちらに興味がある。



残念ながら『プレステージ』に描かれた哲学は、後の『インセプション』や『ダークナイト』に比べて薄いと言わざるをえない。だが、それでも彼の主張は現代的でもある。あんまり言うとつまんなくなるので言わないけれど。



教訓という意味で印象的だったシーンもある。マイケル・ケイン演じるベテラン手品師カッターが言う。「だまされているほうがいいのだ。タネは知らないほうがいい」と。そうなのだ。どんな世界でも同じでタネ明かしをすればそれで終わり。それよりも沈黙を守り通したほうが魔法は続く。タネなんて意外とシンプルなものだから。



私も恥ずかしながらいくつかの魔術が使えると自負している。でも、そろそろタネ明かしをするのをやめようかな。もちろん、比喩的な意味だけど(当たり前か)。



その意味では、映画の「あらすじ」というのもネタバレみたいなものなのだ。本当に面白い映画の楽しみ方は、ひまだからとふらりと映画館に入って観るというもの。実際に僕もしてみたが、強烈な印象を心に刻まれてしまった作品は多い。



『エイリアン』がそうだった(『スターウォーズ』みたいなSFだと思って観た)、『ストレンジ・デイズ』もそうだったな(新人脚本家にしてはよくできてる話だと思ったら、脚本はジェームズ・キャメロンだった)。でも、この観方、外れた時のダメージがすごいので、正直勇気がいるよね。



初出 「西参道シネマブログ」 2015-09-23



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