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『桐島、部活やめるってよ』 あえて考察するなら「ゴトーを待ちながら」と『現金に体を張れ』のミックス。

評価 ☆☆



あらすじ
11月25日金曜日。松籟高等学校で放課後残っている生徒たちにニュースが伝わる。バレーボールのキャプテンで成績も優秀で、誰もがあこがれる存在の桐島がバレーボール部を退部するというものだった。



『桐島、部活やめるってよ』をいまさら分析しても仕方がない。勝手にやってくれという感じもする。この映画は2012年公開の作品で、監督は吉田 大八
朝井リョウの小説を映画化したもので、出演は神木隆之介、橋本愛など。



ただし、気になったことはいくつかある。ひとつには構成が借りものであるということ。あの「金曜日」という黒地に白文字のタイトルが何回も出てくるのは『現金に体を張れ』や『ジャッキー・ブラウン』でも知られている。構成そのものは目新しいものはない。



もうひとつ、批評家気取りの(まるで僕みたいな)ひとたちがいっているヒエラルキー的なアプローチ。これも微妙だ。むしろ、桐島に依存していた人間たちと依存していなかった人間たちという視点から語るほうがいいのではないか。



この作品がサミュエル・ベケットの「ゴトーを待ちながら」をベースにしているのはすぐにわかる。桐島=キリストだろう。もっと極端に言うと桐島=麻薬、宗教なんでもいいかもしれない。とりあえず麻薬にしようか。



麻薬の力を借りていたひとたちは彼がいなくなることで右往左往し、焦り、戸惑い、感情が不安定になる。では、麻薬を手にする、つまり依存するひとたちには何か共通点があるのか? ここで論じているととても長くなるので自分で考えて下さい。それがこの映画あるいは原作の底である。



ところで、観客の中に橋本愛が演じるかすみが前田(神木隆之介)にどのような感情を持っていたかがわからない、というひとがいる。『鉄男』は、隠れてつきあっていた男とケンカして、気晴らしに選ぶような映画では絶対にありえない。



前田がこの映画館にいることを120%わかっているから観る映画である。でも、前田が積極的ではないので見切りをつけようとしてという感じ(でも実はしていない)。



この映画の橋本愛は表情が変わらなくて面白くない。美人かもしれないが面白さを感じない。むしろ性格の悪そうな松岡茉優のほうがいい。この子はすごく面白い存在である。将来大化けする気がする。山本美月は演技以前。論外。



それにしても、桐島はなぜ部活をやめたのか? 本当の映画ならば、そこがしっかり描かないといけない。原作ではちゃんと描いているかもしれない。だが原作などどうでもいい。映画は映画だけで成立しえるものでなくてはらないはずだから。



初出 「西参道シネマブログ」 2013-7-08



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