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「文型」の導入

「前から区切って知っている表現の意味を与えていく」という多くの人が陥りがちな「英文読解(笑)」の問題点は、以下の通りだと説明した。

・頭を働かせないので、自分の決定を覆せない
・知らない表現が出たらおしまい、もしくは勘に頼る

これを技術的に防ぐために、私の指導では、「動詞」に注目して構文を考えるという作業を必須としている。

なぜなら、全ての英文には動詞が存在するからだ。

全ての英文には動詞がある
→動詞に注目して読む手順を考えていけば、
 全ての英文に共通した読み方を開発できる

これは日本語とは違う。「空は青い」「風が騒がしい」など動詞が入らない文はいくらでも日本語にあるが、英語には必ず動詞が存在する。

ただし、省略されて動詞が見えない(見えない≠存在しない)ことは、いくらでもあり、それはいずれ扱う。

基本的に、英語の動詞は文中での位置を変えられない。日本語のように臨機応変に文の型を変化させることはできない。

そのため、英語における「動詞」は、他の語句と組み合わせて一定の形を取るようにできている。

大学受験を志したのなら、文型、という言葉を聞いたことがあろう。「文型」は、動詞がそれぞれ持つ固有の「型」であり、表現する意味によってその「型」は変わる。「型」が意味を表すのだ。この「文型」について、詳細に理解していくことが、英文法の学習を始めて最初のうちに、かなりの時間をかけてやることである。

英文は動詞の持つ固有の「型」により意味が決まる
→動詞の「型」を発見するところから読解は始まる

ところで、「文型」だとか「動詞が固有の型を持つ」という考え方については、日本語には全くないものだ。それを、日本語の対応だけで考えられては都合が悪い。何しろ英語のシステムを学んでいくものなので、日本語にそもそもないものをどう対応させていいかわからないはずだ。

そもそも私たちのほとんどは日本語文法についてはあまりに無知であるが、そのことに自覚的ではない(日本語ネイティブだから)。そのため、日本語文法との対応がうまくいくはずもない。英文法の理解を、日本語ネイティブ的な感覚に頼っていてはうまくいかない。

ただし、日本語訳と結びつけることが必ずしも悪いことばかりとは限らない。多くの英語学習者は「日本語訳」を英語表現の対応付けとして行う。これは一部ではその機能が共通することもあるため、言語の機能を理解するためには有効な側面もある

その代表が「品詞」だ。日本語訳で判断できる日本語の品詞は、多くの場合英語でも同じ品詞と対応する。

しかし、日本語にしかない品詞は、英語の別の品詞に対応させるほかないし、逆も然りである。例えば、形容動詞は、英語では形容詞として分類される。

このようにある程度は語句ごとに意味・品詞の対応ができる。

ところが、その背後のルール、つまり「文法」については、共通点はあまりにも少ない。

結果としての日本語訳は確かに存在し、「英語表現」と「日本語訳」の対応はある。しかし、それら全てを覚えるのでは、膨大な量の暗記が必要となり、これまでお伝えしたように、思考を放棄する原因になりうる。

ダメな対応の取り方:「英語の表現」⇄「日本語訳」
*勝手に日本語のルールで英語を理解しようとするからダメ
*多くの人が一度決めた日本語訳から離れられないからダメ
*覚えるものが膨大になりすぎるからダメ

必要な思考の型は以下の通りだ。

必要な思考のステップ
「英語の表現」→「背後のルールを見抜く」
→「意味判断・決定」→「日本語訳」
*自然に、ストレスなくできるようになるまで、このステップを常に行う
*ルールをコンパクトで例外の少ない形で理解することが必要
*日本語のシステムをベースに英語を理解しようとしてはいけない

この「背後のルール」を把握するのに一番重要なものが、「動詞」である。繰り返すが、「動詞」が英文には必ず1つ以上存在するからである。

ここで、「文型」=「動詞がもつ固有の型」というものを強く意識してもらうために、それがどういったものかをイメージしやすい形で紹介していく。

動詞の型を強く意識するためには、動詞をこのような基板であると捉えて欲しい。基板というのは、電子工作などで使う、コンデンサや抵抗や電源などを配置するための板だ。動詞とその意味によって、配置できる役割の種類や個数が決まっている。

例えば、同じ「話す」という意味になる動詞talk, tellは、以下のように基板そのものが異なる。

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動詞の意味と基板を正確に覚えておかなければ、読めないし、書けない。

ただ、この基板にない意味の言葉が追加できないのでは、とても不便である。

これを補うために、基板に前置詞句や副詞が基板に自分で貼り付き、意味を足していくことができる。

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日本語訳が同じでも基板の形が違うため、talkを使うかtellを使うかで、以下の通り表現が異なる。

「彼は私にその話をした」
He talked to me about the story.
He told me the story.

基板で表すと以下のようになる。

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なぜtellにできることがtalkにできないのか、なぜtalkには別のパーツが必要なのか、と言われても、それが英語のルールなのだから仕方がない。観念して覚えるしかない。

基板の空所に貼り付けられるものは、何も単語だけではない。句や節も貼り付けることができるのだ。役割や個数は決まっていても、その大きさは自由自在である。

以下は少し長い例文で、基板の形や貼り付いている関係を明示したものである。

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さらには、同じ動詞でも意味が違えば基板の形が異なる。get, make, runなどは多くの型を持つ代表選手だ。

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このように、前から適当に訳を作っていくことが不可能な場合もある。getまでみたところでgetの意味は全くわからないのだ。

ただし、前から構造を保持して(先ほどもいった「リテンション」のことである)読み進めながら意味をとるのは可能だが、大体の人は「意味をとる=訳を作る」なので、話が噛み合わない。

前から読んで意味が取れているという人は例外なく意味判断を遅らせている、あるいは読んだ後から切れ目を判断している。

このように、意味が同じでも、動詞ごとに基板の形は異なるし、動詞によっても意味ごとに基板の形は異なる。しかもその基盤には句や節と言った長いカタマリが入ることがあるため、前から適当に訳語をつないでいくことでは基板の構造は全く見えないだろう。

今後、英語の動詞を捉える際には、動詞そのものにこうした基板の「型」があることを強く意識してもらいたい。

目の前の動詞がなんの意味を示しているのかを正しく読み取るためには、動詞の形を正しく読み取る他ない。動詞だけ見て意味を決めてはいけない。

そのため、動詞は日本語訳で覚えるのではなく、どういった型をとる時にどんな意味になるのかまで覚えなくてはいけない。

動詞の型もその意味も覚えなくちゃいけないなんて大変だ、と絶望的な気分になっている人も多いだろうが、安心してもらいたい。この「型」の多くは実にシンプルな形に収斂させることができる。それは文型の詳細にて説明していく。

まとめ
動詞の基板の形は、動詞と意味によって予め決まっている
①似たような意味でも、動詞によって基板の形(文型)が違う
②動詞によっても、意味に応じて基板が変わる

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