誰かとつながっていたい人のためのデザイン

フリーペーパーが昔から大好きだ。

高校時代、美術部だった。
顧問の先生は大学を出てから長くは経っておらず、歳が近くて、今振り返ると、当時からずっと、まるで姉のように思っていた。
住む場所も遠くないため、今でも親交がある。

美術部が活動する美術室には、たくさんの展示のチラシやDMが設置され、たまにフリーペーパーも置かれていた。それを管理しているのは先生だった。

先生は、面白そうな展示のフライヤーがあると、いつも教えてくれた。
おもろそうやな、これはシゼロ(わたし)が好きかもね、と、美しい作品が印刷されたきれいな紙を手渡してくれる。わたしはそれがとても嬉しく、先生と一緒にチラシを眺める時間はとても楽しかった。

そういうすてきな体験があったから、チラシやフリーペーパーが好き、という感覚は更に強まったように思う。

学校を卒業して、デザイン会社のグラフィックデザイナーになった私は、業務外での活動をかなり重視していた。
つまり、趣味での制作である。

仕事は、求められることをきちんとやるだけで良い。せいぜい、求められることより少し上のことをすれば充分、要件は満たされる。
わたしにとっては、自分の好きなことを好きなだけできる趣味のほうが、仕事よりもはるかに生きがいであり、パワーをかけるべきところだった。

「仕事じゃねえんだぞ、本気でやれ!」
と言っていたのは、タモリだっただろうか。所ジョージだっただろうか。
私は、かなりその言葉を体現してきたと思う。
友達と一緒に同人誌を作ったり、コスプレ衣装を作ったりと、とにかく何かを作っているか、企画を考えて実行している状態が基本で、その全てを本気でやっている。

そんな私が、働きはじめてからやりたい制作の一つに「フリーペーパーの制作」があった。
これは、企画もかなり明確に立てていた。
デザインを学ぶ学生向けに、デザイナーとして働いている人間からデザイン関係の情報を発信する、というものだ。

デザイン職への就職は、さまざまな不安と隣り合わせだ。

デザイン技術を身につけても、本当にそれで働いていけるのか?
自分のデザインが社会で通用するのだろうか?
残業の多い職場だったらどうしよう?
入った会社の上司が、ダメ出しがきついタイプだったらどうしよう?
求められるクオリティのものが制作できなかったら?

不安だらけである。

自分が目指す職に近い人間が、実際に働いていて、生きている、ということを知るだけでも、そういう不安を少しは解消できるんじゃなかろうか、と思った。

フリーペーパーによって、現職と学生とのつながりを生む。
つながりは、つまり、「安心」だと思っている。

デザイン専門学生だった頃の私は、コミュニケーション能力が高いほうではなく、就活や仕事に対する不安をうまく周囲に相談できなかった。
仕事をしていても、業務上の不安をうまく相談できずにいた。

そんな、わたしのような人間が少しでも安心できるような、フリーペーパーを作りたいと思っている。

考えていた当時は、制作の時間も、印刷費用も捻出できなかったのでお蔵入りだった。だが、それから9年経った今なら、そのどちらも都合するのは難しくないし、できる気がしている。

乞うご期待。

せっかくなので、最近いいと思っているフリーペーパーを紹介しておこう。

かしわら時報「INSIGHT」

柏原市外秘ということだが、ここでの紹介は許されたい…。これは本当にめちゃくちゃいいフリーペーパー。出会えたことに感謝した。ちなみに採取場所は八尾市。ぜんぜん市外である。

アイセイ薬局「ヘルス・グラフィックマガジン」

かなり有名だが、毎号楽しみにしているフリーペーパー。大阪だと配布場所がかなり限られるので現物は未採取だが、web上で全ページ公開されているため内容は見られる。
企画もおもしろいし、レイアウトも見開きごとに工夫が凝らされていて、素晴らしいクオリティ。

いいフリーペーパー採取はずっと趣味だな。
情報お待ちしております。

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