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Live.

2024/05/24 5:49の日記

今回はわたしが生まれて初めて生歌を聴いた海外アーティストの曲語り。
というかその時の思い出話。

Smokey Mountainというフィリピン出身のアイドルグループ。
紅白にも出演したことがあるそうなんですけど、なぜか学生時代我が校の吹奏楽部にいらっしゃった事があります。
下町公立校のゆるゆる小規模吹奏楽部になぜ海外のアイドルグループさんが……といまだに不思議ですが
たしか当時在籍してた男性教諭の人脈(青年海外協力隊云々みたいな感じの繋がりだったような)で
在阪テレビ局の取材カメラなんかも何台か入ったりと割とおおごとでして。


わたしを含めた部員全員彼らのことは全く知らなかったんですが
年齢がわりと近い(たしか当時のメンバーが14~17歳くらいだったかな)のと
皆さんさすがアイドルグループなだけあって見目麗しい方たちだったのもあり
言葉なんて通じないのにみんななんだか珍しく浮かれてキャッキャはしゃいでた気がします。


一応この訪問のコンセプトが「同世代の少年少女らが国の壁を越えて音楽で交流」みたいなことだったものですから
当然我がへなちょこ吹奏楽部のへなちょこ演奏を披露して、そのあとに今度は彼らがアカペラで
「Paraiso」という曲を歌って下さったわけなんですが。これがもう。


ボロい公立校の音楽室で、生演奏はもちろんカラオケもマイクも無しで
シンプルに目の前でアカペラで歌ってくれたはじめて聴く異国の歌で
例によって歌詞の意味なんて理解してないのにもかかわらず、こどもみたいに泣きじゃくってしまい。


周りに人がたくさん居るしテレビカメラもあるしで最初は躊躇してたんですけど
綺麗なメロディと歌声と、なんというか…マイク越し・スピーカー越しではないほんとの生声の力というか空気のリアルな震えに
どうしようもなく情動を突き動かされてしまって、そうなったら涙なんかすぐに止まらないんですね。


以前アニー・レノックスの曲語り日記の最後の方にも書きましたが
音楽って本当にたまにそんなふうに、何の前触れもなく突然全力で正面衝突してくるというか赤の他人の家にいきなりズカズカ立ち入ってあちこち引っ掻き回すというか
言い方アレですけどそうやって一方的に侵略してくる瞬間というのがあって
このとき聴いた彼らのアカペラの「Paraiso」はほんとに凄まじい勢いで中坊モブ顔のATフィールドを突き破ってきて。


聴き終わったあともしばらく泣きやめずにいたら部長が背中さすってくれたんですが
「良かった……良かったです……泣」と意味不明に返すことしか出来ませんでした。


その翌日だか近い日に彼らが大きなイベントのフリーライブに出演するというのを教えてもらい部員数人でそのライブも観に行き
もちろん大きなステージでバックミュージックありのパフォーマンスもとても素晴らしかったんですけど
やっぱり音楽室で目の前で聴いたアカペラのあの感覚を体験してしまうと……。


オーディションを勝ち抜いてプロデビューした人たちの素歌声?というのは
あんなにも人の本能をズタズタに抉りにくるんだなぁと今改めて思い出して感嘆しています。


なんというか、そこにちゃんと「生命」がある感じなんです。うまく表現出来ないけど。
温度、湿度、震えも掠れも乱れもなにもかも、余計なものを何も纏わないでやってくるその激しい生々しさ。
聴いて頂けたなら分かると思いますが決して猛々しい曲ではないのに
そういう次元じゃない、なにか命の息衝きみたいなものに圧倒される感覚。
肉声とはよく言ったもので、ほんとにある種の血生臭ささえ感じるというか。
それくらい、彼らのアカペラ肉声にはプリミティヴな力に溢れてて。


一番多感な時期であり本格的に音楽を生きる希望みたいに思い始めてたタイミングでそんな貴重な体験が出来たこと、今改めて凄い事だったよなぁとしみじみ感無量です。
一般人だとプロの歌い手の肉声歌唱を目の前で聴く機会などまず無いことですしね。


今回久々にライブ映像を観てみましたけどやっぱり素敵です。
歌詞を改めて読むとかなり重いので気軽に聴いて楽しむ感じの楽曲じゃないですけど
普遍的な美メロディだしこれもまた私的オールタイムベストな一曲だなぁと。


最後に今度はスタジオ盤を貼り付け。

行ったことも見たこともない遠い国に何故か不思議な郷愁を感じるこのメロディ、アレンジ。
知名度は今ひとつかもしれないけどまごう事なき名曲です。
なにかに祈りたいような気持ちの時には、ぜひお側に。

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