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人物①:口撃は最大の暴挙なり

頭は良いし、ユーモアもあるし、愛嬌もある。当然しゃべりも立つ。
なんなら容姿も可愛いとされている(僕のタイプではない)。
そんな女性の同僚が初回の登場人物です。

彼女には強烈な特徴がある。人のことをとても悪く言うのだ。
直接、本人を罵ることもあるし、本人がいない所でボロクソに悪態をつくこともある。

「自分がやったこと分かってるん?責任とれるん?どうしてくれるん?今すぐやって(無理難題)」
「あなたがダメなことはどーでもいいですが、こっちに迷惑かけるのやめてくれる?」
「あいつホンマ一回死んだらええねん。」
「一回死んでからやり直せボケッ!」

挙げたらキリがないけれど。。。
で、これらの場合、彼女の指摘するポイントが間違っているというわけではない。
基本的に相手が悪かったり、相手のミスだったり。指摘するポイントとしては彼女が正しいのだ。

でもミスや過ちは誰だって犯すものだ。もちろん彼女だって。

そんな時の彼女のセリフは「ごっめーん!ww」だ。

これでは、怒られたことのある者にとっては採算が合わない。
それが何より問題なのだ。

例えるなら、彼女に怒られる時は「今すぐ500万円払えやゴラッ」と搾り取られるのに対して、同じ程度のミスを彼女が犯した時は「100円払うね。私も忙しくって。じゃあね。」という軽やかな具合だ。

つまり、499万9千9百円の差額が生じてしまうのだ・・・。

これが周りの人間にとってどれだけの損害(ストレス)か・・・。
でも、文句をいうと、それこそ何倍になって返ってくるか分からないから我慢する悪循環。。。

そして、彼女はその態度を誰に対してもするわけではない。
頭が良くて、仕事が大好きな彼女は、もちろんクライアントや大事な取引先は大切にする。だから、社外ではとても人気があり、営業成績も良い。会社内では重要な営業ウーマンだ。

かたや社内の人間には上記のような態度を平気でとる。
だから、社内受けが非常に悪い。

ただ、彼女は周りの人間が嫌いでそういう態度をとっているわけではないようなのだ。
何も問題が無い時はフレンドリーでとても楽しい人である。気が利くし、フランクだし。
「あの人、普段は良い人なのに・・・。感情的になったら、もう・・・。」
という確固たるポジションを築いているのだ。

この唯一といえる欠点、「人を悪く言い過ぎる」はなぜ生じてしまっているのだろう。
感情をコントロールできないのか?
相手のダメージを計算できないのか?
自分のミスを忘れているのか?

どれも、その通りなんだと思う。そして、もう1つ、気付いた点がある。

「自分のことを守りたい」のだ。

彼女は自信家というわけではない。能力が高い人は周りにいてるし、それは認めている。だから、負けず嫌いというわけでもない。

ただただ、自分のことを認めて欲しくて、自分を必要として欲しくて、自分のことを少しでも尊敬して欲しいのだ、と思う。
ちなみに、誉め言葉にはとても弱い。「可愛いやっちゃ」と思うほど、体の奥からムフムフと喜んでいる様子が見て取れる。

「自分のことを守りたい」という想い、それは彼女が憤怒をみせるシーンから類推して気づいた。
自分に迷惑がかかるとき、その問題のせいで自分の信頼・評価が失われるとき、手を煩わされるとき、、、。
あるいは、自分のことを悪く言った相手、自分の評価を落とす可能性のある相手、自分と比較して評価される相手、、、。
そんな場面・相手に対してガブリッ!といくのだ。
つまりは自己防衛本能なので、本人は悪いを思っていないどころか、自覚そのものが無い。

彼女の中では“頑張って”生きているだけなのだ。

僕は彼女と同い年で同郷だし、話も合うので親しい同僚であり、また直属の上司だった時もあり(彼女の方が営業力あるが、これまで述べてきた理由から上司にはなりえない)、幾度となく彼女の悪癖を指摘してきた。
でも、本質的には改善はしなかった。直接的な口撃は少し弱まった気もするが、その分、裏で僕に対してその対象者の悪口をぶつけてきた。
多分、どの点を悪癖として指摘されているのか、本質的には理解してくれなかったのだろう。
なので、仕方ないと思って諦めて、でも彼女から口撃を受けるたびにイライラしていた。

ある時、辞め行く社員の引継ぎのやり取りをしている時期に、彼女から辞め行く社員に対して悪意の込められた(自分を守るための・自分を良く見せるための)発言を続けざまに聞いていた。電話越しに。

その電話の最中に僕はポリポリと体を掻き始めた。それがどんどん痒くなり、電話が終わったあとも収まらず、トイレに行って見てみると体中に発疹ができていた。30分後にはどんどん腫れてボコボコ人間になった。たまらず病院に駆け込んだところ、医師は見ただけで「ストレス性の蕁麻疹」と診断され、3分もかからず処方箋を貰って薬局にたどり着き、服薬後みるみる発疹は治まったのだ。

ストレスに耐性があり、ストレスが生じてもうまく発散することが出来ていると思っていた自分がまさか、ストレス性の蕁麻疹を発症させるとは・・・。僕はかなり驚いた。

この日のストレス程度はザラで、むしろもっとストレスを感じる件は過去にもいくつもあったのに・・・。
少し体調が悪かったのかもしれないし、ちょっとずつのストレスが続いてこの日に容量オーバーになったのかもしれない。

いずれにしても、今後もストレスで蕁麻疹が出てしまうかもしれないということだ。。。
人生の悩み・ストレスのほとんどは人間関係が原因と聞いたこともあるし、それは実感している。

これは、ちょっとまずい、と恐怖も感じた。

なので僕は、ストレス(人間関係)をしっかり分析しようと決めたのだ。
つまり、人の悪いところだけをフォーカスするとストレスしか生じない。
人には悪いところも良いところもあり、そして悪いところにも、原因というのか、その人の抱える問題があるんだと思う。そこをしっかり見ていくことで、「悪いところ=ストレスの対象」ではなく、「人間が抱える問題」として好奇心をもって捉えることができるのではないか。
そうすることで、一方的にストレスを感じて蕁麻疹が発生することを防げるのではないか、と思った(祈った)のだ。

彼女はとても優秀であり、魅力ある人間だ。
そして、人を悪く言い過ぎるのは、自分を守っているのだ。
健気ともいえるかもしれない。(遠くからみているだけだと。でも、直接対峙する者としてはビンタの1つでも見舞ってやりたくなるけれど)

今後も同じ会社に居続ける限り、彼女の口撃を受け続けることだろう。

そんなときには499万9千9百円の損害は忘れ、
彼女の認められたい貯金箱に100円ずつ投入していこうと思う。
「そんな風に言わんでもええやん。それより君なら●●~アドバイス事項~●●できると思うし、大丈夫やと思うよ」なんて言えたらいいんじゃないだろうか。
もっといえば、そういうゲームにしたら僕も少し楽しいのではないだろうか。
今後試してみようと思う。(もし、ダメだったらまた別の方法を考えてここで報告・提案しようと思う)

さて、唐突に締めにかかるのだが、
この文章を書いている途中でもうすでに彼女を見る目(物理的に視線を送っているわけではない)が、少し目を細めて微笑みを帯びている。

僕は彼女のことを嫌いなわけではないのだ。
蕁麻疹を起こすほどイヤな一面を持っているだけなのだ。そして彼女のおかげでこのnoteを書く動機を、テーマを、見つけることができた。

これまでも何か書くことをしたいと思っていたけれど、
日記は続かない、コラムを書くようなテーマを持たない、世の中に対して伝えたいメッセージもない。
でも、僕の人生を彩る登場人物たちを見つめ直し、そんな彼ら・彼女たちについて愛を持って評することができたならば、のちに振り返って僕の人生って面白い面々に囲まれて豊かな日々を過ごせたのだ、と具体的に実感できるのではないかと。(しかも文章の鍛錬にもなる)
そんな風に考えさせてくれた彼女に感謝もする。
裏を返せば、今回ストレスを受けて嫌いになることも出来たけれど、やはり嫌いにはなりたくなかったのだ。それぐらい彼女には魅力があり、素晴らしい同僚であって欲しいのだ。

もし彼女の「認められたい貯金箱」が一定以上溜まった結果、彼女の人物評についても更新できる日が来ると良いなぁと思う。

#エッセイ #コラム #人物評

企画会社の社員。ある日、苦手な人との電話中に発疹が出てきて、全身に広がったため、皮膚科に駆け込んだところ、ストレス性の蕁麻疹と診断される。気持ちを落ち着かせるためにnoteを始める。