トポリーノと悪疫下の休日
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昔なにかの雑誌で「365日すべてを賄えるクルマではなく、そのクルマと過ごす1日が思い浮かぶクルマを買いなさい」という話を読んだ記憶がある。
クルマを買うとなった時、人は往々にして「年に一回お婆ちゃんとお爺ちゃんを乗せるからイスは7つ欲しい」とか、「スキーの道具が乗せられる荷室が欲しい」とか、ヨクバリを詰め込んで最大公約数的なものを選んでしまいがちである。
高額な買い物だから仕方ないのだけれど、可能であれば今日一日のお出かけを楽しく過ごすパートナーとしてクルマを選びたい。
休日は晴天に恵まれることが多いながらも、悪疫流行により花見にでかける事の出来なかった今年。
叶わぬならせめて、という気持ちで「花見にでかけるためのクルマ」をプラモデルで作った。
プラモデルなら実用性は関係ない。
タミヤ 1/35 MM シムカ5(サンク)
ルパン三世の愛車として知られるチンクエチェントの前身、初代フィアット500をフランスのシムカ社がノックダウン生産したモデル。
丸いシルエットと、フェンダーからヘッドライトが飛び出した愛らしい姿から、本国イタリアでは「トポリーノ」(ハツカネズミ)と呼ばれていたらしい。
パッケージではドイツ軍に接収され、防空灯の”目をつむった“姿が描かれているが、フランス民間車両として作る事も可能で、通常のヘッドライト用パーツもセットされている。
説明書にも「シムカ5は多彩なボディカラーが用意され」とある。自由に塗っていいって事だよね?
よし、トポリーノで出かけよう。
イスは2つしかないが、花見に行きたい相手は決まっているから問題ない。
エンジンは小さいけど、近所の公園までトコトコ漕いでいくだけだ。
キャンバストップも雨が降ったら困るけど、春の陽気にはちょうどいい。
ボディカラーはパステルミント。
桜の淡いピンクの中で映えるだろうな、と想像しながら塗った。
ホイールをウォームホワイト、キャンバストップとイスをタンカラーでコーディネート。
このクルマを運転する自分はきっと、ネイビーのジャケットを選ぶだろうなと想像する。
今はこうして、でかける事を思いながら家で過ごすことしか叶わない。願わくば、コロナ禍の収まらんことを。
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