Cu海Zn VS 鉄人28号

　 弘法大師が空を切り裂き飛んでいる。自ら黄金に輝くその姿は、まさに遍照金剛の宝号そのものである。目標は高野山の遥か東、明石に駐屯する元の軍陣である。
　「Cu海Znはアトランティス大陸より伝来したオレイカルコス、すなわちオリハルコン合金が用いられ、三次元トポロジー理論により複合装甲を実現しています。また、大師ご本人の生体脳を移植しており、唐式拳法を自在に操れます。国難をお救いなさい」

　明石浦。海中から途方もない大きさの鉄の塊が引き上げられている。鉄は人の形をしており、その形相は鬼である。
　「三韓の東倭征伐の際、軍を率いし鉄人でございます。我ら朝鮮妖術師が命を吹き込めば、再び動き出します。タロス、モロク、ツヌガアラシト……呼び方は様々ですが、我ら朝鮮の民が全世界を支配していた頃の最後の遺物です。型番は、そう、28号」
　降りしきる豪雨の中、まだ魂無きはずの鉄人が、ガオーッ！と吠え、大地を揺るがした。

（続く）