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テイルズ・オブ・クレッセント・シティ:テッサリアの歌

 三本腕のドラマーが完璧なシンコペーションを展開している。この波に乗って、トランペット、トロンボーン、クラリネットの三管が自由に音を遊ばせている。三管を担当するのは二人。長身の一体双頭の結合双生の女と、彼女達の足元で跳ね回る小人。
 不意に重厚な音が層を作り、クラブ全体を包み込む。アップライトベースが演奏に参加してきたのだ。このベースは巨人症の持ち主に相応しく、通常のベースより更に大きく厚い。その音はまるで山脈の呟きだ。

 TCFの演奏が終わり、クラブの天井は紫煙で燻される。
 ここは三日月の市、カルコサの都に最も近き都市の一つである。今宵、このクラブで歌うのは、カルコサの王女にして最後の王の娘――
 ステージに目をやった瞬間、そこには歌姫がいた。黄色いガウンは一見しどけなく思える。だが、彼女はここでは本性を隠すことも無く、自らが纏っている衣服が触手そのものであることを誇る。蒼白のマスクが光り、歌が始まる。

(続く)

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