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牙よ、死すまで駆けろ

 牙がおう、と一声吠えた瞬間、哀れな警官の防刃ベストが薄絹のように裂け、鮮血と内臓が噴出した。牙は肉塊に一瞥することもなく囲みを破って駆け出す。牙のあまりの勢いに照準を合わせるのが一瞬遅れた狙撃班。その隙を逃さず、俺はスコープの反射光目掛けライフル弾をぶち込んだ。命中は気にせず、車を全速にする。


 バイオテクノロジーで絶滅動物を蘇らせる。サーベルタイガーが選ばれ、動物園で飼育される。感動ドラマ、カワイイ縫いぐるみ。幼子から育てば大丈夫だろうと人間と触れ合わせる。内なる野生は柔肉を見逃さなかった。そして、牙が射殺されるなら俺も諦めただろう。しかし、社会はそれすら許さず、麻酔で捕らえ「未来のための実験材料」にしようとした。ふざけるな。蘇った生命にピリオドを打つ覚悟も無いのか。

 俺は檻の鍵をライフル弾で消し飛ばした。牙はすぐさま自分が自由になったのを悟り、音も無く檻から抜け出す。ふん、と鼻を鳴らした。

(終わりまで続く)

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