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アリシア・スノウが死ぬまでの48時間

 バドゥン、という音がした瞬間、車体に風穴が空いた。
「おい、まずいぞ。ガソリンタンクやられた」
「しゃあないな、お前ちょっと止めてきてくれ」
「分かった、神にとりなしを」
「ああ」
 巨体の男は腹に巻き付いたダイナマイトに一瞬で火をつけ、後続の車にダイブした。爆風と炎上。運転手は振り返りもしない。

 助手席にはまだ年端もいかない少女が座らされている。意識は無い。しかし、爆音が刺激となったか、身じろぎをする。
 男は手早く少女の頸動脈を締め上げ、再び彼女の意識を刈る。
 聖地に辿り着くまで、少女の命は絶対に守り切らなければならない。敵はもはや少女の生死を度外視している。
 「世界を救うためなら、か……大したヒロイズムだ」
 やがて、車はガス欠で止まる。男は付近の民家を訪問し、人肉と自家用車のキーをご提供いただいた。
 儀式のために聖別されたナイフは強盗には使えない。これは48時間後、あの少女の喉笛に突き立てるためのものだから。

(続く)

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