【光空追跡#1】#283をひろげよう【シャニマス概論】
この記事は、あなたが最初に受けた「シャイニーカラーズ」というコンテンツへの印象の何倍も彼女たちの世界は精巧に創られ、どこまでも現実と地続きにあり、それでいて魅力的であることを保証するものである
そもそも”シャニマス”とは?
……なんて大層なことを言ってみたが、要するに「シャニマスがとんでもなく面白いから遊んでみてくれ」という願いを独善的に記していく記事である。ということで早速紹介に入ろう!
「アイドルマスター シャイニーカラーズ」(通称 : シャニマス)とは、ユーザーがプロデューサーとして新人アイドルとの絆を紡いでいくアイドルマスターシリーズのうちの1ブランドである。芸能事務所である283プロダクションを舞台に、28人の個性豊かなアイドルを自分の手で望む空へと羽ばたかせていく
現在配信中である2つのゲーム「Enza対応版 シャイニーカラーズ」及び「シャイニーカラーズ Song for Prism」(通称 : シャニソン)の他、アニメやコミカライズ作品など幅広いクロスメディア展開を続けている。その輝きは次元すら飛び越え、企業コラボなどといった形でアイドルが現実で活躍する様子も多く窺える
以下の項では、そんなシャニマスの暴力的なまでの魅力を3つの観点から紹介していく
”人間を描く”ことから逃げないシナリオ
まずはシャニマスの魅力の代名詞とも呼べるシナリオに焦点を当てていこう。シャニマスのシナリオはとにかく底知れぬ奥深さや作用があり、時には冴えた描写で人倫の本質に踏み込むような際どい問いを投げてきたりもする。つまり時には人を選ぶ内容であるほどに尖りまくっているのだが、だからこそ多くの人の心を掴んで離さないのだと思う
……そんな風に堅苦しく言ってしまうと、「じゃあシャニマスのコミュって全部重い感じなの?」と思われるかもしれない。至極当然のことだが、シャニマスでは特に意味を持たなかったり、ただアイドルが戯れ合ったりしているコミュの方が割合的に多い。一端の萌え萌えキャラクターコンテンツに過ぎないからだ
というか、シャニマスがそんな高尚なコンテンツだったら、間違っても「夏は短し海でしょ!乙女たち~お待ち遠サマ★ごちそうSUMMER!!~」なんて感覚で文字を書きすぎているタイトルなんか付けるわけがないだろう!!
……この先、「シャニマスはさも現実に即していて文学的で……」みたいな痛くて選民的とも取れる話をしてしまうかもしれない。シャニマスのオタクはこれをやりがちだし、この記事でもそうなってしまうかもしれない理由は後述するが、マジで全く気難しくも無いのでとにかくハードルを最大限まで下げてほしい!!解釈とか物好きがやってるだけで、本来は考察1mmも要らないから、本当に。それがこの記事を通して一番に伝えたいことだ
あまり取り沙汰されないが、シャニマス、ちゃんとトンチキもやってるのだ!その証拠に、アイドルが突拍子もなくそば屋に弟子入りするコミュもあれば
アイドルの大半が毒殺されるエイプリルフールコミュもあるし
バスケットコートでメイド服を着ながらショッピングカートに乗るコミュだってある
シナリオ傾向の変遷
……話を戻そう。まずシャニマスのシナリオの大きな魅力として、「過去から現在、そして未来(4周年)」「未来を選んでいくこと(5周年)」のように、毎年、シナリオの方向性がテーマ性を持って変化していくことが挙げられる
だから、6周年を迎えるゲームにも関わらずとにかく色んな空を見せてくれるし、彼女たちの織り成す物語が"停滞"とは無縁である。マンネリするどころか常に目を離す隙が一切無い状況が作られているのだ。「本当に6年目のコンテンツか?」と思うほど常に今が一番盛り上がっている
当然、そんな変化と共にシナリオの方向性(シャニマスが描きたい理念)は定まり、確固たるものに成っていくはずだ。ここではその変遷を、八宮めぐるというアイドルのコミュタイトルを例に出してみる
一番最初に実装された八宮めぐるのプロデュースSSRはこれだ。カード名の「金色の元気いっぱいガール」とは恐らく金髪が特徴的なめぐる本人を指しているだろうし、右側のコミュタイトルを見ただけでなんとなく物語が想起できるような、至って普通のソシャゲ然としたタイトルのように思える
ところが、たった一年でこんな変化を遂げている
……なんで?
「めぐる、大活躍!」「止まらない着信音」の面影が息をしていないどころか、イラストやタイトルのテイストまでなにもかも違いすぎる。舵取りが急すぎる。「チエルアルコ」って何?「チエルアルコは流星の」流星の何!?
そんな彼女の一番最新のプロデュースSSRはこの通り、もうほとんど日本語ですら無い。調べてみると、この暗号のような文字列はどうやら色彩を規定するマンセル値というものに由来しているらしい……と、このようにさも考察前提かのようなコミュがいくつもある。(無論これは「考察しないと分からないコミュ」ということを一切意味しない!)シャニマス、ちょっと読者を信用しすぎているのだ
冒頭に保険をかけておいたが、やっぱりシャニマスは「アイドルプロデュースゲーム」として異質すぎる領域にまで踏み込んでいるし、「シャイニーカラーズにしか無い魅力」は主にそこに帰結するはずだ
だからその魅力を余すことなく紹介するこの記事ではちょっと気難しい内容を多分に含んでしまうが、「オタクが早口でなんか言ってる!」くらいに流してもらえると幸いだ
人と人との繋がりを描く
そんなシャニマスが描き続けるのは常に人と人との繋がりであり、ありふれた日常の連続だ。そこには劇的な変化なんてそう訪れない、それが人生というものだからだ
昨今多く展開されるソシャゲのように世界が崩壊しかけている訳でも命を賭して戦っている訳でもないのに、シャニマスに触れるとそんな普通でなんてことない毎日がどうしようもなく愛おしくなっていく
では何故そんな「単調」とも受け取れてしまうシナリオに人々は目を奪われ続けているのか。突き詰めるとそれは「とにかく人と人との繋がりを描くのが上手い」という事実に辿り着くだろう。28人のアイドルとプロデューサー、事務員(七草はづき)、そして事務所の社長(天井努)、または外界の人間たちの人生模様が緩やかに複雑に交差しあう様子がとにかく、とにかく面白い!
「記号化」とは程遠く、一人一人異常なまでに洗練されたキャラクター造形(それを実現するためにシャニマスでは「この3人のアイドルはこのライターがシナリオ担当で……」という風に、アイドル単位でシナリオライターが決まっている!)をベースに、日々変化していく彼女たちの考え方や関係性、服装の趣味までもをどこまでも多角的に、緻密で克明に描写していく。そうして綴られた彼女たちは地に足が付き血まで通った”人間”としか言いようが無いほどである
そんな関係性はアイドルたちの会話の様子を一つ取っても明らかである。同じ事務所に所属する人間といえども所詮は他人。価値観が合わず、普段あまり接しない人間同士であれば当然皆が仲良く協力しあって同じ目標を目指すというのも難しい話で
相手と相容れないように感じ、出来るだけ接触を控えるような行動を取るアイドルもいれば
バスで鉢合わせた同じ事務所の相手をなんとなく気まずく感じ、会話を避けてこの場をやり過ごせるように祈るアイドルもいて
そもそも事務所内のアイドルを快く思っていないアイドルだっているし
相手に同じ趣味があることを察しつつも距離を置くべきなのか、歩み寄ろうかを思い倦ねるアイドルもいれば
そんな距離感さえ気にせず平常運転で物乞いするアイドルもいる
”アイドルの在り方”を模索する
……とは言っても、魅力を伝えたいのならやはり拙い言葉をいくらか尽くすよりも「どんなシナリオがあって、どう面白いのか」という具体的な紹介をするほうが効果的だろう。ということで、この項では印象的かつ分かりやすいシナリオを3つに絞ってあらすじを紹介していこうと思う
あくまで結末は省くが、少しでもネタバレが気になる方は次の項まで少し飛ばしてほしい
Case 1 - 桑山千雪 G.R.A.D.編
元雑貨屋店員で小物作りを趣味とするアイドル桑山千雪は、あるラジオ番組での発言がきっかけとなり、「自身の作った小物をファンに向けて出品し、稼いだお金をチャリティに寄付する」というオークション企画を開催することとなる
後日、その競売価格が想定外に膨れ上っていたことを知り、当惑する千雪とプロデューサー。”アイドルの千雪が作った”、ただそれだけの情報にこれほどの価値が生まれるとは気付いていなかったようで、実質と乖離した金額を支払わせてしまう申し訳無さを感じながらも、なんとか折り合いを付けてオークションを成立させることとなる
……繰り返すが、彼女は手芸や裁縫など小物作りが好きなアイドルだ。そんな彼女が心を込めて作った巾着袋が、ただ「”アイドルの千雪”が作ったもの」という付加価値でしか見られなかったとしたらどうだろう?
そんな考えに至って少し意地が生まれたのだろうか。「表舞台にいない”ただの千雪”には”アイドルの千雪”に負けないほどの価値があるのか」、確かめずにいられない彼女は、仕事の合間を縫って以前と色違いの小物を作りあげ、出品者が「桑山千雪」であることを隠した上でオークションサイトへの出品を決行する
――しかし、その「月へ出かけたキャラバンたちの鈴」は1円のまま落札されずに出品期間を終えてしまう
……このテーマ、アイドルものとしてあまりに本質に踏み込みすぎじゃないか!?「アイドルじゃない千雪」に人々から求められるような価値はあるのか、そういう話を、公開オーディション「Grand.Repute.AuDition(通称 : G.R.A.D.)」への出場過程と共に描き切ろうとしている
演劇の世界では「芝居を続けていく中で、自分の人格が役に喰われて素と演技の境目が分からなくなる」なんて現象がよくあるという。このコミュではそんな話も想起させながら、「アイドルの価値、人間の価値は誰が定めるのか」、そんな方向に展開していく。
こんなに複雑で解決しようのない問題がどう着地するのか、ちょっとは気になってこないか?
Case 2 - アンカーボルトソング
「未来への憧れ」という花言葉を胸に抱いて人々に笑顔を咲かせる「アルストロメリア」は、その人気に比例してソロ活動の頻度も増えていった。新しい毎日が代わる代わる押し寄せる日々の中、3人は新しい出来事や関係に少しずつ混乱していく
次第に3人揃っての活動が厳しくなり、アルストロメリアでいる時間は減っていく。そうしていくうちに互いの想いもすれ違うようになる
そんな中、ファンがSNSに投稿したあるスライドが話題になっていることを知る
その投稿に載せられていたのは、過去に3人で撮った思い出の写真の数々……すなわち「美化された思い出の中にある”永遠のアルストロメリア”」だった。目まぐるしい日々は、”あの頃のアルストロメリア”が好きだったファンの気持ちがいつか離れかけていたことに気付く余裕すら与えてくれなかったのだ
ソロでの仕事が増えていくことは決して間違いなんかじゃない、けれどユニットとしてそれが正しいのかも分からない。これまで好きでいてくれた人のために、これから好きになってくれる人のために、アイドルにはなにが出来るのか、一歩ずつ愚直に考えていくシナリオである
「有名になるにつれて関係が変わっていく」、粗筋を掴むだけではそんなありきたりなストーリーラインに思えてしまうが、3人の関係が静かに綻びていくその過程を、またファンの心情や変化する生きた世界までもを繊細に描き切ることで、この出来事は彼女たちの「アンカーボルトソング」になっていく
Case 3 - 緋田美琴 W.I.N.G.編
新人アイドルのスカウトが思うようにいかないある日、社長から直々にあるアイドルのプロデュースを任せられることとなった。彼女の名は緋田美琴という、なんと14歳の頃に北海道から上京してきた元アイドルという異彩の経歴を放つ人物である
その経歴に偽りが無いことは圧倒的な実力を見れば明らかであった。トレーナーから「指摘するところが無い」と言われるほどに磨き上げられた確かな腕前を持つ彼女の異常さは、プロデュースを重ねるにつれ明らかになっていく
その一つは「アイドルになることに異様なまでの執着がある」ことだ
「アイドルになれるなら死んだっていい」、そんな非現実的な発言に説得力を裏付けているのもまた、紛れもなく彼女自身だ。仕事の落ち着いた日は朝から深夜……下手すると明け方まで、寝食を忘れて練習に励んでいる。その様子はさながら赤い靴の呪いを受けた少女のようである
そんなストイックすぎる彼女の様子を見て、きっと誰しもこう思うはずだ。「既に彼女はプロデューサーが介入する余地すらないほど”アイドル”なのではないか」と。誰よりも業界に長けていて、覚悟や胆力の程は言わずもがな、それでいて疑念の余地がないほどに優れた実力を持っていて……
しかしある時、そんな浅い考えを覆すようなある想いをプロデューサーに吐露することとなる
緋田美琴が”アイドル”になるには、どうすれば良いのか
それがプロデューサーと紡いでいく「緋田美琴」の物語である
だからどうか見届けてほしい
彼女たちが辿りゆく空と、その軌道の着地点を
”アイドルの在り方”を果てしなく模索する
先程のシナリオ紹介から伝わったかもしれないが、シャニマスが最も当たり前に、大事にしている指針の一つは「『アイドル』という職業を通して様々な人間と真正面から向き合う」ことだろう。それはまた”アイドルマスター”という作品の根源的な魅力でもある
そんな「アイドル」の世界にシャニマスではどのように向き合うのか、そんな話にも触れておこうと思う
「アイドルは何を目指すべきか」ということすら不明瞭な世界で
それは「彼女たちの掛け替えのない時間、未来の可能性を貰ってまで続ける意義があることなのか」も分からなければ
「いつまでアイドルでいられるのか」さえ分からなくて
芸能界、そして世間は決して優しいだけの世界ではないし
時には「アイドル」を見失うこともあるけれど
何度でも降る雨を、北風を抜けながら光るのが「彼女たちの選んだ空」であるかぎり
「最高のアイドル」を目指して、彼女たちは羽ばたき続ける
臨場感を与える舞台装置
この項の最後に、そんなシャニマスのシナリオたちを鮮やかに彩る舞台装置にも触れたいと思う
1500着以上存在する登場人物の衣装に、モーション、視線移動、700枚を超える背景や音楽系・環境系合わせて300種類にもわたる豊富なBGM、1700種類をも上回る粒ぞろいの効果音に加えて、メッセージウィンドウやバックログ、選択肢や曲なんかも最大限活かして、その全てがシナリオと声と重なり合って「物語」が綴られていく。規模感が壮大すぎる
0.1秒単位で調整することすらある行間の息遣いとか、言葉にならない言葉を正確に拾いあげる演出……、いくらでも語れるが、やっぱりこれも実物を見てみないと伝わらなさそうだ
例えば、こんな演出がある
……これ、すごくないか?
自転車のブレーキ音が微かに響いて、遠くから聞こえる防災無線を背に坂道を駆けていく彼女たちの声や足音が、その余韻を背負って夜に溶け込んでいく……、そんな光景が直に感じられる描写がされている。アイドルの立ち絵が一切出ていないのに、だ
この演出に使われている要素自体はそう多くないはずなのに、ビジュアルノベルが陥りがちな「地の文が無く描写が薄くなりがち」という問題を構成の妙によって完全にクリアしている。シャニマスが作ろうとする世界はほぼ映像作品のそれなのだ
長くなるので各々の詳細は省くが、他にも紹介したいコミュ演出をいくつかあるので、この項の最後に列挙しておこう。興味がある方は是非見てみてほしい
当然のように全てのコミュはフルボイスで展開されるので、とにかく自然に読み進めやすいと思う。「シャニマスに興味を持ったらまず最初にイベントシナリオ『YOUR/MY Love letter』を読んでくれ」という話はこのブログであと5回話すので、そんなことを話してこの項を終わろう
「シャニマスに興味を持ったらまず最初にイベントシナリオ『YOUR/MY Love letter』を読んでくれ」!!
補足 - 臨場感を与える舞台装置
静寂のモノローグから突如音楽が流れ始めるギャップで心理描写を際立たせ、また流れている歌詞との相乗により物語への没入感を深めている
テキストと異なるボイスが再生されることで、アイドルの内面世界により深みを持たせている
やってることは単純な背景切り替えだが、音響効果と合わせることで大泉洋が水曜にやってそうな番組っぽい雰囲気を醸し出している
アイドルの自室の背景だが、普段の部屋の様子(一枚目)と来客時の少し片付いている部屋の様子(二枚目)とを差分を用いて表現している。これによって
という彼女の本質的な性格を表している
落ち着いた車両振動を示す走行音、そんな静寂を停車直前のエンジン音が一時的に破るような、”雨天の都営バス”特有の空気感を写実的な背景と共に再現し、世界観への没入を強めている
その場の空気感を意識したコミュが非常に多いこともシャニマスの一つの特徴だと言えるだろう。行間や間が織り成す登場人物の心理状態や人と人との距離感、空間的な広がりや狭まりの感覚……、そうしたものまで繊細に表した結果、約2分間一切の会話が発生しない、あまりに挑戦的なコミュが登場したことさえある
こちらも場面転換や効果音に気を使ったり、途中でイラストが差し込まれていたりと間延びを防ぐための工夫がしっかりされており、会話が発生せずとも物語が生まれている。ビジュアルノベルでこれをやるの、とんでもなさすぎる
列挙したようなコミュ演出の一部は3Dという制約があるシャニソンでは難しい表現もあるのだが、対してシャニソンでは、こんなに幻想的なシーンを
こんな感じでほぼ再現しきれている。濡れた衣装の様子やライティングなどが合わさる複雑なイラストに遜色ないくらいの表現を3Dで出来てしまう
解釈を拡張するイラスト
続けてイラストの紹介に移ろう。まずはとにかく見てほしい、この繊細で計算され尽くされたイラストの数々を!!!
もはや何も語るまいと言わんばかりのとんでもないイラス卜ばかりだが、更に驚くべきことはこれらのイラストのうちプロデュースカード(約半分)は二つのアニメーションまで付いてくる、ということだ。つまりこの絵、動くのだ
イラストに無数の文脈を乗せる
そんな素晴らしきイラストの数々を詳しく紹介していこう。先程シナリオに焦点を当てた繋がりで、まずはイラストに乗せられる文脈がどう意識されているかを紹介しよう。ここでは、幼馴染4人で結成されたノクチルというユニットを例に挙げていく。列挙した数枚のイラストを見てみてほしい
どれも一人一人の個性が輝いている良いイラストだなと思うのだが、これらのイラストにはある共通項が隠されていた。実は、これらのイラストは全て「彼女らが常にフェンスの内側にいる」ような構図になっているのだ。そうして表された閉塞感が、イベントシナリオ「天塵」から始まり「天檻」で一度は着地する彼女たちの物語とどう関わり合うのかは必見だろう
そんな感じで、シャニマスでは一見「ただの良いイラスト」に見えるものの多くに多量の演出意図や仕掛けが含まれていたりする
一番恐ろしくあるのが、このイラスト一枚一枚全てに彼女たちの物語があることだ。シナリオを読んだ後に再びイラストを見返すことで、「ただの良いイラスト」だったものに計り知れない文脈が層を成し、代えようもない輝きにかわる瞬間がある
「だからこういう表情をしていたのか」「こういうシーンだったのか」など……。”一枚のイラストだけで感情が溢れ出してくる”体験なんて滅多に味わえないと思うし、そんな複合的なゲーム体験を洗練されきったビジュアルノベルと細部までこだわり抜かれた緻密なイラストが重なることで可能にしている
この項の締めくくりに、文脈的観点から自分が特に印象に残っているイラストを列挙してみる。一体どんな物語が綴られているのか、真相は君の目で確かめてほしい
圧倒的に自由なイラスト - 構図
そんな奥深すぎるイラストの世界だが、シャニマスのイラストはとにかく目を引くような大胆な構図や趣向が多い。つまりとんでもなく自由なのだ。供給量がとにかく多いシャニマスだが、圧倒的なクオリティを保ったまま、「とんでもないな」と思わされる創意工夫が詰め込まれている
例えば、ゲームが好きなアイドルのイラストをドット絵とアイドルが融合したようなイラストにすることもあれば
本来主役であるはずのアイドルをモノクロに閉じ込めてしまったり
主役であるはずのアイドルをこんなに小さく配置してしまうことだってあるし
逆に、アイドルの顔だけをこんなに大きく配置したことだってある
また、画作りを優先した結果メインでは無いアイドルを画角から切り捨ててしまうことも少なくない
状況を構造的に描写した結果アイドルの背面だけを映す構図にしていたり
そもそもシャニマスにとってイラストのタッチを変えることは日常茶飯事だし
流行りを取り入れたイラストの描き方をしてくることだってある。このイラストでは、まつ毛を白抜きにして反射光に見せることで立体感を演出する表現が使用されている。
正直まだまだ紹介したいイラストはあるのだが、この項はひとまずこの一枚で最後にしよう。極み付きはこのイラストだ
……攻めすぎじゃないか?
「トレンドのクリアバッグを使っている」「待ち受け画像」などの情報からこの手が誰のものなのか推測できるようになっているのも凄いし、待ち受け画像を撮った瞬間の笑顔が時間を超えて伝わるようになっているのも素晴らしい。また「通知さえも忘れて祭りに楽しんでいる状況」がすぐに見て取れる、どこまでも技工が凝らされた攻めすぎているイラストだ
圧倒的に自由なイラスト - アイドルの魅せ方
とにかくシャニマスのイラストにおける自由度は説明しきれないくらいに素晴らしい。構図の妙を演出するだけでなく、イラストを通じて「アイドルのとにかく多様な側面」を無数に魅せてくれるのもシャニマスの特徴だと思う。とにかく私服や髪型のバリエーションが多かったり、シチュエーションがこだわり抜かれていたりするのだ
ここでは、斜めにカットされたアシメバングが特徴的な田中摩美々というアイドルを例に出してみる。特徴的な前髪を変えずに……、すなわち、「田中摩美々である」という印象はそのままに、ヘアアレンジのバリエーションや衣装が異常なほどに多数実装されている
これ、あまり話題にされないがすごく挑戦的な試みだと思う。割かれる手間とコストが尋常じゃないことは言わずもがな、例えば眼鏡を着用するアイドルの眼鏡を軽率に外したり、チャームポイントである髪型を変えてしまったり……、それは見方によっては大きなリスクにもなり得るからだ
アイドルのアイデンティティが薄れてしまう可能性だってあれば、「このアイドルは好きだけどこのコーディネートは好きじゃない」という火種になることも逃れられない。けれどシャニマスではとにかく己の道を突き進んでいく。だって彼女たちはアイドルで、生きているから
もちろん、中にはあまりヘアアレンジに積極的でないアイドルだっている。けれどそんなこと何も問題ではないのだ、世界をも存分に駆使してとにかく多彩な表情を見せてくれる
細部にまで吹き込まれる彼女たちの息吹
イラスト紹介最後のこの項ではもっと細かい部分に焦点を当てていこう。繰り返しになるがシャニマスのイラストはどこまでも洗練されきっている。そういうことを伝えていく
例えば、アイドルの着ている服のブランドが定まっていたり
アイドルの身に着けている衣服に実際のモデルのようなものがあったり
アイドルが気になっている服を実際に着ているカードが実装されたり
更に、ネイルを仕事の時だけ塗っているアイドルも居れば、常に季節に合わせてネイルを変えているアイドルも居る、など細かく性格設定が反映されており、指先一つ取ってもアイドルの個性が現れている
最後にこの例にも触れておこう。これは【モーニング・グロウリー?】というカードの一部を拡大したものなのだが、長髪が特徴的なアイドル有栖川夏葉が髪を軽く結って寝ていることが確認できる
寝ている間に摩擦などによって受けるダメージを軽減するために髪を結うことは有効な方法だし、夏葉は確かにそういう部分に気を配りそうな性格をしているのだが……だからってここまで目を配らせているの、もうちょっと怖くなってこないか?
随所に宿る”シャニマスらしさ”
いよいよ最後の紹介に移ろう。この項では、テキストやキャプションの至る所から醸し出される「シャニマスらしさ」という抽象的な話をしていこうと思う
コミュタイトル
先ほど少し触れたコミュタイトルについてもう一度見ておきたい。緩急の付け方やテーマの表し方がめちゃめちゃ冴えているのだ
ガシャタイトル
ガシャのキャッチコピーとして付けられるものだが、コミュタイトル同様これもセンスが磨かれまくっている
衣装名・フレーバーテキスト
シャニマスでは、大半の衣装に「衣装ポエム」と称される固有のフレーバーテキストが存在する
Enza対応版シャニマスでは2024年4月現在私服衣装とライブ衣装合わせて約1500着実装されており、私服衣装の一部とライブ衣装のほとんどには固有の衣装名が付いている。下画像の「デヴォーティングリンネ」「ガルディエーヌトルマリン」というのが全部そうだ。供給量どうなってるんだ
そんな幅が広すぎる衣装の数々だが、シャニソンでは衣装や髪型、眼鏡などのアクセサリー類にメイクまでもを自由に着せ替えて、色んな楽曲で踊らせることが出来る
更に、ドレスアップルーム機能では衣装の細かな模様・装飾まで自由に見ることが出来るし
MV視聴時にフォーカスモードを選択すれば、カメラが指定したアイドルのみを追いかけるようになる。……つまり、衣装の布や紐の揺れ方やスカートの広がり方なんかを無限に観察することが出来る。遊び方の幅が広すぎる……!
そんな衣装の数々だが、私服もフェス衣装もそれぞれ彼女たちのパーソナリティや肌色、骨格を意識して設計されているため、別のアイドルに着せてみても全然似合わなかったりする
イベントシナリオキャプション
イベントシナリオ紹介に使われるこのキャプションだが、あらすじを紹介していたりしていなかったりと様々だ
プロデュースモード・グレードフェス
プロデュースに関しては別個で攻略記事を書くため詳細は省くが、このプロデュースモードがとにかく面白い
Enza対応版シャニマスもシャニソンも主な仕様は共通して「限られた期間内でアイドルのスケジュールを適宜選択し、ステータスを上げつつオーディションを突破していく」という広義のローグライク形式のゲームなのだが、これが本当にアイドルゲームなのか疑うほど内容が凝っている。「どのスケジュール重視でカードを編成するか」「どんなギミックを搭載してバフを獲得するか」みたいに考えることが多くて楽しい!
もちろんカードゲームやリズムゲームが苦手な方はオート機能を使ってもミッション達成判定されるので本腰をいれる必要は全くない、というお手軽仕様だ。ゲームの練度は本筋にほぼ関わらないため、ゲームに抵抗感のある方でも是非始めてみてほしい!
Enza対応版シャニマスでの対人機能グレードフェスでは「審査員に多くのアピールを与えることでポイントが加算される」という単純なゲーム性を要するのだが、「対面がVi放クラとViストレイを使ってきそうなので凹んだDa審査員にアピールしよう」「〆の思い出アピール直前に盤面を整理するために興味反転札でアピールしよう」など自然と読み合いが発生して奥深い。加えてカードゲームと思えないほどに環境が整っており、どの編成を使ってもグレード7(最高到達点)に残留できてしまう奇跡の調整がされている
対してシャニソンではユニット毎に異なるギミックやコンセプトを活かしてカードゲームを遊ぶことになるのだが、なんと除外デッキなんて単語まで出てきてしまう。遊戯王かよ。こんなよくわからないアイドル育成ゲームが面白くないわけがない
楽曲
彼女たちの世界を豊かに彩る楽曲の数々だが、その幅は和ロックからElectro Swing、ストレートから変化球まで変幻自在だ。彼女たちの歌声の魅力を活かすためにシャニマスはなんだってする、どんな曲だって作ってしまうのである
その手の込みようも凄まじく、例えば「K-pop」のような方向性を得意とするSHHisの楽曲制作者をK-pop最前線でめちゃめちゃ活躍している著名アーティストで固めたりしてしまうのだ。ここではFashionableという曲を例に出そう
まず1曲作るだけで4人も携わっているのが驚きだが、それぞれ調べていくとCo-shoは2022年紅白歌合戦で披露されたTWICEの「Celebrate」という楽曲に携わっている作家で、Stand Aloneは劇場版コナン「紺青の拳」の主題歌「BLUE SAPPHIRE / 登坂広臣」制作に携わり主要配信チャートにて11冠を獲得した作家、YHELと小久保祐希はどちらも世界を風靡するK-popグループTWICE、ITZY、Class:yなど、名だたるアーティストに楽曲を提供する作家である。顔触れがガチすぎる、こんな化物たちどうやって呼んだんだ
他にも抒情的すぎる歌詞(ユニットの方向性を歪めないために、ユニット毎に作詞家を固めている!)やシナリオとの相乗効果など延々と語れてしまうが、まぁとにかく聞いてみてほしい。下に「シャニマス楽曲を聴くならまずこれを聞け」という曲を全体曲2曲+各ユニット曲2曲ずつまとめたリストを作ってみた、是非参考にしてほしい
シャニマスではユニット単位で楽曲の方向性が定まっているので、一度好きな曲を見つけたら後は芋づる式でどんどん発掘できるようになっているはずだ。自分の好きな曲を探しやすいと思う
美麗で感性を揺さぶる3DMVやアニメーションMVと一緒に是非一度聞いてみてほしい!
ジャケット写真
シャニマスは絵が上手い、だから当然ジャケット写真一枚一枚の完成度も高い
これらのジャケットイラストで彼女たちが身に纏う衣装は全てゲーム内で実装されている衣装たちだ。下の画像のように衣装シリーズは共通している、だけどそれぞれの個性の主張が強すぎて統一感とは無縁の衣装でも……
シャニマスアートチームの手にかかればめちゃめちゃ良い感じのジャケットイラストに早変わりだ。なんでこれで統一感出せるんだ。本当にとんでもない技術力だと思う
その輝きは君を通過して現実に侵食する
アイドルたちの生きる世界に説得力を裏打ちするため、シャニマスでは「実在性」を強く意識した展開がされていく。とにかく猛スピードで現実に侵食してくる。上の画像のように、現実で起こった事例をコミュに登場させることだってあれば
コロナ禍ではリモート会議にまつわるシナリオが出されたり
SNSの描写がやけにリアルだったり
展示会で事務所の靴箱や傘置きなどが展示されたり
受け取った企画書をもとにプロデューサーが「この仕事はどのアイドルが相応しいか」をプレゼンしあい、実際の著名アーティストに楽曲を制作してもらう投票型オファー企画があったり
誕生日には突然架空の広告が掲示されることだってある
更にシャニソンでは実際にアイドルとメッセージが送りあえたり
アイドルから電話がかかってきたり
Twesta(SNS)でアイドルの現在が確認出来たり
プロデューサーの視点からアイドルの配信活動が見れたり
というか、実際にX(旧Twitter)でリプがもらえることだってある
後書き
大ソシャゲ戦国時代の昨今、「シナリオが面白いゲーム」「作画に力を入れているゲーム」なんてものは数え切れないほどに存在して、けれど確固たる「シャニマスにしか描けない物語や魅力」が途方もないほど存在していることが少しでも伝わってくれただろうか
しかしその反面、やっぱり全体的に堅苦しい文章になってしまったという自覚は存分にある。シャニマスに興味がない人間に読ませる文量じゃないのはとっくに承知の上だ
だけど、そもそもソシャゲに向いてなさすぎるようなシャニマスの魅力は表面的な説明では1mmも伝わらない。だからこの長さになってしまった、という弁明をしておこう。ということで、最後はシャニマスを始めるハードルを極限まで下げて紹介を終わりにしようと思う!
まず、Enza対応版シャニマスはとにかくガシャが回せる。その証拠に、一年に1500連分以上の無料10連を開催していた年すらあった
更に、Enza対応版シャニマスではSSRプロデュースカードを獲得して特殊ミッション(TrueEND)を達成するだけで20連分の6000ジュエルが配布される。プロデュースSRだと3000ジュエルで、これはほぼ3000円に換算していいだろう。ほんとイカれた仕様だ
これが何を意味するか。つまり、育成に慣れ始めた序盤のうちは「ガシャを回す」→「カードを引いてTrueENDを達成する」→「そのジュエルでガシャを回してカードを引く」という錬金術で冗談抜きで2天井分(600連 / 180000ジュエル相当)くらいのガシャが回せてしまう。筆者が初心者だった頃実際にやった。出来てしまったのだ
というかそもそも配布ジュエルの量がおかしいのでログインボーナスやデイリーミッションを達成し続けるだけで無課金でも簡単に天井分の石が貯まってしまう
対してサービス開始から半年も経っていないシャニソンでは、チャレンジツアーというモードで1天井分以上のプリズムジュエル(55000個/220連分)が獲得できるほか、コミュを読み進めるだけでも石が貯まったり、豊富な季節限定ログインボーナスにイベント報酬などを駆使してガシャがどんどん回せるようになっている
しかも、Enza対応版シャニマスもシャニソンもデイリーミッションが数分も掛からずに終わってしまう。プロデュース(育成)やリズムゲームにもオート機能があるので遊びたい時に自分の好きな裁量で思う存分遊べる。イベントにも労力を取られないし、とにかく「好きな時に好きなだけ遊べる」ことが徹底されている。手軽に情報量の渦に殴られることができ、忙しない現代人が片手間に遊ぶにはマジで最高のゲームだと思う
また、最初に話題に上げたようにシャニマスでは現在連載中のコミカライズ2種(+4コママンガ)の他にアニメ(心情補完はシャニソン内のコミュで行われているのでそちらもチェックしてほしい!)などとにかくマルチメディア展開が多様で、入口は無数にあると思う。二次創作を見るだけでも楽曲を聞くだけでも、君の好きな形でプロデュースをしてくれたら幸いだ!
「まずは実況動画から見てみる」というのも一つの手段だろう。中にはPart850に及ぶほどコミュ読み実況している配信者までいるので、空気感だけでも覗いてみてほしい
そんなところだ。次の記事ではアイドル28人+αの人物・おすすめコミュ紹介をするので、少しでもシャニマスが気になったら是非見てみてほしい!
断言しよう、よく知らないゲームの説明でこれだけ長い文章を乗り越えたここまで辿り着いたあなたは絶対にシャニマスの素質がある。やろう、シャニマス!
補足 - シャニマスとシャニソン、どっちをやるべき?
現在二つのゲームが展開されているシャニマスだが、どっちを始めれば良いのかわからない……という疑問も生まれるだろう。筆者として言えることは、「どっちも全く時間は取らせないからどっちにも手を出そう。迷ったらとりあえずEnza対応版シャニマスを始めよう!」ただこれだけである
Enza対応版シャニマス
シャイニーカラーズが5年間紡いできたシナリオや楽曲、イラスト、衣装の全てにアクセス可能の言わばポケット六法全書のようなもの。高クオリティなアニメーションに加えて「グレードフェス」「マスターズフェス」など数多くのゲーム体験が楽しめる。また、アイドル個人の成長に焦点を当てた質も量も圧倒的なシナリオの数々が楽しめる
Song fir Prism(シャニソン)
アイドルたちの高品質な3DMVが楽しめ、その他Twesta(SNS)、電話、CHAIN(トーク)、OurSTREAM(配信活動)など、アイドルを身近に感じられる機能が多く楽しめる。シナリオはユニット単位の物語が多めで、Enza版の一部シナリオを再編し、更にEnza版では触れられなかった視点などを補足しつつライトにまとめたシナリオが楽しめる
補足 - 分からない部分が出てきたら
チュートリアルを読んでもわからなかった部分などはインターネットで探せば大体なんでも解決する。前述したYoutubeチャンネル愛幸Pシャニマスch.の他、X(旧Twitter)やYoutube、Note、質問ひろばを見れば大体解決すると思う
不明点や掲載情報に関する修正・訂正などあれば管理人のX(旧Twitter / @zE3rx)のDMまで連絡してほしい
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