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「Help! The映画配給会社」×        「mini theater park」 オンライントークイベント     《わたしとヴァルダと映画館》vol.1


7月23日(木・祝)に「Help! The映画配給会社プロジェクト」「ミニシアターパーク」のコラボイベント《わたしとヴァルダと映画館》vol.1を開催、
岩波ホールで現在公開中の『落穂拾い』上映後に、オンライントークイベントが行われ、ゲストに小泉今日子さん・渡辺真起子さん、また前日に急遽登壇が決定した安藤玉恵さんをお迎えしました。

まずは上映が終わったばかりの『落穂拾い』についての感想を求められると、渡辺さんは「最後のシーンにとにかく震えた。生きることを大事に見つめ、その視線が何の先入観もなく公平に思えて、人々をただただ見つめ続けながらも、ラストのシーンに結びついていくヴァルダの視線に感動しました」とお話になり、続けて小泉さんは「この映画が撮られた1999年頃は、全世界的に世紀末なムードが漂っていたと思うけれど、その時も一抹の不安を抱えながら生きてたな、と思い出した。またヴァルダの視点が少女の好奇心のまま人々・社会を見つめているところは、こんな風に私も世の中を見つめられればいいな、参考にしたいなと思いました」と語ってくださり、
安藤さんも「ヴァルダがすごく好きなのは、やっぱりその“視点”。好奇心と疑問を純粋に持ち続けて、答えのない疑問をそのまま映像に提示して映し出してくれるので、見ていて一緒に考えられるのはすごく楽しさがあるなと思います。あと裁判官の女性にインタビューするときに、“その服良いわね”って撮影中にも関わらず言えてしまうヴァルダの空気感がすごく好きです!」とみなさん思い思いに語ってくださいました。

他のヴァルダ監督作品についても話が及び、
渡辺さんは「ヴァルダ作品で初めて見たのは『5時から7時までのクレオ』です。こんな風に人を捉える監督がいるんだ、俳優として出てみたいな、と当時思ったことを覚えていて、それから今回初めて見た『歌う女・歌わない女』もすごく印象に残ってます。とてもユニークで温かい女性讃歌の作品なので、女性として見ていて気持ちが開放されるし、生活をしていくということを楽しんでいくしかないなと思えます。そしてやっぱり『落穂拾い』を見ると、ヴァルダのような気持ちで日々を生きていきたいなって思う作品です。」とヴァルダ作品への思いを語ってくださり、また今回の岩波ホールでのセレクションでも上映されていた『ダゲール街の人々』の話をふられると、「『ダゲール街の~』の好きなところは、当時のパリの風景が、幼い時に自分が過ごした街を見ているような郷愁を感じれるところ。全く知らないパリの街を自分の街の生活のように愛おしいなって思えるところが好きですね」と話してくださいました。

それを受け小泉さんは「『歌う女・歌わない女』は、ヴァルダ独特のフェミニズムの視点がすごく好きだな~と思いました。それから『ダゲール街の人々』に関しては、私が団塊世代の先輩たちに色々影響を受けたけれど、その先輩たちは、このヌーヴェルヴァーグの時代の作品に影響を受けていると思うので、間接的に自分の中にもこの『ダゲール街~』の表現の方法が脈々と受け継がれている気がします」と話してくださいました。

安藤さんは「『幸福(しあわせ)』がすごく好きで、20歳くらいの時に初めて見たときは、“映画の本質を見つけちゃった!”という衝撃がすごかったのと、見る年代によって抱く感想が全く変わってくる作品なことが面白くてずっと好きです。あと『ダゲール街~』を見ていると、“仕事は仕事”と思いがちだけど、子供を育てながらの生活の中で自然と作品を撮ってしまうヴァルダの発想が本当にすごいな~と思いました」と話してくださいました。

またヌーヴェルヴァーグの唯一の女性監督として活躍してきたヴァルダその人の生き方についての話になると、
渡辺さんは「本人にお会いしたことはないので作品の中から彼女を想像すると、ヴァルダの中にも女性として色んな時間があって、その中でも映画に出てくるヴァルダが自分の髪の毛を染めるシーンが大好き。自分も老い、いずれは死んでいくんだということを自然と映画の中で語り伝えてくれることが、会ったことのない文化も違う自分の中で沁みていくのは本当におもしろいなと思いますし、監督として本当に興味深くて、自分と近しい人から語られている気持ちになる。ちなみにカンヌで、おもしろい髪形をしている人がいるな~と姿は見かけたことはあったんですよ」と語ってくれました。

小泉さんは「ヴァルダ作品のなかには、『ダゲール街の人々』冒頭の香水屋のショウウィンドウを映したり、インスタレーションでも可愛いらしいものを集めて作品にしたり、フィルムケースをアーチにしたりとか、ある意味少女っぽい発想の中から作品が生まれているけれども、ヴァルダ自身の経験も含めて、作品自体はとても大人っぽいものになっているのを見ると、この先こんな風に生きたいなとか、やはり参考にしたいなと思います。あとヌーヴェルヴァーグの紅一点として過ごしたことは大変だったとは思うけれど、仲間にも囲まれて楽しそうですよね」と。
そして安藤さんは、「お母さんだったり、少女のように見えるイメージがある一方で、『ジャック・ドゥミの少年期』でドゥミに接写していく画はセクシーで性的にも感じる。女性が本来持っているそういう部分も素直に表現していて、しかもヴァルダが表現すると潔くて、とても自然なんですよね。それで良いんだと思わせてくれる姿と生き方に憧れます」と語ってくださいました。

皆さんの話を受けて岩波支配人が、「ヴァルダは嫌なことは嫌だってはっきり言うし、自然体で本当に面白い方だった」と回想したことから、もしヴァルダ監督と”監督と俳優”として接することがあったら、とゲストの皆さんが想像して話したり、ヴァルダ監督の撮影の進め方についても俳優として興味があると話が盛り上がりました。

後半は今回の上映館である岩波ホールの話になり、渡辺さんが、ホールと共に生きてきた岩波律子支配人の想いを聞き、岩波支配人から劇場を受け継いだ経緯や作品選定のお話をして頂きました。また小泉さんからは、ヴァルダ監督以外に印象に残っている監督はいらっしゃいますかと質問が出て、アフリカ・セネガルの巨匠監督ウンスマン・センベーヌ監督の印象的なエピソードを岩波支配人にお話し頂きました。
劇場とオンライン上でのQ&Aにもご回答いただき、大盛況のうちにイベントは終了しました。

次回の《わたしとヴァルダと映画館》vol.2は、8月2日㈰開催!
井浦新さんと斎藤工さんをオンラインでお迎えしてお送りします。
どんなお話がお聞き出来るか、今から楽しみです!
(※ 残念ながらオンライン視聴の参加券はSOLD OUTになっております)


特集「アニエス・ヴァルダ傑作セレクション」 
岩波ホールにて絶賛上映中!~8/7(金)まで
上映作品:『落穂拾い』『ダゲール街の人々』『アニエスによるヴァルダ』『ジャック・ドゥミの少年期』



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