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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【4月20日㈬~4月26日㈫】

コロナ禍になってからというもの、ここ2年半海外からプロモーションで来日する映画人はパタリと途絶えていましたが、マイケル・マンが監督するWOWOWとHBO maxの日米共同制作ドラマ『TOKYO VICE』主演のアンセル・エルゴートや、『ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密』主演のエディ・レッドメインなど、「えっ?来てるの?マジで?」という感じで、ソロリソロリと来日キャンペーンが再開している模様です。

しかしながら、同業他社さんにヒアリングしてはいませんが、いわゆる単館系作品に関わる監督や俳優の来日はまだ再開していない気配で、現在も監督、俳優のインタビュー取材はオンラインで行われてることが多いようです。弊社でも、先週20日21日の両日、6月17日公開の配給作品『三姉妹』のイ・スンウォン監督のオンライン・インタビュー取材が行われました。映画を未見の方にも、ご覧になった方にも興味深いエピソードの数々。公開が近づいてきましたら、新聞、ウェブ等でお読み頂けますので、少々お待ちください。スンウォン監督、「東京に行って、直接映画を観て下さった方々の反応、感想が聞きたかった!」とおっしゃっていました。

『三姉妹』のイ・スンウォン監督

コロナ禍にあって、弊社でも監督や俳優の来日招聘をしなくなって丸2年半が経ちますが、この機会に来日キャンペーン(ザジの場合はほとんど監督の来日です)についてちょっと書いてみようかと思います(※ちなみにトップ画像は、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のガブリエーレ・マイネッティ監督来日時。“都庁展望台から東京を見渡す”の図です)。

新作の作品の買付けが終わって、メインで公開してもらう劇場が決まったら、先ず配給会社がやらなければならない仕事は、あらかじめP&A ( Prints & Advertising )、配給に係る上映素材の経費と宣伝経費の予算を組むこと。買付け金額の大小によって興収の目標を設定し、それに伴って公開規模が決まると、「このぐらいのP&Aをかけて勝負しよう」とか、「赤字を出さないよう極力経費を抑えよう」とか、ソロバンをはじくワケです。ザジの場合は、後者の「極力経費を抑えよう」ばっかりですが(笑)。

その予算を組む時点で、“監督を呼ぶ / 呼ばない”の選択をしますが、この“来日あるなし”で、当然全体の予算が変わってきます。ザジの場合は、今までヨーロッパやアジアの新鋭監督を招聘する比率が高かったので、ハリウッドスターの来日のような予算を立てた経験はありませんが、それでも少ない事例の中で「ファーストクラスじゃなきゃ」とか、「パートナーを同行させたいので、そっちの経費もよろしく」とか想定外のリクエストが出てきて、招聘を諦めたこともあります。なので、実際にお会いしてコミュニケーションを取ることが出来ないのは残念ではありますが、昨今のオンライン取材は予算的には非常に助かっています。

オンライン取材中の“『MONOS 猿と呼ばれし者たち』のアレハンドロ・ランデス監督
(本文中に登場する“某”監督ではなく、イメージ画像です!)

かつて映画雑誌で、宣伝部員たちの“スター来日裏話”座談会みたいな企画がよくありましたよね。某ハリウッドのスターは、ホテルの廊下を台車を用意させてそれに乗って移動した、とか、来日すると必ず風俗方面のお店を案内しなければならなかった、とか、そういうやつ。幸いザジではそんな大変な経験はありませんが、苦労話はいろいろあります。

今までの来日で大変だった監督は誰?と言われて真っ先に頭に浮かぶのは、宣伝の仕事で関わった他社さんの配給作品の某有名監督。何しろ偏食家で、いろいろヒアリングし、リクエストを聞いて店をチョイスするのですが、舌に合わないらしくほとんど食べない。生魚が食べられない、ぐらいなら対処可能なのですが、ホントにデザートぐらいしか口にしない。しかも不機嫌。後から聞くと、別の会社が招聘した過去の来日時もそうだったらしく、某超有名料亭でほとんどの料理に手をつけず、皆を震え上がらせたこともあったそう。あの監督、実際一人ホテルの部屋に戻って何を食べていたのだろう、と未だに不思議です。ちなみに監督、タワーレコードのサントラ売場にお連れすると、めちゃめちゃ機嫌が良かった…(笑)。

もう一人思い出すのは、今から十数年前、自社で配給、招聘した某監督。まだこちらが不慣れな頃だったからでしょうか、事前に組んでいた取材スケジュールがタイト過ぎたようで、3日間ホテルでインタビューを受けてもらって(確か半日とかのお休みはあったはずなのですが…)、帰国前夜の“お疲れ様でしたディナー”のお店にお連れするタクシーの中で、ブチ切れました。タクシーの運転手さん、ビックリして急ブレーキ踏みました(笑)。その後の関係各位が集合したディナーが最悪なムードの中で行われたのは、苦い思い出。今を思うとすべての仕事をこなしてから、ブチ切れてくれた監督にプロの矜持を感じます。

実名を出せないので、あまり面白くなかったですね。すみません。残念ながら『三姉妹』のイ・スンウォン監督、前述のよう今のところ来日の予定はありませんが、公開してロングランヒット、コロナも収束していたら、ヒット御礼舞台挨拶にお招きしたいな。ん~、ハードル高い~。

texte de Daisuke SHIMURA











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