見出し画像

Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【6月30日㈬~7月6日㈫】

7月6日から第74回カンヌ国際映画祭が始まりました。去年はオンラインのみでの開催でしたが、今年は例年5月の開催を7月にズラして、カンヌ現地とオンラインの同時開催となりました。オープニングはレオス・カラックス監督の『ANNETTE』。SNSで繋がっている何人かのパリ在住の映画ジャーナリストの方々も無事現地入りしたようで、Facebookでいち早くオープニングの様子をアップして下さっていて、気配だけ(´;ω;`)感じることが出来ます。

日本からはどのくらいの人数が参加するのか、具体的な数字は入手していませんが、コンペティションに選出された濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』の関係者を始め、各部門に出品が決まっている日本映画の関係者の方々は参加されると思いますし、新聞の映画担当記者、映画ライターの方々も例年より人数が限られているとは思いますが、取材に行っているみたいです。

日本映画の海外セールス担当で現地入りする方もいらっしゃると思いますが、配給会社のバイヤーの方々は、どうなのでしょう?開催前に送られてきた、フランス文化・通信省の外郭団体ユニフランス・フィルムからのメールには、日本からの参加は、“ワクチン接種証明は不要。72時間以内の陰性証明さえあればウェルカム”的なことが書かれていましたが、参加を決めたバイヤーはおそらく、いらっしゃったとしても数名程度なのでは?と予想します。競合他社さんがほとんどいないカンヌ。見放題、買い放題!行けば良かったかも!(冗談です。実際は大変なことも多いと思います)。

現地に行けないバイヤー向けに、2月のベルリン国際映画祭の時と同じように、“CANNES IN THE CITY”と銘打って、一部のコンペ部門、ある視点部門、監督週間に選ばれた作品20数本が、実際に試写室で上映されることになり、東京での上映が明日から始まります。それとは別に、海外のセールス会社が独自にセッティングしたバイヤー向け試写も始まっており、私も昨日の朝はコンペ部門に出品されている作品を観てきました。コロナ禍を背景にしたドラマで、月曜の朝から観るには、あまりにも重過ぎた…。

ザジフィルムズのカンヌにまつわる話は、昨年当noteで連載した“Histoire de Zazie Films”で書きましたが、自炊についてしか、書いてないような気がします。1990年から2019年まで、30回連続で参加してきたのだから、本を1冊かけるようなネタがあってもいいんじゃ?という気もするのですが、パルムドール受賞の下馬評高い作品を、他社さんと競り合った経験があるワケでもなく、自社作品のお披露目がカンヌになったため、タキシードを着て赤絨毯を歩いたことがある、ということもなく…。

画像2

※上記画像は3年前、2018年の第71回カンヌ国際映画祭の時のものです。

自社とは直接かかわりのない作品を、たまたまチケットが取れたから、という理由で、ネクタイとジャケット着用で観に行ったことは何度かありますが、ネタにはなりませんよね。今思い出しましたが、「24時からのミッドナイト上映だから、ジャケットもネクタイもいらない」と聞いていたので、夕飯後、ラフな格好のまま赤絨毯を歩いて階段を上って入場しようとしたら、「その服では入れません」と拒否られ、(左右のカメラマンがフラッシュをバシバシ焚いて写真を撮っている中を)階段をトボトボ降りて帰ったことがありました。『氷の微笑』の上映の時だから、1992年。恥もかき捨てられるぐらい若かった(笑)。

カンヌでの買付けで何か思い出に残る作品はないかなぁ、と記憶を辿って思い出すのが、『ベルサイユの子』という2008年の“ある視点”部門に出品されていたフランス映画。37才の若さでこの世を去ったギョーム・ドパルデューの遺作の1本。たまたま同じ会場で上映を観ていた劇場の番組編成の方と意気投合し、「買付け出来たら、一緒にやりましょう」ということになりました。が、映画祭期間中に海外のセールス会社との契約はまとまらず。「日本に戻ってから引き続き話し合いを…」ということになり、帰国のパリのシャルルドゴール空港で搭乗を待ってる時に携帯が鳴って、出るとセールス担当者。「契約を締結しましょう」とOKが出て、無事買付け。翌年公開することが出来たのでした。

画像1

要は、映画祭の期間中にザジよりも上の金額のオファーが入るのを待ってたけど入らなかったから、ザジに決めざるを得なかった、というだけのことですが、空港のゲートでOKの連絡をもらう、というのが、ちょっとドラマチックだったので、印象に残っています。同業他社のバイヤーの方々も、似た経験をお持ちの方は多いと思います。いや、もっと劇的な買付けのエピソード、いくらでもお持ちですよね。

今年は現地に入れませんでしたが、来年はカンヌで、後世に語り継がれるようなスペシャルな買付け(どんな買付けだ。笑)をしたいと思います。ちなみにトップの画像は、前述の某劇場の編成担当の方がカンヌのザジアパートで作って下さった“カンヌたこ焼き“です。美味かったなぁ~。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?