見出し画像

Histoire De Zazie Films 連載⑱    趣味の問題、あるいは、35周年のイラストは誰にお願いしよう?

------------------

前回の記事はこちら☞ 連載⑰アジアン・ビート
----------------

連載4回目でポスターやチラシのビジュアルデザインについて語りました。自分の趣味嗜好をデザインに反映させたくなるのは、それはにんげんだもの、当然の欲求なのですが、ビジュアル作りで大事なのは、どう差し出せば狙ったターゲットの観客の興味を惹くことが出来るのか?ってこと。そこがまず第一なので、自分の“好み”が優先されることは、ほぼありません。

その日々のストレスを解消すべく、私がこだわっているのが自社の年賀状やカレンダー、といった直接お客さんの動員に関係ないアイテム作りです。以前は年賀状に加えて、暑中見舞いも作っていたのですが、経費削減と簡略化で最近は年賀状のみ。配給会社なら、その年のLINE UPを並べるのが一般的ですが、うちはそれはあまりやらず、一時は作品とはまったく関係のない、友人が撮った写真や、描いたイラストを使うこともありました。最近は印象的な場面写真一点を選んで作ることが多いです。自分で見て「カッチョイイ!」と思えるものを作る。ひと言で言って自己満足以外のナニモノでもないのです。

カレンダーはもう25年ぐらい、同じ壁掛けと卓上の二種類に社名を入れて年末、取引先に配っています。ザジがカレンダーを配らなくなったら、「ザジさん、いよいよヤバいみたいよ」と噂されそうなので、頑張って続けたいと思っていますが、今年の年末は予算を捻出出来るかな。不安。

会社を設立して以来、自社オリジナルのカレンダーを作るのは夢のひとつでした。イマジカさんが作っていた和田誠カレンダーのザジ版を作ってみたい!若い方はご存知ないかもしれませんが、去年亡くなったイラストレーターの和田誠さん描き下ろしの映画の名場面のイラストを配した、業界では有名なカレンダー。澤井信一郎監督の名作『Wの悲劇』の冒頭、薬師丸ひろ子扮する三田静香が朝帰りしてアパートの部屋に帰ってきた時に一瞬映る、『オズの魔法使い』のジュディ・ガーランドのイラストのアレです(説明、長っ)。
映画の一場面はイラスト化でも権利処理の必要が生じるから非売品だった、と聞いています。なのでうちも非売品で。

2009年、20周年の年に、そのささやかな夢を実現させました。イラストレーターは、以前から「素敵な絵を描く人だな~」と思っていた前田ひさえさんにお願いしました。ザジが配給してきたクラシックを以前から劇場で結構観て下さっていて、お話は早かった。1、2月がフェリーニ『8 1/2』、3,4月が『幸せになるためのイタリア語講座』、5,6月がルイ・マル『地下鉄のザジ』、7,8月がジャック・タチ『ぼくの伯父さんの休暇』、9、10月が『サヨナラCOLOR』、11、12月がゴダール『女は女である』。良いものが出来て大満足でした。

2014年、25周年のカレンダーは、キン・シオタニさん。テレビ神奈川で2010年から始まって今も続いている、ゆる~いお散歩番組「キンシオ」をいつも見ていて、エンディングに使われる味のあるイラストが大好きだったので、思い切ってお願いしてみました。こちらで選んだ6作品のDVDを観て頂いて、「描きたいと思ったシーン、どこをどう切り取ってもOK」という条件で描いて頂いたら、まあビックリ!パッと見たら、何の映画か絶対分からないようなマニアックなシーンの数々。『冒険者たち』でまさかこの場面を選ぶとは!こちらは、7、8月のつもりでお願いしていましたが、“お屠蘇”に見えなくもないので、急遽1、2月に変更したりしました(笑)。1、2月『冒険者たち』、3、4月『ぼくたちのムッシュ・ラザール』、5、6月ルイ・マル『死刑台のエレベーター』、7、8月『ベルトルッチの分身』、9、10月『四つのいのち』、11、12月ジョン・カサヴェテス『こわれゆく女』のスクールバスを見送るシーンは、意外だけど、なぜか納得してしまいました。

そして昨年、30周年の年、2019年は、今回のHelp!The映画配給会社のイメージイラストを描いてくださったAyumi!さん。ネットで偶然作品を見て、早い時期から「次はこの人に頼んでみよう」と思っていた方。調べたら神戸の方だったので、関西方面の劇場に営業に行くタイミングで、実際にお会いしてオファーさせて頂きました。オファーと前後して、ザジがパブリシティを担当したアメリカ映画『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』の関連グッズ等のイラストも手掛けていらっしゃって、その偶然に驚きました。これからもどんどん活躍の場を広げて欲しい方です。
1、2月ヴィスコンティ『家族の肖像』、3、4月『人生はマラソンだ!』、5、6月ドゥミ『天使の入江』、7、8月『あの頃、君を追いかけた』、9、10月『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』、11、12月ベルイマン『ファニーとアレクサンデル』。

こうして周年カレンダーを3つご紹介して、大変なことに気がつきました。クラシック作品と新作、バランス良く並べてきたつもりなのですが、アニエス・ヴァルダ監督作を一度も取り上げていなかった!!ヤバい!ヴァルダさん、35周年には必ず!っていうか、35周年まで会社もたせなきゃ!

------------------

次回の連載記事はこちら☞ 連載⑲わたしは、幸福(フェリシテ)
----------------

ザジフィルムズ配信見放題パック
ザジフィルムズ公式HP
ザジフィルムズ公式Twitter

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?